2017年度 柏陽高校・特色検査【大問1】問題解説

〔壊血病への対策の遅れが歴史に影響を及ぼしたとするリード文〕
◆(ア)
本文中の〔 A 〕~〔 C 〕に入る語の組み合わせとして最も適するものを選びなさい。

―本文抜粋―
・壊血病に悩まされた記録は、枚〔 A 〕にいとまがない。
・有効な対策がわかっても、皆がそれを実践しなければ効果は挙がらない。〔 B 〕を担ぐ海兵たちは、いくら説明してもザワークラウトなどという慣れない食べ物には手をつけようとしなかった。
そこでクックは、強制的に食べさせようとするのではなく、わざとザワークラウトを上官専用の食品とし、
自分たちだけで独占して食べてみせた。すると1週間もしないうちに「我々にもザワークラウトを提供せよ」と、兵士の側から迫ってきたという。クックの巧みな人〔 C 〕操縦術を表すエピソードだ。

1、A:挙 B:運 C:気  2、A:揚 B:占 C:身  3、A:投 B:運 C:心
4、A:挙 B:験 C:心  5、A:揚 B:験 C:気  6、A:投 B:占 C:身

*語彙力検査。
A:枚挙に暇(いとま)がない…数え切れないほど多い。枚挙は、一枚一枚数え上げること。
B:
験(げん)を担ぐ…事態の好転を見込んで行うおまじないで使われる場合が多い。縁起を担ぐ
C:
人心操縦…人のココロを巧みに操る。

◆(イ)
下線部1『人類の文化は、各地の事物や発見を互いに持ち寄り、ぶつけ合うことで発展してきた』
の具体例として最も適するものを選びなさい。
1:インドで釈迦がはじめた仏教は、その後、東南アジアを経由して日本に伝来し、
儒教などの民間信仰と融合し独自の発展をみせた。
2:中国で発明された火薬が産業革命時代のイギリスに伝わると、
イギリスでは大量の武器が工場で生産され、アフリカ・インド・アジアなどの植民地化に利用された。
3:古代中国で生み出された製紙法は、イスラム世界、ヨーロッパに伝えられ、
ヨーロッパで発明された活版印刷術と結びつき、ルネサンス期以降の文化の伝達に影響を与えた。
4:中国で考案された太陽暦は、シルクロードを往来する商人によりルネサンス時代のヨーロッパに伝えられ、
ヨーロッパで用いられていた太陰暦と融合して現在の暦ができた。
5:オランダ人により江戸時代の日本文化がヨーロッパに伝えられると、活版印刷術を用いて、
日本語辞典や『平家物語』などの日本の書物がローマ字で印刷された。


*誤答の選択肢には嘘が含まれている。
1:日本の主な仏教である大乗仏教は、インドからシルクロードを伝って中国方面にいき、
朝鮮の百済を通じて日本に広まった。一方、上座部仏教はセイロン(スリランカ)を経由して、
東南アジア方面に伝わったとされる。
また、儒教は中国の思想家、孔子の教えによるもので、日本の民間信仰ではない。
2:火薬はルネサンスの三大発明(火薬・羅針盤・活版印刷術)に挙げられるが、もとは中国由来。
ルネサンスは14~16世紀。イギリスの産業革命期は18世紀~なので、時代が異なる。
3:中国の製紙法がヨーロッパの活版印刷術と結びつき、文化の発展に寄与した。
4:太陽暦の考案は黄河文明。
紀元前46年のローマでは、太陽暦に基づくユリウス暦に改訂されたのだと。
5:ゴッホが歌川広重の作品を真似たのは聞いたことあるが、、、

◆(ウ)
下線部2『大航海時代に入って、船の航続距離が大幅に伸びてからのことだ』について、
大航海時代の船は帆船であった。船の動きについて、前提条件及び図1、図2を踏まえて、あとの問いに答えなさい。

