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2017年度 横浜翠嵐高校・特色検査【課題2】問題解説

〔スキーマから培われる、人間の誤った思い込みを説くリード文〕
◆設問1
下線部1「スキーマが『思い違い』」に関して、次の問いに答えなさい。
M君がA町とB町を往復するのに、行きは平均時速60kmで、帰りは平均時速40kmで移動した。A町とB町を平均時速50kmで往復すれば、M君と同じ時間で往復できると考える人は多いだろう。しかし、この考えは誤ったスキーマ(先入観)によるものである。
では、M君がA町とB町を往復したときの平均時速は、なぜ50kmとはならないのか、
その理由を説明しなさい。ただし、正しい平均時速を答えても理由の説明にはならない。
時速40kmで移動した時間と、時速60kmで移動した時間が異なるから。
*平均の速さを求めよであれば、翠嵐志望の生徒には楽勝だが、
なぜ、単純な速さの平均が平均の速さとはならないかを日本語で答えさせるのは少々厄介。

ためしに、A-B町間を120kmとおけば、往路3時間、復路2時間の計5時間。
50×5=250kmとなり、往復の240kmと異なってしまう。

そもそも、速さとは【単位時間あたりに進む距離】
速さ=距離÷時間
距離を時間で除すること算出される。
距離と時間が同じであれば、速さ同士を平均しても問題はないが、
距離か時間が異なれば算出の基礎となる情報が違うので、
単純に速さの値を平均しても、それは平均の速さにはならない。
平均を速さをだすには、〔合計の距離〕÷〔合計の時間〕でなければならない。

そして、片道距離が等しければ、速さと時間は反比例するので、
時速40km:時速60kmの時間の比は3:2で異なるから、
40と60の平均である時速50kmにはならない。

◆設問2
下線部2「密度」に関して、次の問いに答えなさい。
問1
図1は水の水温と密度との関係を、図2はある湖の中央部における7月の平均水温と深さとの関係を示したものである。
これらのグラフをもとに、この湖の1月の平均水温と深さとの関係を表すグラフをして最も適当なものを1つ選びなさい。
ただし、1月におけるこの湖の表面水温は2℃である。


*4℃の水の密度に関する知識があるとだいぶ楽。
密度が大きい→沈む  密度が小さい→浮く
図1をみると、約4℃のときに水の密度が最も大きくなる。
だから、4℃の水が湖の底にたまる。
この時点で、4℃の水より密度が小さい0℃の水が深いところにある②と③は消滅。

また、図2のみると水深が深くなるほど水温は下がっていくのが普通だが、
湖の表面水温は2℃なので、これは4℃よりも密度が小さい。
0℃の水は2℃の水より密度が小さいから、④のように2℃の水の下にくることはない
深くなるほど密度は大きくなければならないので、水温は次第に4℃に近づいていく。

問2
図3は氷の温度と密度の関係を示したものである。
湖の表面が凍る寒い冬でも、湖の中の魚は凍ることはなく生きている。
その理由を、問1の図1と図3をもとに書きなさい。
ただし、解答には、「水の密度」「氷の密度」を含み、末尾の「・・ので、寒い冬でも湖の中の魚は凍ることなく生きている」に続くように解答すること。

水の密度は氷の密度より大きいから、
たとえ水面が氷点下で凍っても湖中の水までは凍らない
(ので、寒い冬でも湖の中の魚は凍ることなく生きている。)

*前問がわかれば、本問もだいたい同じ。
上は解答例なので、趣旨があたっていれば正解◎
釣り河北より。
ワカサギ釣りのように、湖面が凍っていて釣り人が立つことができても、
氷の下にいるワカサギたちは水中のなかで生きている。
なぜ、水面だけが凍って下は凍らないのか。
図3をみると、水が凝固したあとは0.917g/cm3から出発して密度が徐々に大きくなる。
この値を図1の左側につなげてみると、ガクンと下にさがる。

  ScienceWindowより。
北極の氷やジュースの氷がプカプカ浮いているのも納得。


◆設問3
下線部3「30%の人は不正解のBを選んだ。」とあるが、課題文に述べられた内容をふまえて、
次の文中の〔 ア 〕、〔 イ 〕に適する文を記述しなさい。
ただし、文〔 イ 〕には、「水平」、「垂直」という語句を含んで解答すること。

―本文(一部抜粋)―
下の図で、地上を動いていた物体が崖から落ちたときの軌跡として正しいのはどれか?

