小論文の書き方のコツをおさえておくと、意見の組み立てや議論の仕方のヒントになります。
受験や大学のテストだけではなく、社会生活のなかで広く役に立つはずです。
・論理性 ・小論文の基本形(重要) ・注意点
小論文とは
自分の意見を主張して、読み手を説得することを目的とした文章。
試験では限られたテーマ・時間・字数内で書かなければならない。
小論文の重要な要素
とくに重要なのが「論理性」と「客観性」(+表現力)
・論理性
論理とは【つながり】。筋道をたてて説明すること。
雲行きが怪しい→(から)→雨が降りそうだ→(から)→傘を持っていこう…といった具合。
鎖のチェーンのように、始めから終わりまでつなげるイメージです。
どこかのつながりが弱いとつっこまれてしまう。なるべくスキマを埋めてつなげる。
例題:【運動神経がいい人は→頭もいい】
そんな感じもするけど、言葉足らずで説明不足・・。
【運動神経がいいと→状況に応じて身体を動かせる
→これは脳の瞬発力・判断力が優れている証拠→頭イイ】
原因と結果のつながりを意識する。
つながりが詳しく書かれてあると丁寧でわかりやすく、説得力のある文章になる。
つながりを明確化させるためのヒントの1つに「なぜなぜ分析」というものがある。
なぜ?なぜ?と繰り返して、原因・理由を探っていく方法です。
例:【マスコミには報道の自由がある。】
なぜ、報道の自由があるの?
→国家の情報を広く国民に知らせる必要があるから。
なぜ、国民に国家の情報を知らせる必要があるの?
→国民による投票の判断をしやすくするため。
なぜ、国民による投票の判断をしやすくすべきなの?
→国民の意思が反映した政治(民主主義)を実現させるため。
なぜ・・
『まとめ』:
国民の意思が反映された政治(民主主義)を実現するには、
国民が選挙で代表者を選ぶにあたって、投票の判断材料が求められる。
そのため、国家の情報をなるべく広く国民に知らしめる必要があり、
報道機関であるマスコミには報道の自由が保障されている。
荒い例だが・・「なぜ」を繰り返して背景に潜む原因を暴いていく。
「なぜ」を繰り返し過ぎると哲学の分野に踏み込んでいくので、
適当なところで見切りをつけること。
推論の過程で別の原因・理由が考えられる場合は、
どの方向に分析をもっていくかでパターンは複数ある。
原因と思われていたものが実は結果で、
結果と思われていたものが原因であったりと、
因果を逆に取り違えるミスには注意が必要!
知識量がものをいうところでもあるので、あまり詳しくないのに
適当なことを書くと「本当?」とつっこまれやすい。
小論文を書く場面に応じてどの程度まで深く掘り下げるべきかを判断する。
『論理』で気をつけてほしいのは、あくまで論理は”説得の手段”であるということ。
説得のために論理があって、論理のために説得があるわけではない。
「論理」という言葉が好き過ぎるのはよくない。
それほど論理は万能な薬ではない。
また、「論理と感情は区別しなきゃダメだ!」との意見がたまに見受けられるが、
実は論理と感情は無関係ではない。
【働けるのに働かない者は → 怠け者である】
確かに、資本主義社会では『働かない者は食うべからず』
といわれるから大部分の人は賛成かもしれないが、
もう働かなくてもよいくらい、お金にゆとりがある人はNOというかもしれない。
仕事に対する熱量が低く、なけなしの稼ぎで人生を謳歌している風来坊もNOかもしれない。
働いているが仕事を仕事と思っていない(趣味と思っている)人もNOというかもしれない。
巨視的に見ればアテネの市民は労働行為を人として卑しい行為とみなし、
奴隷に労働をさせていたという。
結局は、人の価値観(労働観)という広い意味での感情論によって、Aさんはつながりがある(論理的だ)としても、Bさんはつながりがない(論理的ではない)と考えるかもしれない。
教育観や恋愛観ならば多様ゆえ、なおさら評価は分かれる。
このように論理と感情は微妙な関係にある。感情=非論理的=バカではない。
・客観性
客観の対義語は主観ですね。 小論文で主観的な文章は×!
主観的な文章は、偏った意見で独りよがりの文章。
では、どうすれば独りよがりにならない、客観性に富んだ文章となるのか。
キーワードは反対説の提示 。
小論文の基本型
小論文には書き方、形式というのがあります。これを覚えてしまうのが手っ取り早い。
①問題の所在
②自説展開(結論・根拠)
③反対説の提示
④反対説への批判(反論)
⑤補強・再反論など (←なくてもいい)
⑥再度結論 (②③④⑤は順位変更できる)
順番に解説
①問題の所在
どこに問題点があるか、主題意図を察して重点的に論じたいテーマをしぼる。
(資料や問題文が参考資料として挙げられている場合は要約を交える)
ここを誤ると答案の方向性を見失い、大きな減点対象になってしまう。
あらかじめテーマが決まっている(問題の所在が判明している )場合は②へ。
②自説展開(結論→根拠)
結論(自分の意見)を断定口調で堂々と述べる!