@前提条件@
①帆は1枚とする。
②帆に発生する力は、帆の中心にのみはたらくものとする。
③図1は帆を真上から見た様子を模式的に表しており、風により帆に発生する力の方向を示し、
その力は帆に対して垂直にはたらいているものとする。
なお、風と帆のなす角は図1に示すとおりとする。
④船は進行方向に対して垂直な方向には動かないものとする。

図2は、船が進行方向に向かって進む様子を表している。船がこの図2の状態のとき、
進行方向に最も速く進む帆の位置を示したものとして最も適するものを、
〔帆の位置〕のA~Dから選びなさい。
また、この場合の理由として最も適するものを選びなさい。

〔理由〕
1:進行方向と帆に発生する力の向きが同じで、進行方向に最も大きく力がはたらくから。
2:帆が風に接する面積が最も大きくなることで、帆に発生する力も大きくなるから。
3:帆に発生する力を分解したときに、進行方向にはたらく力が最も大きくなるから。
4:風と帆のなす角が最も大きく、進行方向に対して垂直にはたらく力が最も小さくなるから。
帆の位置―A  理由―3
*図2をみると北風に対して、船の進行方向は西北西を指している。
実はエンジンなしで船は風上側の斜め方向に航行することができるというw(゚ロ゚)w

帆に発生する力は、帆の中心●から帆に対して垂直にはたらく。
まずは、この力を各選択肢に描きしるすこと!

次のポイントは、「船は進行方向に対して垂直な方向には動かないものとする」。
進行方向に対する垂直方向は、ようするに船の真横の方向。
水に浮いているボードを真横にスライドさせるのは、水の抵抗を受けて難しいですよね。
帆に発生する力は分解されるが、その1つの成分は船の真横方向にあたる。
水による大きな抵抗力が帆に発生する力を支えることで、別の分力の方向へ船は進もうとする。

帆に発生する力を青線、その分力を赤線で書くと以下のようになる。

Aは分力が進行方向をむくので、Aが正解◎。
Bは逆をむくので、逆走する。
Cは船の真横方面に帆にかかる力が発生するので、速さは変わらない。
Dはそもそも帆に風があたっていないので帆にかかる力そのものが発生せず、速さは変わらない。
船を進行方向にむかわせたい場合は、Aのように風向きと進行方向がなす角の二等分線上に帆をもってくる


◆(エ)
下線部3『堅焼きパン』について、次の問いに答えなさい。

問1
本文中には堅焼きパンは長期保存の利くものとして示されているが、これは微生物の繁殖のための主な条件のうち、あるものが不足しているから長期保存が可能だと考えられる。本文の内容を踏まえたとき、微生物の繁殖の条件で何が不足していると考えられるか、選びなさい。
1:栄養分  2:水分  3:空気  4:温度  5:光

*本文の内容を踏まえなくても解ける。
パサパサの堅焼きパンには水分がない。水分がないと微生物は生きられない。

問2
17世紀後半、食品の腐敗をもたらす微生物が発見され、
その発生をめぐって、次の仮説が議論されていた。

仮説  空間から自然に微生物が発生する。

この仮説を否定するために次の実験を行った。

実験  フラスコに入れたスープを熱して殺菌し、すぐにフラスコの口を溶かし密封した。
結果  スープは変質しなかった。

この実験に関する問題点として、次の点が挙げられた。
(   )内にあてはまる語として最も適するものを選びなさい。

 問題点
微生物が観察できなかったのは、密封して(    )がなくなり、
微生物が生きることができなかったのにすぎず、仮説を否定することにはならない。

1:栄養分  2:水分  3:空気  4:温度  5:光

*スープを蒸発させ、フラスコを密閉して冷やすと、
フラスコ内で気化したスープが液体に戻り、空気がなくなる。
空気がなかったからこそ、微生物が発生しなかっただけであり、
空気さえあれば仮説のように空間から微生物が発生するかもしれない。
よって、この実験からは仮説を否定しきれない。