正解はAである。しかし、Bと思った人もいるのではないだろうか?
この実験はアメリカの有名大学で1980年代に行われた。
正解率は70%程度で、30%の人は不正解のBを選んだ
ニュートンの第一法則(慣性の法則)は
「力が働いていなければ静止している物体は静止をつづける。運動をしている場合には、
その運動を維持し、同じ方向に直線的な運動をしつづける」というものである。
静止している物体が勝手に動き出さないことは日常的に経験でき、直感に合うことだ。
しかし、「運動している物体は同じ速さで、同じ方向に運動をつづける」という部分は、
地球上の日常の環境で観察されることはほぼありえない。
地表に向かって重力が働くほか、風の影響や空気の摩擦などがあるからである。
運動中の物体が、「力」の存在なしに慣性で働きつづけることは、
子どもだけでなく大人にとっても直感に反することなのだ。

筆者は、Bを選んだ人の多くが、〔 ア 〕という誤ったスキーマを持っていたため、
 〔 イ 〕と考えてBを選んだ、と分析している。

*スキーマ・・心理学用語。本文から意味をつかまなかければならない。
本文の転載はできないので、ここでは【先入観】と考えてください。

ア:運動していている物体はいずれ静止する
イ:水平方向への力が消滅することで、重力による自由落下で物体が垂直に落下した

*誤った推論の原因を問う設問。
正しい自然現象はAだが、Bを選んだ人が一定数いた。
本文では、『静止している物体が静止をつづける』ことは直感に合うので皆も理解しやすいが、『運動している物体は同じ速さで、同じ方向に運動をつづける』という部分については理解がしにくい。
それは、宇宙空間ならまだしも、我々のいる地球では重力や摩擦、空気抵抗などの影響で、
身の回りの出来事として観察ができず、実感がわきにくいから。
平らな地面をころがるボールがいずれ止まるように、地球上で等速直線運動は認識しずらい。

〔 ア 〕は、慣性の法則で”運動した物体に関する部分”での誤解を述べる。
〔 イ 〕は、〔 ア 〕の誤解に基づいた間違った推論を物理学っぽく書く。
水平方向の力が次第になくなり、物体には重力だけがかかり、
自由落下で垂直に落ちると考えれば、Bの軌跡になりうる。 

◆設問4
本文の内容正誤。6択のなかから誤った2つ選ぶ。
選択肢がすべて英文。~省略~

◆設問5
課題文には、『学びとは何か―<探求人>になるために』によるものである。
あなたのこれまでの「学び」を活かして次の問いに答えなさい。


1辺の長さが1の正方形が9個、下図のようにあるとき、2通りの方法でa+bの角度を求めなさい。ただし、解答欄の図を利用し、求める過程がわかるように簡単に記述すること。

中学受験で見かける構図。
和を求めよということは、各々の角度がわからなくても和だけはわかるということ。
数字がどこにもないので、角度の和はキリの良い角度である可能性が高いということ。
@解答1@

*青いラインの補助線に注目!
90°―45°―45°の直角二等辺三角形が出現する。
一方で、bは1マス×3マスの直角三角形の1つの角。これを移動する。
a+b=90-45=45°
@解答2@

青の補助線で直角二等辺三角形⇒右下にaとbを集める。
先ほどと同じ手法だが、やりやすいのはこの2通りじゃないかな?
@解答3@

こちらは円周角定理を用いた手法。
大きい正方形の各辺にある中2点、計8つの点が円周にくるように円を描く。
∠bを円周角の定理で移動すると、a+bが直角二等辺三角形の底角となる。

円の配置が難解なので、わからなかったら前2つで決めてしまった方がいい。
本問は2通りの方法を各々3段階で評価する採点方式なので、
満点がとれるかはわからないが、空欄よりかはマシ。
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