問題PDF
太郎君は、夏休みに博物館で開催されている「昆虫展」に行き、次のようなレポートにまとめました。
ただし、図は一部省略されているところもあります。
昆虫の種類が多いのはなぜか!
現在、地球上にはおよそ200万種の生物が確認されているが、その半数以上が昆虫!!
昆虫の99%は翅をもち飛ぶことができる、そのうちの80%は完全変態をおこなう。
⇒だから、昆虫の種類が多いのは、翅をもつことと完全変態することに秘密がある。
<秘密その① 翅をもつ昆虫>
昆虫のからだは、「頭部」「胸部」「腹部」の3つの部分に分かれている。
・頭部には口のほか、複眼、単眼、触覚などがある。…センサーのはたらき
・胸部には三対の脚があり、多くの昆虫では二対の翅をもっている。…移動のはたらき
・腹部には大部分の消化器と排出器、また、ふつうは気門という呼吸のための孔がある。
さらに、精巣や卵巣、産卵管などの子どもを残すためのつくりもある。
…消化・吸収・排泄・呼吸・子どもを残すためのはたらき
<秘密その② 完全変態する昆虫(チョウ)>
植物に生みつけられた卵から孵化した幼虫は、その植物をひたすら食べて成長する。そして、さなぎになり、成虫になるためにからだのつくりを大きく変える。さなぎから羽化した成虫は、生まれた場所を離れ、花の蜜などを吸いながら栄養を蓄え、異性と出会い子どもを残す。このように、完全変態する昆虫は、幼虫と成虫とで食べ物や生活の目的などを変え、それぞれの時期に応じたからだのつくりをもっている。
(1)
次の中から完全変態をおこなう昆虫をすべて選びなさい。
ア:ジョウログモ イ:ミヤマクワガタ ウ:ヒメヤスデ
エ:ヒグラシ オ:オカダンゴムシ カ:ミスジマイマイ
キ:チャバネゴキブリ ク:オニヤンマ ケ:オオムラサキ
コ:ナナホシテントウ
(2)
太郎君は、昆虫のからだのつくりを示すために、ハチを例にして図を描きたすことにしました。レポートの太字で示されているつくりのみをすべて含むようにハチの図を描きなさい。ただし、からだを横から見たものとして、頭部を左側にすること。また、対になっている構造は片側のみをしめすこと。
(3)
昆虫のからだには、同種の異性を見つけやすくするためにさまざまな機能が備わっています。
その例としてふさわしくないものを次のなかから2つ選びなさい。
ア:ヘイケボタルの発光器 イ:カイコガの触覚 ウ:アブラゼミの発音器
エ:オオスズメバチの黄と黒のしまの体色 オ:ヤマトタマムシの光沢のある翅
(4)
太郎君のレポートを見た先生は、昆虫が翅をもち完全変態することと、その種類が多いということの関係が説明不足であると指摘しました、そこで、太郎君はレポートの最後に次のような文を付け加えることにしました。以下の空らんにあてはまる文を20字以内で答えなさい。ただし、句読点も文字数に含みます。
翅をもち、完全変態によりからだのつくりを大きく変えるようになった昆虫は、活動の範囲を広げるだけでなく、食べるものを変えるなど生活の仕方を変えていくことによって、
〔 〕。
そして、長い時間をかけながら昆虫はその種類を増やしていった。
(5)
生物の種類が多いことを生物多様性といいます。現在は、地球史上これまでにない速さで多くの生物が絶滅して生物多様性が失われており、これには人類の活動が大きく関わっています。次のうち、生物多様性を減少させる可能性があるものはいくつありますか。0~7の数字を用いて答えなさい。
ア:海洋の酸性化 イ:シカの計画的駆除 ウ:ミドリガメの遺棄
エ:ハクチョウの餌付け オ:コスモス畑の造成 カ:サンゴ礁の埋め立て
キ:コンクリート護岸の整備
@解説@
(1)イ・ケ・コ
10択からすべて式なので気が抜けない…。
クモ、ヤスデ、ダンゴムシは昆虫類ではない。
マイマイはカタツムリなので、これも違う。
