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2019年度 麻布中学過去問【理科】大問2解説

問題PDF
みなさんはコーヒーを飲んだことがありますか。

ほろ苦い大人の味ですから、まだ苦手だという人も多いでしょう。
とはいえ、コーヒー飲料やコーヒーゼリーまで含めれば口にしたことがある人は多いでしょう。
今日は、コーヒーに関するさまざまなことを化学的に考えてみましょう。
コーヒーを淹れる際に必要なコーヒー豆は、コーヒーノキにできるコーヒーチェリーという実から、皮を取り除き、その中心にある生豆(きまめ)を取り出したものです。生豆は緑色をしており、苦味も酸味もほとんどありません(図1)。

まず、この生豆を焙煎(ロースト)します。焙煎とは、コーヒー豆をフライパンや金網の上に乗せて加熱する作業のことです。これにより、コーヒー豆の酸化(空気中の酸素と結びつく反応)がはやまります。焙煎の度合いに応じて、浅煎りの茶色、中煎りのこげ茶色、深煎りの黒色などのコーヒー豆になります(図2)。

コーヒーの味は苦味や酸味などが複雑にからみあっており、焙煎度合いに応じて大きく変化します。苦味の原因の一つはカフェインという物質です。他の苦味成分の量は、焙煎が進み、コーヒー豆が酸化するにつれて増加していくといわれています。また、焙煎の原因はコーヒー豆に含まれる糖類などの有機物が酸化されることによって生じる有機酸であるといわれています。有機酸は長時間の加熱にともなって、徐々に気体になったり分解したりする性質を持っています。このため、深煎りのコーヒー豆には有機酸は少量しか含まれていません。

問1
焙煎は回転式穴あきドラム(図3)を使って行うことがあります。

このとき、豆はドラム内に入れ、下部のヒーターで加熱します。
金網(図4)とコンロを用いる場合に比べて、
コーヒー豆の仕上がりにどのような利点があるか答えなさい(解答欄は1行)。

問2
焙煎の度合いに応じて、コーヒーの苦味、酸味はどのように変化すると考えられますか。
正しい組み合わせを選びなさい。

次に、コーヒー豆を図5のミルという装置で細かくすりつぶし、粉状にしていきます。

この動作を「挽()く」といいます。お店で売られているコーヒー豆の粉は、この作業が終わった状態なのです。一般に、コーヒー豆を保存するときは、豆のほうが長持ちし、粉にすると味が変化しやすくなります。そのため、家庭で豆を挽ける場合は、使う分だけそのつど挽く方がよいのです。残りのコーヒー豆は冷蔵庫で保存すると長持ちしますが、おいしいコーヒーを淹れるためには、焙煎してから3週間以内に使い切るのがよいといわれています。
豆を挽くときは、図5のハンドルをなるべくゆっくりと回して挽く方がよいといわれています。また、その挽き方には、粗挽き、中挽き、細挽き、極細挽きなどがあり、粗挽きの粉の粒は大きく、細挽きや、極細挽きの粒は非常に小さいです。これらの挽き方は、図5右側のすりつぶす装置どうしの間の距離を変えることによって調節できます。

問3
下線部①について、理由を答えなさい。

問4
下線部②について、高速でハンドルを回して挽くと、コーヒーの味に変化があるおそれがあります。ゆっくりハンドルを回して挽いたときと比べて、味にどのような変化があると考えられますか。どちらも中煎りのコーヒー豆を中挽きにしたものとします。

最後に、コーヒーを淹れましょう。ドリッパーにペーパーフィルタ(ろ紙)をセットし、そこに粉状のコーヒー豆を入れます。ここに熱湯を注ぐと、ドリッパーの底にある穴を通ったコーヒーが、下にある容器にたまります。コーヒーをおいしく淹れるには、コツがいくつかあります。まず。コーヒーの粉の中心に少しくぼみを作っておき、そこに90℃程度の熱湯を「の」の字を描くように少量注いで20秒ほど待ちます(図6)

この作業を「蒸らし」といいます。蒸らしをすると、コーヒーの粉が水を吸って膨らみ、中から気泡が出てきます。これは、焙煎したてのコーヒー豆が気泡になる成分を含んでいるためです。その後も「の」の字を描くように、中心のくぼみから外側に向けて少しずつ熱湯を注いでいきます。
注ぎ始めからしばらくは、注いだ熱湯がくぼみからあふれて、直接ペーパーフィルターに触れてしまわないように気をつけます。さらに、熱湯を少量ずつゆっくりと注いでいき、くぼみの周辺を少しずつくずしながら淹れれば、おいしいコーヒーの出来上がりです。

