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2019年度 海陽中等教育学校過去問・特別給費【理科】大問1解説

問題PDF
雲についての文章を読み、あとの問いに答えなさい。

よく晴れた夏の日のことです。ひろし君が空を見上げると雲が浮かんでいました。
ひろし君は2分ごとに写真を撮って雲が生まれて消えていく様子を観察しました。
写真は図1の5枚です。

0分はまだ雲がない状態。2分で雲ができ始めて、4分で大きくなり、
6分が最大で、その後8分のように小さくなってその後雲は消えました。
A~Fは空中の場所を表しています。

ひろし君が中学生のお姉さんのまいさんに話しました。

ひろし:曇ってどこかから水平に流れてくるものだと思ってた。
    雲って何もない場所から生まれるんだよ、お姉ちゃん。
 まい:雲がどうやってできるか知ってる?
ひろし:水蒸気をふくんだ空気が地面の近くで温められて上昇するでしょ。
    上に行くと温度が下がって、そうすると空気中の水蒸気が水滴になる。それが雲だ。
 まい:だいたいいいけど、途中の説明が抜けてるよ。空気のかたまりが上昇すると、
    上空では空気のかたまりが膨張するの。
ひろし:何で膨張するの?
 まい:お祭りやイベントでもらう風船も手を放すと上がっていくけど、
    上空に行くと体積が大きくなるんだよ。

問1
ヘリウムの入った風船が上空に上がると体積が大きくなるのはなぜでしょうか。
その理由を選びなさい。
ア:上空では気温が低いため。
イ:上空では水平に風が吹いているため。
ウ:上空では気圧が低いため。
エ:上空では空気中にふくまれる水蒸気が少ないため。
オ:上空では風船にはたらく浮力が小さくなるため。

まい:で、空気は膨張すると温度が下がるの。
ひろし:なんで?
 まい:そこは難しいんだけど、スプレー缶をプシューっと吹き出すと缶が冷たくなるでしょ。
    あれと同じなんだって。空気のかたまりが膨張すると温度が下がって、
    あとはひろしの説明のとおり。空気中の水蒸気が水滴になる。それが雲ね。
ひろし:わかったよ。僕が撮った写真だと0分から6分まで空気が上昇しているんだね。
    そこで上昇は行き止まりで、そこからは雲が消えていってる。
ひろし:お姉ちゃん、図1の5枚の写真を見ると、雲の上の方はもこもこしてるのに、
    雲の底は平らなんだよ。どうして?
 まい:図1の6分の写真をよく見ると、
    さっきの雲の隣で同じ写真に写っていた図2のようになってるよね。

ひろし:あ。雲の底が同じ高さだ。
 まい:それがヒントね。もうひとつ、雲の底が平らになる理由のヒント。
    図1の写真で、水蒸気や水滴はどこにあるかわかるかな。

問2
図1の4分のときに、水蒸気を白丸で、水滴を黒丸で表すと、次のどれになりますか。
また、それが正しいと言える理由を書きなさい(解答欄は4行)。
「AとBを結ぶ線」という言葉を用いること。場所を表すとき、A~Fの記号を使ってもよい。

 まい:これで、雲の底が平らになる理由もわかるよね。
ひろし:わかったよ。お姉ちゃん、もうひとつ。雲はなぜ白いの?
 まい:ひろしはなぜだと思う?
ひろし:雲はもともと白いのかな。いや黒い雲も見たことあるぞ。
    それとも太陽の光を反射するからかな。でも、黒い雲は反射しないのか。
    だいたい雲って水の粒でしょ。透明じゃないの。
 まい:雲は水の粒の集まりで、水の粒自体は透明というのは正しいよ。
    じゃあ、ちょっと考えてみようか。
 まい:図3のように、複雑な形をしたガラスの立体を関上げるね。

 これが水滴のつもり。この立体の下の面から強さ1のレーザー光を入れると、上下左右に
 1/4=0.25ずつ進むとします。空気中やガラス中で光が吸収されることはないとするね。
まい:次に図4のようにこの立体を2つ(A、B)並べて下から強さ1のレーザー光を入れるよ。

 上・下・左・右に進む光の強さを考えて。ただし、立体を4回通る(あるいは反射する)と
 光の強さは、1/4×1/4×1/4×1/4=1/256=0.0039…になってとっても弱い(0.01未満)から、
 4回通る光は考えないことにするね。はじめは左に進む光の強さを計算して。
ひろし:Aから左に進む光とBから左に進む光があるから、表1を作って・・・。

