2019年度 渋谷教育学園幕張中学過去問【理科】大問2解説

問題PDF
耳のはたらきについて、問いに答えなさい。

音は、物体の振動です。
音源の振動が周りの物体に伝わることで、音は広がります。
私たちが聞いている音は、通常、空気の振動として伝わります。
音が聞こえる感覚を聴覚といいます。

図1は、ヒトの耳のつくりがわかるように描いた断面図です。
ヒトの耳は、外耳(がいじ)、中耳(ちゅうじ)、内耳(ないじ)の3つの部分に分けられます。
外耳道の奥に鼓膜という薄い膜があり、外耳と中耳の境となっています。
中耳には、鼓室や、耳小骨、耳管があります。
さらに奥にある内耳で、聴覚に関わるのはうずまき管です。
耳介で集められた音は外耳道に入り、鼓膜を振動させます。
鼓膜の奥にある空間を、鼓室と言います。
鼓室には耳小骨という3つの小さな骨があります。
鼓膜の振動は、3つの耳小骨を順に伝わります。
3番目の耳小骨はうずまき管につながっています。

うずまき管は、頭の骨の内部にある骨のつくりで、形から蝸牛(かぎゅう)とも呼びます
うずまき管の内部はリンパ液で満たされています。
うずまき管の内部では、耳小骨から伝わったリンパ液の振動が神経の活動に変換されます。
神経によってうずまき管から送られた情報が脳で処理されることで、聴覚を生じます。
このように、外耳と中耳を経た音の聞こえ方を、気導と言います。

通常、私たちが聞いている音は、主に気導による音ですが、
他に、骨導という音の聞こえ方もあります。
骨導では、振動が頭の骨に伝わり、骨の振動がうずまき管へ伝わります。
例えば、あごを動かして歯をカチカチさせると、主に骨導で音が聞こえます。
骨導には、外耳や中耳のはたらきは関係しません。

(1)下線部Ⅰの蝸牛とは、草むらなどに住む、身近な動物です。
この動物の名称を答えなさい。

(2)音が聞こえるしくみを図2にまとめます。
本文に従って、(   )に適語を補いなさい。

物体が1秒間に振動する回数を、振動数といいます。
振動数の単位はヘルツ(Hz)で、例えば1000Hzは1秒間に1000回振動することを示します。
振動数が大きいほど、高い音になります。

標準純音聴力検査では聞く能力を調べます。
この検査では、音の高さを変え、各々の高さの音について、やっと聞こえる音の大きさを、
気導と骨導のそれぞれについて左右の耳で測定します。
気導の測定では、耳にヘッドホンを当てて、ある高さの音を鳴らします。
音をしだいに大きくしていき、初めて聞こえたときの音の大きさを記録します。
7段階の音の高さについて、順に記録をとります。
骨導の測定では、耳の後ろの出っぱりのある部分に振動板を当て、
頭の骨に振動を伝えて測定します。骨導では、125Hzと8000Hzでの測定は行わず、
5段階の音の高さについて測定します。

図3は、標準純音聴力検査の例です。
横軸は、音の振動数で音の振動数です。
たて軸のdB(デジベル)は、音の大きさの違いを示す単位です。
気導と骨導のそれぞれについて、非常に耳が良い人でやっと聞こえる音の大きさを0dBとします。
検査ではデジベルの値が大きくなるほど、やっと聞こえる音の大きさが大きいことを意味します。
20dB以内の測定結果であれば、正常とします。
図3は、右耳の気導の結果を○で示し、実線でつないでいます。
左耳の気導の結果は×で示し、破線でつないでいます。
右耳の骨導はで示します。左耳の骨導はで示します。
線が重なると見にくくなるので、骨導は線でつないでいません。

(3)図3の検査結果において、①気導と②骨導のそれぞれについて、
適するものをそれぞれ3つずつ選びなさい。
(ア)右耳は、1000Hzで、20dBの音が聞こえる。
(イ)右耳は、1000Hzで、20dBの音が聞こえない。
(ウ)左耳は、1000Hzで、20dBの音が聞こえる。
(エ)左耳は、1000Hzで、20dBの音が聞こえない。
(オ)どの高さの音でも、右耳が聞こえにくく。正常と言えない。
(カ)どの高さの音でも、左耳が聞こえにくく。正常と言えない。
(キ)どの高さの音でも、左右とも正常である。
(ク)どの高さの音でも、左右とも聞こえにくく、正常と言えない。