問5
下線部③について、熱湯が直接ペーパーフィルターに触れてしまうと、
コーヒーの味にどのような影響がでますか。理由とともに答えなさい(1行)。

コーヒーを淹れる作業のように、物質の成分を、溶けやすい液体に溶かして取り出す作業を「抽出」といいます。抽出は多量の液体で一度に行うのではなく、少量の液体を数回に分けて行う方が、抽出される成分が多くなります。そのため、コーヒーを淹れるときは、熱湯を少しずつ注ぐのです。
このことをコーヒーに溶けている味の成分を『粒』として単純に考えてみましょう。ここでは、コーヒーの粉と熱湯が十分な時間で触れたとき、コーヒーの粉1gあたりに残っている『粉』の数と、触れていた熱湯1gあたりに溶けた『粒』の数の比は9:1になるものとします。たとえば、コーヒーの粉1gに、熱湯2gが十分な時間で触れていた場合を考えます。最初にコーヒーの粉1gに『粒』が11粒含まれていたとする(実際には十分に多数の粒が含まれています)と、抽出後にこのコーヒーの粉1gに十分な時間で触れていた熱湯2gには『粒』が2粒溶け、9粒がコーヒーの粉1gに残っていると考えられます。

問6
コーヒーの粉1gに対して9gの熱湯を1回だけ用いて抽出したとき、コーヒーの粉に残っている『粒』の数と、熱湯9gに溶けている『粒』の数に比を、最も簡単な整数比で表しなさい。
抽出の際は、コーヒーの粉と熱湯は十分な時間で触れていたものとします。

問7
コーヒーの粉1gに対して、27gの熱湯を1回だけ用いて抽出した場合に熱湯に溶けている『粒』の数と、別々の9gの熱湯を計3回用いて抽出した場合に得られた熱湯27gに溶けている『粒』の数の比を、最も簡単な整数比で表しなさい。
それぞれの抽出の際は。コーヒーの粉と熱湯は十分な時間で触れていたものとします。

コーヒーの淹れ方には熱湯を少しずつ注ぐ以外の方法もあります。たとえば、エスプレッソは少量の熱湯に少し高い圧力をかけて1回の抽出で淹れた、非常に濃厚なコーヒーのことです。コーヒーは好みに合わせた楽しみ方がまだまだあるので、みなさんも大人の味覚がわかるようになったら、楽しんでみてください。

問8
エスプレッソを淹れる際の豆の挽き方は、粗挽き、中挽き、細引き、極細挽きの
どれがふさわしいか答えなさい。

問9
エスプレッソは図7のような器具を使って淹れることがあります。

「水」、コーヒーの「粉」をどこに入れ、「コーヒー」がどこにできるかを解答欄の図にそれぞれ書き込みなさい。ただし、図7右の破線部分(-----)は固形物が通らず、水や水溶液は通過できるものとします。


@解説@
ちょっとしたバリスタになれる。
コーヒー学は奥が深いんですね( -ω-) _旦
問1:熱が均等に伝わり、焙煎の度合いのムラがなくなる。
金網だと豆の下の面だけがじりじりと焼かれるが、
回転式のドラムだと様々な方面から熱っするのでムラがなくなる。

問2:ア
読解問題。
カフェイン以外の苦味成分は、焙煎が進み、豆が酸化するにつれて増加するので、
浅煎りから深煎りにつれて苦味は強くなる。
酸味の原因である有機酸は有機物の酸化で生じる。
焙煎で有機物を加熱すると酸化が行われるが、やりすぎると有機酸が気体となって出て行くので、
深煎りの有機酸は少量しかない。ということは、中煎りが最も酸味が強くなる。

問3:空気に触れる表面積が増えて、有機物の酸化が早まるから。
粉状にすると表面積が増える。空気中の酸素に触れると酸化が起こる。
酸化の度合いによって、問2のようにコーヒーの苦味や酸味が変わってしまう。
コーヒー豆に限らず、酸化は食品の品質を落としかねない。
野菜も切った断面にサランラップをかけておくと、酸化を防いで鮮度が保ちやすい。

問4:摩擦熱で酸化が進み、苦味は強まり、酸味は弱くなる。
難しい。発想力が求められる。
ミルを高速で挽くか、ゆっくり挽くかでどのような違いがでてくるだろうか。

正解は摩擦熱。
ミルの歯で豆を切るので、ミルを勢いよく回すと摩擦熱が強まる。
焙煎した豆がさらに熱せられるので酸化がおこる。味の変化は問2のアを参照。
豆の断面の様子(高速だとまっすぐ切れて、ゆっくり切るとギザギザになる??)に発想が飛んでしまった子もいたんじゃないかな?