 まい:できたね。右に進む光の強さもこれと同じで0.33ね。じゃあ、上と下は?
ひろし:表2と表3を作って、と。

問3
図4で上と下に進む光の強さ(表2、3の①と②)はそれぞれいくらですか。
小数第2位まで求めなさい。

まい:できたね。じゃあ、次は立体4つ。

  図5のように立体を4個並べて、Aの立体の下から1のレーザー光を入れるね。

  このとき、左に進む光の強さはいくら?
ひろし:表4を作るぞ。

問4
図5で左に進む光の強さは合わせて(表4の③)はいくらですか。小数第2位まで求めなさい。

問5
ここまででわかることを選びなさい。
ア:立体の数が多いほど(上方に)通り抜ける光が多く、横に出る光も多くなる。
イ:立体の数が多いほど通り抜ける光が少なく、横に出る光も少なくなる。
ウ:立体の数が多いほど通り抜ける光が多く、横に出る光は少なくなる。
エ:立体の数が多いほど通り抜ける光が少なく、横にでる光が多くなる。

 まい:雲が白い理由がわかった?
ひろし:うん。でも黒い雲もあるし・・・。
 まい:入道雲が白く見えるのは、ひろしが遠くから、
   しかも入道雲を横から見ているから(図6のA)だよ。
   入道雲の真下に行って雲を見上げてみて(B)。
   きっと暗い雲が見えるよ。

問6
①ひろし君には入道雲が白く見えるしくみと、
②下から見上げると黒く見えるしくみを説明しなさい。
ガラスの立体で考えたことを用いること(解答欄は①3行、②2行)


@解説@
雲に関する設問。
なぜ雲は白と黒があるのか?丁寧な誘導に従ってひも解く。
問1:ウ
地表にある物体は大気からの圧力(気圧)を受けている。
気圧を受けても物体がつぶされないのは、気圧で押される外側からの力と同じ力で、
物体内部からも押しているから。
上空にあがるほど、物体の上にある大気の厚さが薄くなるので気圧は減っていく。
気圧が減ると大気が外側から物体を押す力が小さくなり、
相対的に物体の内側から押す力が大きくなるので、物体は膨張する。

問2:ウ
理由-水蒸気は地表から蒸発するので雲の下にもあり、
雲ができ始めるAとBを結ぶ線から水蒸気が冷えて凝結し、水滴となって雲があらわれるから。
*水蒸気は目に見えないが、地表から蒸発した水なので当然、
雲の下にもある。
「AとBを結ぶ線」からつぎつぎと雲(雲粒;うんりゅう)ができる。
ここから水蒸気が水滴になる温度(露点)になり、雲が形成される。あとは記述力!

問3:①0.06 ②0.27
表1に従って穴埋め。反射は3回まで。

行数が過不足ないのでありがたい。
必ず分数で計算し、最後に小数に変換して四捨五入すること!
はじめから小数で計算すると誤差がでてしまう。

問4:③0.34
前問と同様。パターンは4つある。

Dは通らない。

問5:エ
表の結果を観察する。
表1(ガラス2つ)で、左に進む光は0.33。
表4(ガラス4つ)で、左に進む光は0.34。
ガラスを増やすと左に進む光が多くなる。
ガラスは左右対称に並べるので、左に進む光の量が多いということは、
左右(横)に出る光が多くなったということ→ア・エ
はじめのレーザー光の強さは1なので、左右の割合が多くなったということは、
上下方向の合計割合は下がる。
計算せずとも、上位に通り抜ける光の量は少なくなると判断できる。

問6:①雲の中にある無数の水滴に光が反射した結果、
雲の横側に光が多く集まるから。

②太陽とは反対の面にあたる雲の下は、雲を通り抜ける光の量が少ないから。
*①この大問で海陽中が問いたかったこと。
なぜ、雲は横からだと白く、下からだと黒く見えるのか。
白く見えるということは、光の量が多いから
光量を増やせば必ずしも白になるわけではないが、
光の三原色である赤・青・緑を混ぜると白になるように、
いろんな光が集まると白に見えるようになる。
前問より、雲の横に出る光が多いので、これを水滴の反射に触れて述べる。
②黒く見えるということは、反対に光の量が少ない。
前問より、下からレーザー光をあてた場合は上方に通り抜ける光は少ない。
雲は上から照らされるので、図4・5とは上下反対になる
太陽と反対側にある雲の下は、通り抜ける光が少ないから黒く見えることになる。
光があっちこっちにいくことを散乱といいます。
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