イ:ミヤマクワガタ、エ:ヒグラシ、ク:オニヤンマ、
キ:チャバネゴキブリ、ケ:オオムラサキ、コ:ナナホシテントウ
不完全変態の代表例として、セミ・トンボ・バッタ・カマキリ・ゴキブリは覚えておこう。
セミ科のヒグラシとゴキが外れる。
(2)
うまく書けた方よ(´ェ`)
問題文の条件を守ろう。
頭部が左側で対になっているのは片側のみ。
(3)エ・オ
難しい。
図鑑問題に近い。
同種の異性を見つけやすくする=求愛行為
求愛は常日頃行うものではないので、
体色や翅の光沢は関係ないだろうと推測すればエ・オを選べる。
イのカイコガの触覚が曲者だが、カイコの生態は発展事項であるものの、
中学受験の理科で扱うので早実受験生は覚えておきたい。
カイコは人間が管理しやすいよう家畜化されたもので、自然界では生きられない。
成虫は羽を持つが飛ぶことができず、口が退化しているため、食事ができない。
羽化後は繁殖が大きな仕事となり、オスは触覚でメスのフェロモンを検知する。
ちなみに、オオスズメバチの黄と黒のしまの体色は警戒色で、
天敵に自身が怖い存在であることを示して捕食されるのを防ぐ。
Hondaキャンプより。ヤマトタマムシ。
どうやら、天敵である鳥が、色が変わるものを怖がるようで翅が光っているらしい。
(4)さまざまな環境に適用できるようになった
因果関係をつなげる。
完全変態で体のつくりを大きく変える
⇒活動の範囲を広げる+食べるものを変えるなど生活の仕方を変えていく
⇒( )⇒昆虫は種類を増やした。
生物は環境に適応するように進化する。
活動範囲を広げ、食べ物を変えて移住先の環境でも生きられるようになり、種類が増えた。
@昆虫類の多様性@
昆虫類は全生物のうち6~7割を占めるという(;´Д`)ヒィィ
・個体のサイズが小さいので、生活範囲が狭くて住む。
これにより一定の面積に多くの昆虫が見られるようになった。
・翅をもつ種は移動能力があり、生育範囲を広げた。
・餌を変えたことで競合をなるべく避け、住み分けを図った。
・寿命が短いので世代交代のスピードが速く、進化が進んだ。
(5)5
生物多様性を減少させる可能性のあるものを選ぶ。
7択から該当する選択肢の個数を答えるので消去法が使えない。
ア:海洋の酸性化…温暖化の促進で海洋が酸性化すると、海の生物たちの発育が悪くなる。〇
海洋が大気中のCO2を取り込めにくくなり、温暖化がより進むといわれている。
イ:鹿の計画的駆除…”計画的”なので、多様性を害さないよう配慮していると思われる。×
ウ:ミドリガメの遺棄…遺棄は捨てること。ミドリガメ(ミシシッピアカミミガメ)は外来種。〇
しかし、現時点では特定外来生物には指定されていない模様→日本の外来種対策
エ:ハクチョウの餌付け…一見良さげに見えるが、野生動物への餌付けは保護目的以外NG!
餌付けによって自ら餌を求めなくなり、ハクチョウの行動パターンや個体数が変化する。
すると、ハクチョウが生態を荒らし、生物の多様性を阻害するおそれがある。〇
オ:コスモス畑の造成…造成は人の手を加えること。
造成のやり方次第と思うのだが、人の管理が適切に及んでいるのであれば問題なし。×
岡山市では下水処理施設の再利用水を用いたコスモス畑の開放で自然と触れ合う機会を提供し、
生物多様性の保全と再生に取り組んでいるようです。
カ:サンゴ礁の埋め立て…生物の住処が奪われる。〇
珊瑚礁には多様な生物が生息している。
キ:コンクリート護岸の整備…干満差のある磯にも多様な生物が多く住んでいるので、
コンクリートで埋めると多様性がなくなる。〇
武蔵中で磯の生態系が問われました。
磯の激しい潮位の変化が関係しています。
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