問5:熱湯がコーヒー豆にうまくあたらず、コーヒーの味が薄くなる。
ペーパーフィルターに熱湯をあてると、フィルターにしみ込んでそのまま下のコップに落ちる。
旨味のあるコーヒーにするには、熱湯がコーヒーの成分を抽出しなくてはならない。
コーヒー豆と熱湯が十分に触れていればいるほど、濃いコーヒーになる(次の設問がヒント)。

問6: 1:1
計算2題が続く。難所です。
リード文のおさらい。
コーヒーの粉に含まれる『粒』は熱湯に触れると、
コーヒーの粉に残るか熱湯に溶けるかのいずれか。
【コーヒーの粉1g+熱湯1g】
粉に残る⑨、熱湯に溶ける①
→最初のコーヒーの粉に含まれる粒を⑩とおくと、
9割が粉に残って、1割しか熱湯に溶けていない。

【コーヒーの粉1g+熱湯2g】
粉に残る⑨、熱湯に溶ける②
→最初のコーヒーの粉に含まれる粒を⑪とおくと、
熱湯に溶けた粒は全体の2/11。
先ほどは1割(1/10)しか熱湯に粒が溶けていなかったが、
熱湯を増やしたことで2/11に濃度が上昇している。

手順としては、熱湯を入れた分だけ熱湯に溶ける粒の割合が増える。
コーヒーの粉に残る粒は、1回の抽出では⑨。
○はあくまでも割合なので、濃度は最初のコーヒーの粉の粒との割合から考える

本問【コーヒーの粉1g+熱湯9g】
熱湯に溶けた粒→⑨
コーヒーの粉に残った粒は⑨。
⑨:⑨=1:1

問7: 6:7
■27gを1回で抽出
【コーヒーの粉1g+熱湯27g】
熱湯に溶けた粒→㉗
コーヒーの粉に残った粒→⑨
最初のコーヒーの粒は、㉗+⑨=㉟
濃度を求める。実際に飲むのは”熱湯に溶けた粒”なので、
㉗÷㉟=3/4

■9gを3回ずつ抽出
【コーヒーの粉1g+熱湯9g】
熱湯に溶けた粒→⑨
コーヒーの粉に残った粒→⑨(前問と一緒)
最初のコーヒーの粉は⑱

ここから2回目の抽出を行う。
コーヒーの粉に残った粒は⑨。これに熱湯9gを足す。
比率は1:1だが、一連の作業はあとで合算するので⑨を半分にして、
熱湯に溶けた粒→○4.5
コーヒーの粉に残った粒→○4.5、と置いておく。

3回目の抽出は、さらに半分。
熱湯に溶けた粒→○2.25
コーヒーの粉に残った粒→○2.25

熱湯に溶けた粒をすべてたすと、
⑨+○4.5+○2.25=○15.75
最初のコーヒーの粉は⑱だから、熱湯に溶けた粒の濃度は、
○15.75÷⑱=7/8

2つの抽出方法を比であらわすと、
熱湯1回:熱湯3回=3/4:7/8=6:7
意味を捉えて計算するのが超大変:;(∩´_`∩);:

計算結果をみると、熱湯1回より熱湯3回に分けた方が、
熱湯に溶けた粉の濃度が高いので、より濃いコーヒーとなる。
コーヒーの抽出はドリップとよばれる。手間をかけた方がおいしい訳です。

問8:極細挽き
エスプレッソは非常に濃厚なコーヒー。
濃いコーヒーをつくるにはコーヒーの成分を十分に抽出しなくてはならない。
そのためには、コーヒーの粉が熱湯によくふれるよう、表面積が広い極細挽きにする。

問9:下図参照。

最後にエスプレッソマシンの仕組みが問われた。
どうやって圧力をかけるのか。
水と加熱から蒸気圧と察せるはず。
下に水を敷いて熱する。
水蒸気が粉を通過して、上のヤカンの中で噴水する。
上の容器に取っ手がみえるので、この中にコーヒーができると想像できるはず。
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