問題PDF
地球にはたくさんの種類の生物がいます。
見た目や生活の仕方などはさまざまですが、どの生物も生きるために栄養をたくわえ、
子をつくる点は共通しています。
私たち人を含めた動物は自分自身で栄養を作れません。
そのため、自分以外の( あ )を食べています。
また、( あ )どうしで栄養をうばいあい、たくわえた栄養はさまざまな生命活動の結果、
分解された最終的に( い )と水などになります。
この( い )と水から新たに栄養を作り出す( あ )がいます。
それは( う )です。この( う )のはたらきは日光を使っているので、
私たち人が得ている栄養のほとんどは、日光の恩恵であるといえます。
問1
文中の( あ )~( う )に入る適当な語をされぞれ漢字で答えなさい。
生物が子をつくる一連の活動を生殖といいます。
この生殖において、子は自身の体をつくるための情報(遺伝情報)を親から必ずもらいます。
私たち人を含めた動物の生殖方法は、細かな部分では違いがありますが、
次の2つに大きく区別できます。
A:自分自身の体の一部から分かれたものが成長して、新たな子となる。
B:①2つの個体の体の一部からそれぞれ分かれたものが合体し、新たな子となる。
*個体とは、1体の生物のことです。
Aの生殖を行なう動物たちは、自分自身の栄養状態や環境条件が整うと、いつでも子をつくることが可能です。そして、親の体の一部からできた子は、親と同じ情報を受け継ぐので、外見や体の性質がすべて親と同じになります。たとえば、動物ではありませんが、私たちのお腹の中(腸内)に寄生している大腸菌という生物は、②20分に一度の割合で1個体から新たな1個体を切り離し、2個体になります。私たちの腸内環境がよいと活発に生殖を行い、あっという間に腸内をうめつくしてしまいます。しかし、短時間に無数に増えたこれらの大腸菌はすべて同じ性質のため、腸内の環境が変化すると全滅してしまう可能性があります。
それに対して、Bの生殖をおこなう動物たちは、簡単に生殖を行なうことができません。なぜなら、1個体の栄養状態が整うだけでは不十分で、自分以外の相手を必要とするからです。相手を探す苦労があっても、Bの生殖を行う動物たちは、他の個体と出会い、お互いの体の一部を複数出し合えば、一度に2個体以上の子を生み出すこともできます。Bの生殖で生まれた子の元になるものが受精卵で、これは、2つの親から遺伝情報をもらうため、親と子が完全に同じ性質になることはありません。この③受精卵の大きさや一度に産む数は、動物の種類によってさまざまです。このように多様であるのは、体の成長の速さや生活の仕方などが異なるからです。
このようにしてみると、Aの生殖を行う動物たちの方が、Bの生殖を行う動物たちよりも、圧倒的に子を増やしやすいと思われます。しかし、動物が繁栄していくには、子を増やすことと同様にさまざまな環境の変化に対応して生き残っていくことも必要です。つまり、④Bの生殖を行う動物たちは、Aの生殖を行う動物たちよりも環境の変化への対応が優れているため、繁栄しやすいと考えられます。私たち人からみると非常に効率の悪そうな生活や生殖をしているさまざまな動物たちが、滅ぶことなく繁栄し続けている事実は、私たち人とは異なる自然環境や他の生物との関わりのなかで、それぞれが最良の選択をしているということなのかもしれません。
問2
下線部①で合体するものは何ですか。2つ答えなさい。
問3
問2で答えたものをそれぞれ出す個体どうしの違いが( )別です。
( )に入る適当な語を漢字1文字で答えなさい。
問4
植物の生殖方法も、動物の生殖方法AやBと同じように区別できます。チューリップやひまわりを新たに育てるときに、みなさんが土の中にうめるものは何ですか。それぞれ答えなさい。
また、それらの生殖方法AとBのいずれによってできたものかも答えなさい。
問5
食中毒の原因となる病原菌が、下線部②と同様の速さで増えていくとします。この病原菌を一度の食事で10万個体まで食べても、健康な人であれば消化において殺菌できるため食中毒にはなりません。お弁当が作られたときに、この病原菌が1個体のみ付着していたとすると、作られてから何時間後までにお弁当を食べれば、食中毒にならないと考えられますか。
条件を満たす最大の整数を答えなさい。
問6
下線部③について、動物の産む卵が大きいと、どのような利点がありますか。