先に結論をいうと文章の方向性が明らかになるので読み手は安心して読める。
前述した論理性を意識しつつ、根拠・推論を述べる。
具体例をもってきて補う。的外れな例題は説得力を失う。
ボヤボヤした例題ではなく、具体的に叙述する。
知識量と思考力を総動員。適切な接続詞・指示語を使って理路整然と展開する。
③反対説の提示
重要なポイント!
文章に【客観性】を出すために、自分の意見と対立する反対意見を紹介する。
反対説を述べることで対立する意見にも配慮しながら書いてますよ、
と試験官にアピールすることができる。異なる視点を出す=客観性である。
例:国民の休日
国民の休日をもっと増やすべきだ。
なぜなら、日本人は働きすぎてプライベートを充実する余暇が少なく、
何のために生きているのかと悩む人が少なくないからだ。
この点、国民の休日をいたずらに増やしても、
たとえば、観光業や飲食業といった人手不足の業種にしわ寄せがくるだけで、
それらに従事する労働者の負担を考えていないという指摘がある。←(反対説の提示)
しかし、・・・
もし、反対説が書かれてないと読み手からすれば、
「一方的な文章だな(´゚д゚`)・・」とみられてしまう。
必ず、自説に対して予想される反対説を想起する!独りよがりは小論の天敵。
常に<幅広い視点>を肝に銘じよ!(o゚Д゚)=◯)`3゜)∵
反対説に理解を示すと、より客観性が増す。
「確かに、○○○の理由から (反対説)を唱える者がいる。(しかし・・)」
反対説→しかし(逆接)→反対説への批判 と逆接の流れを利用し、
反対説への批判にパスする。
④反対説への批判(反論)
逆接を使って反論を述べる。
これじゃダメなんだ。私の考えじゃないとダメなんだ、と自説を際立たせる。
国語の読解問題で逆接のあとに筆者の主張がきやすいのと一緒。
注意すべき点は的を射た反論を展開すること!
例:カジノの導入
賛成派は「経済の活性化」、反対派は「治安の悪化」を主張の軸とする。
賛成派が経済の活性化を主張したとき、反対派が治安の悪化を反論にもってくるのは×!
なぜなら、主題のテーマが経済の話なのに治安という別の側面で反論しているから。
論点が異なるもので反論をくわえると水掛け論となって収集がつかない。
反対派としては、『カジノを導入しても思うほどの経済効果は期待できない』
と経済面から反論をすべき。
経済の効果に関する議論が熟したあと、反対派が「治安の悪化」を主張する。
賛成派は、「かくかくの方策をとれば治安悪化の懸念はある程度、払拭できる」
と治安面での反論を展開する。
*賛成派・反対派双方が【論点とズレない主張】に気をつけないと、実りのあるディベートが実現できない。したがって、議論に先立って互いの主張の骨子を相手に提示し、論点を整理しておくことが望ましい。裁判員裁判でも公判前整理手続であらかじめ論点を整理し、裁判の充実・迅速化を図っている。
⑤補強・再反論など
自説に対する批判が予想される場合、それを述べてから再反論をすることもできる。
例:バナナはおやつか?
バナナはおやつでないと考える。
確かに、お菓子を大量に持ってくる生徒があふれると遠足の秩序を乱すおそれがあり、これはバナナでも同じことがいえるかもしれない(反対説)
しかし、おやつを大量に持参する児童生徒が遠足の秩序が乱すおそれがある場合は、そのときに教師が注意したり、おやつを没収すれば足りる。(反論)
思うに、金額の上限設定は甘いものを食べ過ぎる児童生徒の健康を守ることが主たる目的であり、添加物の多い菓子類は過食に注意を要するが、栄養価の高いバナナはかかる目的にそれほど反しない。(自説の根拠)
それに菓子類の場合は小さなサイズも多く、教師の目を盗んで食べやすいが、体積の大きいバナナでは盗み食いがしにくく、皮も残るゆえ、大量のバナナを過食する児童生徒は少ないだろう。(補強)
別にバナナがおやつかはどうでもいいが、再反論も批判に応ずるようにする。
自説を補強をして、反論の余地をできる限り小さくする。
⑥再度結論
シメの結論を述べる。必ず設問の形に従う!
