2019年度 開成中学過去問【理科】大問1解説

問題PDF
コップの中で水に浮かぶ氷を見てみましょう。

氷は透明であるはずなのに、部分的に白くにごって見えることがあります。
水には水以外の物質を追い出しながら水だけが固体となる性質があります。
ところが、水道水や雨水などには水以外の物質が含まれています。
そして、水が氷になるときに、それらの物質が氷の中に最後に閉じ込められると、
白くにごって見える氷になってしまいます。
家庭用の冷蔵庫では、このような氷になることが多くあります。
しかし、工夫をすれば透明な氷を作ることができます。
水以外の物質を追い出しながら水だけが固体となる性質を上手に利用すればいいのです。
下の文①~④は、身近に聞いたり体験したりできるものです。
なお、①~④は水の性質ごとに、2つずつまとめています。

問1
①~④のうち、氷が水に浮かぶことと関係が深いものはどれですか。
①~④の中から選びなさい。

問2
家庭の冷蔵庫でつくった氷を観察すると、図1のように、氷のふちのあたりは透明でしたが、
氷の真ん中あたりは白くにごっており、全体が透明な氷ではありませんでした。
この氷はどのようにしてできたと考えられますか。あてはまるものを選びなさい。

ア:図1の上の方から下の方に向かって順に氷になった。
イ:図1の下の方から上の方に向かって順に氷になった。
ウ:図1の周りから中心に向かって順に氷になった。
エ:図1の中心から周りに向かって順に氷になった。

問3
全体が透明な氷を作るために、下のような手順を考えました。
文中の下線部A、Bの操作は、①~④のどれを手がかりにしていますか。
下線部A、Bのそれぞれについて、①~④の中から選びなさい。

■手順1■ 水に溶けている水以外の物質をできるだけ追い出す。
蛇口じゃぐちからくんだ水道水には水以外の物質が含まれているので、一度やかんで沸とうさせます
やかんに残った水を部屋と同じ温度まで冷まします。

■手順2■ まだ残っている水以外の物質を水だけが固体となる性質を利用して追い出す
手順1のやかんの水を発砲スチロールのカップに入れ、冷凍庫で冷やします。
水の全部が氷になる前にカップを取り出し、Bまだ凍っていない部分の水を捨て
その分だけ手順1のやかんから新しい水を入れます。
この操作を、完全に水が凍るまでくり返します。

問4
海水は、海の底の方から上昇したり、水平に移動したり、とどまったり、海の底の方に沈む込んだりしながら、ゆっくりと循環じゅんかんしています。そして海水が循環することは、さまざまな地域の暑さや寒さをやわらげていると考えられています。このとき海では、透明な氷をつくるときと同じ理由で説明できることが起こっています。循環の中で、海の表面付近で氷ができているとき、凍らなかった海水はどのようになっていると考えられますか。
ア:広がらずに海の表面付近にとどまっている。
イ:海の表面付近を水平に移動している。
ウ:海の底の方に向かって沈んでいる。

問5
水が循環しているのは海の中だけではありません。
地球上の水は、氷になったり水蒸気になったりしながら、地上と空との間を循環しています。
地上の水には、インクやジュース、どろ水、海水など、いろいろな物質が溶けたり混じったりしています。それらの一部は地上から空に移動して雲となり、いずれは雨となって再び地上に降ってきています。それなのに、インクと同じ色の雲ができたり、オレンジジュース味の雨が降ったりはしません。この理由は、地上にある水が空に移動するときに起こることに関係しています。
この理由を考える手がかりとなるものを、①~④の中から選びなさい。


@解説@
正答率はかなり高いと思われる。題材が面白かったので取り上げました。
まず、水の性質をおさえておく。

→空気は水に溶ける。
魚が水中でエラ呼吸できるのも、水の中に気泡きほうができるのも、空気が水に溶け込むため。
水を温めると気体がでてくる(一般的に気体は水温が低いほど溶けやすい

密度(比重)の違いで浮かんだり、沈んだりする。
水は凍らすと膨張して体積が大きくなり、密度が小さくなる。

→溶液を凍らせると、濃度の高いところと低いところに分離する。
海水では塩より先に水から凍る。凍りきれなかった海水は塩分濃度が高い。

→水が蒸発してなくなった。白い粉は塩。

問1:②
氷が水に浮かぶのは、氷が水より密度が小さいから。
密度に関して述べている②が正解。

問2:ウ
水は水以外の物質を追い出しながら凍っていく
製氷皿に接した外側から凍り、不純物が追いやられる真ん中が最後に凍ることで、
氷の真ん中らへんが白くなる。

問3:A-①、B-③
A-水道水は消毒用の塩素(気体)が溶けているので、沸騰させて塩素を出す。
B-水同士から凍っていくので、凍っていないところは不純物が溜まっている。
お米をとぐような感じで何度も水を捨てていけば、純水に近い氷ができあがる。

問4:ウ
いきなり話のカットが切り替わるが、前問の考えがヒントになる。
【水は不純物を押し出しながら、水だけが先に凍っていく】
海の表面付近で氷ができているということは、その氷は純水に近い。
追い出された不純物たちは、水よりも密度が大きいと”凍らなかった海水”として底に沈んでいく。

問5:④
これも素直な問題だが、問題の発想がユニーク。
オレンジジュース味の雨は夢がありますね(*ฅ´ω`ฅ*)

水が他の物質と混ざり合っても、蒸発するときにインクやジュースの色素を地上に置き去り、
自分だけ水蒸気となって空に飛んでいく。
試しにインクやオレンジジュースを沸騰させて、うまく蒸留すれば、
完璧な水にはならなくとも、無色透明の水に近いものにはなるはずです。

@余談@
透明な氷にあこがれて、ミネラルウォーターを製氷機に突っ込んだ人を知っていますが、
あれはダメらしいです(´゚д゚`)
雑菌が繁殖して臭います。反省

@余談2@
ファミレスで一面だけが凹とくぼんでる氷ありますよね?
実はこれも純度の高い氷を作る、秘密の機械が理由だそうです。
take a look!ファミレスの氷の真ん中がへこんでいる理由(ねとらぼさん)
上から凍らせて不純物を落とす。面白い発想です。



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