また、一度に産む卵が多いと、どのような利点がありますか。
それぞれ答えなさい(解答用紙は10字程度)。
問7
問6のそれぞれの利点があるにも関わらず、ほとんどの動物は、小さい卵を数千個以上も産むものか、大きな卵を数個のみ産むもののいずれかです。なぜ大きな卵を数千個以上も産む動物があまりみられないのでしょうか。考えられる理由を答えなさい(1行)。
問8
下線部④の理由として最も適当なものを選びなさい。
ア:Bの生殖を行う動物は、つねに大きな卵を産むから。
イ:Bの生殖を行う動物は、親と子で持っている遺伝情報が異なるから。
ウ:Bの生殖を行う動物は、一度にたくさんの子をつくれるから。
エ:Bの生殖を行う動物は、脳が発達しているから。
@解説@
生物の生殖について。
生物は次世代を残すために各々戦略をとっているわけですが、
なぜそのような選択をとったのか、一種の運命を感じます。
問1:あ-生物 い-二酸化炭素 う-植物
あ:自分で栄養をつくれないからこそ、他の生物を食べる。
ヒトは他の生物に依存しなければ生きていけない。
い:栄養分の多くは有機物。無機物よりもエネルギーが大きい。
有機物を分解すると炭素(二酸化炭素)と水になる。
生物は酸素と有機物を呼吸(細胞呼吸)することで生命維持に必要なエネルギーと取り出し、
二酸化炭素と水を排出する。
う:CO2と水をつかって、栄養(有機物)と酸素をつくるのが生産者である植物。
呼吸と光合成は逆の反応である。【二酸化炭素+水←→有機物+酸素】
問2:卵子・精子
合体というとちょっとアレですが、メスが出すものとオスが出すもの。
合体して受精卵となり、これが新しい個体に育つ。
問3:性
生物学的な性⇒セックス、社会的な性⇒ジェンダー(男らしさ・女らしさ)
問4:チューリップ…球根、A ひまわり…種子、B
チューリップといえば球根。
球根は栄養分が貯蔵された器官で、球根を植えるとチューリップがニョキニョキ育つ。
おしべとめしべによる受粉を介さず、新たな個体を生み出すのでAとなる。
ひまわりは黒くて細長いタネを植える。
タネはおしべとめしべの受粉により作られるのでBとなる。
@@
中3で習うが、おしべの”やく”から出される花粉がめしべの柱頭につくと花粉管が伸び、
花粉からでた精細胞が花粉管を通り、胚珠の中にある卵細胞にたどり着いて受精する。
受粉→受精の順。人間でざっくり例えると、おしべが男性器でめしべが女性器。
問5:5時間後
計算問題だが、方針は立てやすい。
20分で2倍ずつ増える。10万を超えるまで2乗しつづける。
210=1024、211=2048、212=4096、213=8192
214=16384 215=32*** 216=64*** 217=10万を超える。
2を16回かけるまではセーフ。
2を3回かけると1時間なので、16÷3=5・1/3
最大で5時間後までOK。
問6:卵が大きい…成長に必要な栄養分を豊富に含む。
卵が多い…個体の生存率を上げる。
*いずれも子孫を確実に残すため。
天敵が少なく、エサも少ない環境では卵は大きくなり、
エサは多いが天敵も多い環境では卵の数が多くなる傾向がある。
問7:母体から卵に渡す栄養分に限りがあるため。
*大きな卵をボコボコ産めたら最強だが、現実にはありえない。
図鑑やサイエンス番組をみると、産卵が命がけであるシーンは少なくない。
産卵には多量のエネルギーが使われ、子を産んで力尽きる母親もいる。
ヒトの出産も母体に大きな負担がかかる重大な医療行為であり、
産婦人科医は重責を負いながらも訴訟リスクが高く、医学生に敬遠されやすいそうだ(;’∀’)
問8:イ
Aのように、単一で新たな個体をつくる生殖を無性生殖という。
チューリップの球根は栄養生殖とよばれる無性生殖の1つ。
無性生殖では親と子の形質(形や性質)が同じなので、
リード文にある通り、環境が変化すると全滅のリスクがある。
Bのように、オスとメスの交配をともなって個体を作る生殖を有性生殖という。
互いの染色体が混ざるので、親と子で遺伝情報が異なる。
遺伝情報が異なるから、親と子の形質(形や性質)も異なる。
個体のバリエーションが豊富なので、環境が変化しても生存する個体がでてくる可能性が高い。
多様性に富んでいる種ほど生き残りやすいといわれる。
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