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2018年度 成蹊中学過去問【理科】大問3解説

問題PDF
クマに関する次の文章を読んで、後の各問いに答えなさい。

 日本には2種類のクマがいますが、そのうち本州や四国にいるのはツキノワグマです。体は黒く胸に白い月の輪のような模様があります。体重はオスが70~150kg、メスが50~100kgです。春の食べ物は、草や木の新芽、ドングリをふくむブナ科などのかたい種子、死んだ動物などです。夏の食べ物は、野イチゴなどの果実類、アリやハチの幼虫やさなぎなどのこん虫類、サワガニなどです。秋はブナ科などのかたい種子などです。木登りがうまく、木に登って枝をたぐり寄せて実などを食べます。このとき折られた枝が重なると大きな鳥の巣のようになり、それを熊だなと呼びます。この熊だなで休息することもあります。
 ツキノワグマは一定の期間を除いて単独で行動します。秋に多くの栄養を体内にたくわえて、冬は12月の初めごろから大木の根元の穴の中で冬眠をします。クマの冬眠は他の動物とちがい体温はあまり下がらず、途中で目覚めることもなく、えさを食べることも尿やふんをすることもありません。さらにメスの一部はこの状態で子を出産します。一方、同じほ乳類のシマリスなどでは冬眠中にほぼ外気温まで体温を下げ、一定期間ねむった後にとつ然目覚めてえさを食べ、尿やふんをし、またねむりにつきます。そのため、シマリスはえさをたくわえますが、ツキノワグマはえさをたくわえることはしません。
 ツキノワグマは晩春から初夏までが交尾期で、受精卵はある程度まで発育した段階でその発育が停止し、子宮のかべにつくまでの時間を遅らせます。母体が十分に栄養をたくわえると、妊娠のため、停止していた卵の発育を冬眠に入るころ再び開始し、2月の初めごろ1~2頭、体重約300gで出産します。子は母乳を飲みながら成長して、雪がとけたころに穴から出てくる時は2~3kg程度の成長しています。その後も2ヶ月ほど授乳が続き、全体で1年半ほど母親と生活を共に成長を続け、その後独り立ちをします。
 普段は森林で生活しているツキノワグマが、人里に現れることがあり、年によっては多くの目撃情報や被害が発生することもあります。これは主に食べ物を求めて山間の人里に現れるのですが、現れる回数の増加には山間の人里の人口減少や高齢化も原因の一つだと考えられています。ツキノワグマが積極的にヒトをおそうことは考えにくいですが、とつ然出会ってしまうとクマ類は相手に一撃をあたえてにげる行動をとることが多く、ヒトも冷静さを失ってけがをすることもあります。できるだけツキノワグマを人里に近づけない方法を考えることが大切です。

(1)
日本にいるもう1種類のクマの名前を答えなさい。

(2)
次のア~オの動物をツキノワグマと分類上誓い順に左から並べなさい。
ア:ネズミ イ:クモ ウ:ネコ エ:ヘビ オ:サケ

(3)
ツキノワグマの食べ物について述べた分として正しいものを3つ選びなさい。
ア:新芽は柔らかく栄養もあるので春に食べる。
イ:前年にたくわえておいたブナ科などの種子を春に食べる。
ウ:冬眠後は凶暴なので春に他の動物をおそって食べる。
エ:アリやハチの巣にたくさんの幼虫やさなぎがいるので、夏に食べる。
オ:ブナ科などの種子は栄養豊富で一度に多量に実るので秋に食べる。

(4)
図2はツキノワグマの活動時間帯を調べた結果を示したものです。
2005年と2006年のそれぞれ6月から9月の約3ヶ月間にわたって、
あるメスのツキノワグマに発信機をつけ、どんな時間帯に移動しているかを調査しました。
グラフのこい色の部分は移動していない時間(非活動時間)の割合を表しています。
点線は日の出、実線は日の入りの時間帯を表しています。
このメスは2005年には単独でしたが、2006年は2頭の子を連れていました。
このツキノワグマのメスの活動について述べた文として正しいものを4つ選びなさい。

ア:単独生活中と子育て中は主に活動する時間帯があまり変わらない。
イ:単独生活中と子育て中は主に活動する時間帯が大きくちがう。
ウ:昼間のみ行動する。
エ:主に昼間行動するが、夜間にも行動する。
オ:日の出前後より日の入り前後のほうが活動的である。
カ:日の入り前後より日の出前後のほうが活動的である。
キ:午後より午前の方が活動的である。
ク:午前より午後の方が活動的である。

(5)
シマリスの冬眠が、カエルやヘビの冬眠とちがうところを答えなさい。

(6)
図3は、ブナ科などの種子の豊作年におけるツキノワグマの食料資源量(利用可能なえさの量)の季節変化を表しています。本文と図3から、子を産み育てる活動について述べた文として誤っているものを選びなさい。

ア:えさがあまり豊富ではない時期に交尾をする。
イ:最もえさが豊富な時期に妊娠し、たい児を発育させる。
ウ:冬眠前に体内にたくわえていた栄養の量で妊娠するか決める。
エ:春になり利用可能なえさの量が増え始めると、巣から出て授乳を続ける。

(7)
受精卵がある程度発育して子宮のかべについた後の、
たい児と母体のたいばんをつないでいる部分をふつう何と呼ぶか、答えなさい。

(8)
出産された子の体重と母体の体重について述べた分として正しいものを選びなさい。
ア:ツキノワグマは母体に対して子の体重は10分の1以下であるが、ヒトは10分の1以上である。
イ:ツキノワグマは母体に対して子の体重は10分の1以上であるが、ヒトは10分の1以下である。
ウ:ツキノワグマは母体に対して子の体重は100分の1以下であるが、ヒトは100分の1以上である。
エ:ツキノワグマは母体に対して子の体重は100分の1以上であるが、ヒトは100分の1以下である。
オ:ツキノワグマは母体に対して子の体重は1000分の1以下であるが、ヒトは1000分の1以上である。