問3
その後の研究の成果により、微生物の自然発生説は否定された。
食品の保存方法として微生物は自然発生しないという事実を利用したものはどれか。
最も適するものを選びなさい。
1:甘納豆 2:煮干し 3:発酵食品 4:レトルト食品 5:梅干し

*選択肢の雰囲気から即答しやすい。
レトルト食品は、食材を加圧加熱してカラカラに殺菌したあと、
光を入れないように密閉した食品。
微生物が出る幕ではない。

◆(オ)
下線部4『1601年にイギリスを出発した東インド会社の艦隊』とあるが、
この年に最も近い時期におきたできごとを選びなさい。
1:関が原の戦いがおこる。      2:イギリスがアヘン戦争で清に勝利する。
3:フランシスコ・ザビエルが来日する。 4:ロシア使節のラクスマンが根室に来航する。
5:イギリスで名誉革命がおこる。

*天下分け目の関が原の戦いは1600年
キリの良い重要年号だから、正解率は高いはず。
アヘン戦争(1840-42)、ザビエル来日(1549以後よく広まるキリスト教)
ラクスマン来航(1792)、名誉革命(1688-89)

◆(カ)
下線部5『この考え方』とは、どのような考え方か。
本文の内容を踏まえ、35字以上40字以内(句読点を含む)1文で記述しなさい。

―本文抜粋―
壊血病の解決策を示したのは、ジェームズ・リンドという名の英国海軍医であった。1747年、リンドはどのような治療法が有効であるかを調べるため、次のような試験を行った。12人の壊血病患者を同じ場所に集め、毎日同じ食事を与えた。そして患者を2人ずつ6組に分け、それぞれリンゴ果汁、硫酸塩溶液、酢、海水、ニンニクなどから作ったペースト、オレンジ2個とレモン1個を与えたのだ。また、症状を発したものの、通常の食事を続けた者もいたので、これも並行して観察を行った。

結果は、わずか6日で出た。オレンジとレモンを与えられた兵士はほぼ完治、リンゴ果汁を飲んだ者はわずかに回復が見られたが、他の者は全く症状の改善が見られなかった。ここに、「柑橘類が壊血病の特効薬になる」という事実が、見事に証明されたのだ。

この実験は、現代の目からは当たり前にも映る。だが、他の条件をなるべく一定にそろえ、比較対象群と共に実験を行って、何が有効なのかをはっきりさせたリンドの手法は、全く画期的なものであった。現代の臨床実験は(5)この考え方を基礎としており、あらゆる医薬や医療器具などは、この試験をくぐったものだけが広く認められることになっている。
(佐藤健太郎『世界史を変えた薬』より)

他の条件をそろえ、比較対象群と共に実験し、
何が有効なのかをはっきりさせる考え方。
(40字)
*直前の内容を字数以内におさめるだけ。
今となっては当たり前だが、当時は画期的な考え方だったそうだ。コロンブスの卵ですね。


◆(キ)
下線部6『クックはこれにより、ハワイ諸島の発見、ニュージーランドの測量、ヨーロッパ人初の南極圏への突入など、輝かしい成果を挙げた』に関連して、次の文章はクックの第3回航海について述べたものとである。これを読んで、あとの問いに答えなさい。

クックの第3回の航海の目的は、太平洋と大西洋を結ぶ北極海航路の開拓であった。
この航海で彼は、ニュージーランドから北上し北極海の入口に達したが先に進めず、断念し、
その帰路でハワイに立ち寄った。

この航海におけるクックの通過点を順にA、B、C、D、Eと表したとき、
最も適するものを選びなさい。



*クックがたどった航路を地図を手がかりに描く。
斬新な形式で解法の糸口が見つかりにくいが、
実はニュージーランドに絞れば容易に攻略できてしまう。
地図からニュージーランドの位置は南緯30-45°、東経165-180°。
選択肢のなかで東経165-180°は3のCしかない。よって、3。

↑正確ではないが、クックの大雑把な航路。
途中で日付変更線をまたぐ。

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