「○○することはできるか」→「○○することはできる」「○○することはできない」
「△△を求めることはできるか」→「△△を求めることはできる」「△△を求めることはできない」
出題形式によっては結論だけではなく、自分の意見(~にあたっては××という考えが重要だ)を提示して終わる手法もありうる。
これらの基本形を覚えてしまおう!
これで小論文の形式面は90%以上はクリア 。逆に知らないと0点もありうる。
注意点
・文末表現
小論文の結論部分では「~すべきと思われる」「~に反対の方がよい」「~ではないだろうか」と遠まわしにいわず、「~だ」「~である」と断定表現をしよう。主張に自信のなさがうかがわれてしまう。
結論以外は推量を用いてもよい。ただし、自説の展開は確たる主張がほしい。
あいまいな事柄は断定しない方がいい。普段の文章でも〔断定か推量か〕の選択は大切。
「と思う」「と考える」は多様し過ぎないようにすること。
多すぎると自信のない印象を受ける。
・粗悪な根拠はダメ
賛否がありそうな物事を根拠におくと、その根拠はあいまいだと突っ込まれやすい。
【ゲームをするとバカになる。ゆえに、ゲームをするサボ君はバカである。】
確かに、ゲームをするとバカになる印象もなくはないけど、
ゲームをすることで頭が良くなるとの報告もあり、
ゲームの種類によっては脳トレやパズルゲームもある。
推論が正しくても根拠が粗悪だと説得力が薄まる。
根拠として一般化をするときは、例外がどれくらいあるかを考える!
例外がそれなりにある事例を一般化して根拠におくと、決めつけとなり危険。
このような事例は客観的事実というより主観的意見に近くなる。
主観的意見を客観的事実にすりかえれば、それっぽい文章にみえなくもない…。
「ゲームをするとバカになるという意見がある。
私もそう考えるので、ゲームをするサボ君はバカだと思う。」
・根拠は少数で深く
自己の主張を正当化づけるためにたくさんの根拠を並べすぎると内容が薄っぺらくなりがち。5つの根拠を並べるより2~3個の根拠で深く考察した方が、考察力をアピールすることができる。
数より質で勝負。当たり前だけど、文章の前後で矛盾関係が生じたら本末転倒だ。
・オリジナリティ性
小論文のテーマや生徒のレベルにもよるが、解答が似たり寄ったりになるときがある。何十枚も似たような長文を採点する試験官からみれば、”飽き”がでてくる。小論文にオリジナリティ性を加えれば、試験官の記憶に残りやすい、色鮮やかな1枚となるだろう。
しかし、オリジナリティ性といっても、他の受験生が思いつきにくいものを書くのは難しい。根拠や論の流れが似ていれば、独創的な具体例を持ち出したり、より高い表現力で差別化を図る。
また、人と同じで文章もファーストインプレッションが大切。
もたつきが最初にあると読み手は印象の悪いまま読み続けるので、マイナス評価を受けてしまうおそれがある。だからこそ、最初の書き出しはテンポ良く述べる。
ちなみに、オリエンタルラジオのあっちゃんはインパクトを与えるために、「世の中には○○と××の人間がいる。」と出だしを決めていたそうな・・。
もちろん、これは必須ではなく、余裕があったらの話。
下手な演出でケガをしないことに越したことはない。
・字数制限
試験では字数制限がある。
下書きの段階で、どの段落でどの程度の分量を書くかを想定しておこう。
字数が足りなさそうであれば、問題の所在や具体例などを簡素にして自説展開を重視。
字数が余りそうであれば、自説展開をメインに反対説やその批判を増やす。
再反論や補強を付け加える。
■追記(構成のバランスについて)
サボはネットでよくコラムを読むのですが、たまに主題から外れたどうでもいい話に多くの文字量がさかれている記事があります。『中国の技術力が日本を脅かす』というテーマで、中国製のスマホの話を具体例にもってきたらスマホの話ばかりになり、中国から話がだいぶ遠ざかったあとで急に中国の話に戻るという・・。
おそらくガジェットに詳しく、自分の持っている知識をがむしゃらに詰め込みたい性格なのでしょうが、読み手からすれば何が骨子であったか迷子になりやすく、主張もブレます。
自分が最も述べたいところ(主題)に多くの文字を投入すること。
《全体の構成と展開に応じた文字量のバランスを考慮せよ》ということです。優秀なライターであれば、書き終わったあとに読み返して余分な文を消しています。自分がひねり出したアイデアをそぎ落とすのは辛いことですが、ひとつの文章としてまとまりを出すうえでは大切な作業です。どうしても書きたいのであれば、別のコラムで書くべきですね。
小論文は実践が重要なので、たくさん書いて経験を積みましょう。
文章の構成は塾の先生でも技量を要するので余裕があればZ会の通信教育がお勧めです。
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