(9)
図4はブナ科などの種子の豊作年と凶作年におけるツキノワグマの目撃情報を表しています。
図4の----は豊作年の目撃件数、――――は凶作年の目撃件数です。
図4について述べた文として誤っているものを選びなさい。

ア:ツキノワグマが多く目撃される年は、秋に最も多く目撃されている。
イ:ツキノワグマがあまり目撃されていない年は、晩春から初夏に最も多く目撃されている。
ウ:冬眠前に栄養が十分たくわえられていないと人里に近づく。
エ:ブナ科などの種子の実る量がツキノワグマの現れる回数に大きく影響している。
オ:ブナ科などの種子が多く実った年は、秋に多く目撃されている。

(10)
本文中の下線部のように考えられる理由として誤っているものを選びなさい。
ア:空き家が増えたことで、その中でクマが冬眠する場所が増えたから。
イ:カキやクリなど庭先の果樹の利用が減り、クマのえさが増えたから。
ウ:人影が減りクマが恐れているヒトと出会う可能性が減少したから。
エ:人里と山林との境付近の手入れが悪く、人里の近くまでクマがかくれる場所があるから。
オ:自宅用の畑にとり残しの作物が増え、クマのえさが増えたから。


@解説@

スノーシューより、熊だな。こんなところまでクマが登るとは…。
(1)ヒグマ
ヒグマは北海道に生息する。

左がヒグマ、右がツキノワグマ。

(2)ウ(ネコ)→ア(ネズミ)→エ(ヘビ)→オ(サケ)→イ(クモ)
生物の分類上、ツキノワグマと近い順に並べる。なかなか考えさせられる(;^ω^)
遠い順の方がわかりやすいかな?
クモは無脊椎動物の節足動物クモ科。
クモ以外は脊椎動物。陸と水で分けて、魚類のサケが次に遠い。
ヘビは爬虫類。魚類とともに変温動物。
残りのネコとネズミは、クマと同じ哺乳類に分類される。
ネコは可愛いが肉食で運動神経が良く、ネズミを捕食する立場にある。
このあたりから、同じく捕食者のクマと近いのではないか?と推測する。
*ネコとクマは共に食肉目で、ハンターとして獲物を狩る能力が高い。

(3)ア・エ・オ
読解問題。
第一段落にすべて書かれてある。

(4)ア・エ・オ・ク
グラフの読み取り問題。4つ選ぶが難しくはない。

アイ:左が単独、右が子連れ。傾向はさほど変わらず。ア
ウエ:昼間の方が非活動時間が少ない(よく動く)が、日の入りのあとでも動いている。エ
オカキク:午前より午後の方が活動的で、日の入り前後がMAX。オ・ク

(5)たくわえたえさを食べ、尿やふんをする。
リード文のどこにもヘビやカエルが登場しない(;^ω^)
シマリスが登場する、第二段落の後半の内容を書くしかない。
ただし、ヘビやカエルは変温動物なので、『外気温まで体温を下げ』のくだりは書かないこと!

(6)イ
リード文の文章をヒントに推測する。

ア:『ツキノワグマは晩春から初夏までが交尾期』→えさが少ない。〇
ウ:第三段落。『受精卵の発育を停止し、子宮に着床する時間を遅らせる。
 母体が十分に栄養を蓄えると、妊娠のため、停止していた卵の発育を冬眠期間中に再開する』
 妊娠・出産には多量のエネルギーを必要とする。
 冬眠前に摂取できた栄養の量が、妊娠や出産に影響を与えると考えられる。〇
エ:『冬眠中の2月初めごろに出産。雪が溶けて穴から出てくる時に、
 小熊は2~3kg程度に成長。その後、2ヶ月ほど授乳が続く』
 冬季と比べ、3~5月に植物資源量が増える。○

イ:最もえさが豊富な時期に妊娠し、たい児を発育させる。
↑これが誤り。

(7)へその緒
胎児と胎盤をつなぐもの。医学では臍帯(さいたい)というらしい。
クマは哺乳類だから胎生で、へその緒を通じて栄養を胎児に送り込み、
母体の中である程度発育する。

(8)ウ
リード文から情報を取得。
ヒトには言及されていないが、クマだけで選べる。
ツキノワグマのメスは50~100kg→平均で75kg(7500g)とする。
出産後の子クマは300g。
300÷7500=1/250
1000分の1以上、100分の1以下なのでウ。
ちなみに、ヒトの新生児の平均体重は3000gほど

(9)オ

リード文と図4と統合すると、冬眠や出産に備えて秋頃に栄養をたくさん摂取する必要があり、
えさであるブナ科の種子が凶作だと、ツキノワグマがえさを求めて人里に近づく傾向にある。

(10)ア
山間の人里の人口減少や高齢化が、ツキノワグマの出現回数の増加につながる原因を問う。
ア:ツキノワグマは岩穴や土穴、大木の虚(うろ;空洞)で冬眠する。
 それっぽく書かれてあるが、さすがに空き家では冬眠しない(^^;

イ:庭になっている果実をクマが食べにくる。
ウ:ヒトと会う可能性が減って、クマが里にでてきた。
エ:手入れ不足で人里と山林の境界が曖昧になり、クマが里に現れる。
オ:耕作放棄地の広がりは虫害の発生だけでなく、クマの出没にもつながる。

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