中耳にある耳管は細い管で、鼻の奥とのどをつなぐ空間に通じています。
耳管は、普段は閉じていますが、耳管が開くと、空気が鼓室まで通じます。
新幹線がトンネルに入ったときなど、一時的に音が聞こえにくくなることがあります。
原因は、外耳道と鼓室の気圧のバランスが崩れて、鼓膜が内、または外側に引っ張られたことです。このようなとき、あくびをするように口を大きくあけたり、水をゴクンと飲み込んだりすることで、音の聞こえ方がもとに戻ります

(4)下線部Ⅱの理由として、(   )に20字程度の文を補いなさい。
(                 )。
結果、外耳道と鼓室の気圧が等しくなり、鼓膜が正常な状態になった。

小児の場合、耳管が短く、傾きが水平に近いので、のどや鼻の細菌が鼓室へ入りやすくなっています。急性中耳炎は、鼓室や耳管に入った細菌が増殖して、炎症を起こす病気です。
炎症とは、さまざまな原因により体に異常が生じた時におきる反応で、赤く腫れたり、熱くなったりして、痛みを感じます。

次のAとBは、中耳炎がもとで音が聞こえにくくなった状態です。
(A)急性中耳炎の後、しみ出た血液成分が鼓室にたまり、音が聞こえにくくなっている。
(B)中耳炎をくり返した結果、内耳まで炎症が広がってしまい、
   音が聞こえにくくなっている。

(5)A、Bそれぞれの場合、標準純音聴力検査の結果を示す図は、次のうちどれに近くなりますか。右耳の場合について、最も適するものを選びなさい。

Bのような状態になるのを防ぐため、急性中耳炎では痛みが引いた後の管理が大切です。
また、カゼが引いたときに、鼻水がたまらないように鼻の通りを良くしておくことも大切です。


@解説@
耳の仕組みと聴力の検査。
習わないので、現場で習得します。
(1)かたつむり

見た目がカタツムリのカラのようだから。
カタツムリは漢字で「蝸牛」と書きます。

(2)①鼓膜 ②耳小骨 ③リンパ液
音の聞こえ方。リード文の読解問題。

気導は鼓膜が振動して、鼓室にある3つの耳小骨を通じ、
うずまき管内のリンパ液を振動させ、神経→脳といく。
骨導は途中のうずまき管からスタートする。
後ろの問題を解くにあたっての前提知識になるので正確に理解しておく。

(3)①気導-ア・エ・カ、骨導-ア・ウ・キ

グラフの上に位置する値ほど聴力が高い。
20dB以内が正常で、それより下は正常ではなくなる。
気導は折れ線。右耳は20dB以内で正常だが、左はそれ以上でないと聞こえず、正常ではない。
骨導はコの字。左右共に20dB以内で正常。

(4)耳管が開いて、鼓室に空気が入り込む (17字)
読解問題。
一時的に音が聞こえにくくなる原因は、
『外耳道と鼓室の気圧のバランスが崩れ、鼓膜が内外に引っ張られる』こと。
空欄のあとは、『外耳道と鼓室の気圧が等しくなり、鼓膜が正常な状態になった』。
【あくびをしたり、水をゴクンと飲み込む】と、外耳道と鼓室の気圧バランスが整うことになる。
それはなぜか。
ここで耳管を使う。普段は閉じている耳管は鼻の奥や喉とつながっており
あくびで大きく口を動かしたり、飲み込みで喉を動かすと耳管が開く
鼻や喉は空気が出入りする場所。
鼓室に空気が入り込み、鼓室内の気圧が外耳道の気圧と等しくなると考えられる。
記述の要素はリード文で巧妙にばら撒かれている。

(5)A-ウ、B-イ
いきなり急性中耳炎の話に移る(´゚д゚`)
使える情報は必ずある。最初のリード文を読んでみよう。

(2)より、①鼓膜 ②耳小骨 ③リンパ液。
リード文の情報が整理されているので使いやすい。
(A)は中耳炎で鼓室に血液成分がたまってしまった。
中耳には3つの耳小骨があり、これらがうまく振動しないので聞きづらくなる。
一方、骨導(図2の点線)は内耳のうずまき管内からスタートなので、中耳炎の影響を受けない。
つまり、気導は聞こえないが、骨導が聞こえるものが答えになる。
折れ線が20dBより上で、逆コの字が20dB以内のウが答えになる。

(B)急性中耳炎が進行し、内耳までやられてしまうと骨導も聞こえなくなる。
ともに20dBを超えているイが正解。

問題文のすみずみまで丁寧に読み解かなければならない。
いきなり知らない話題をふっかけられても、手がかりはどこかに書かれてある。
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