2019年度 海城中学入試問題【理科】大問2解説

 昨年(2018年)の5月、エリシス社がこれまでにはないまったく新しいアルミニウムの精錬方法の商業化を目指すことを発表しました。精錬とは、原料となる鉱石から金属をつくる方法です。自然界に存在する多くの金属は、酸素と結びついた状態、つまり酸化物として存在しています。この酸化物から酸素を取り除くと、金属が得られます。例えば、酸化銅に炭素の粉末を混同して加熱をすると、二酸化炭素を発生しながら銅を得ることができます

(1)
下線部①について、アルミニウムに関する次の記述①~④のうち、
正しい記述には〇、誤りを含む記述には×を答えなさい。
①塩酸に溶けて水素を発生する。
②水酸化ナトリウム水溶液と反応する。
③磁石を近づけると、くっつく。
④銅よりも熱をよく伝える。

(2)
下線部②について、酸化銅の粉末と混同して試験管Xに入れ、
下図のように加熱する実験を行いました。


試験管Yには発生した気体が二酸化炭素であることを確かめるための溶液が入っています。
この溶液の名称を答えなさい。


①の溶液は、二酸化炭素と反応してどのように変化するか答えなさい。


過熱をしていると、試験管Xの口のところには少量の水がたまっていました。この水は、炭素の粉末から出たものです。酸化銅ではなく炭素の粉末から水がでてきたことを確かめるためには、どのような実験を行えばよいでしょうか。簡潔に答えなさい。


 飛行機や車のボディ、アルミ缶、窓枠、スマートフォンなど私たちの身のまわりにはアルミニウムの製品が多く使われています。2016年には、世界で約5800万トンのアルミニウムが精錬によってつくられています。これまでのアルミニウムの精錬方法は、130年以上前に確立されたホール・エルー法という方法で、アルミニウムの原料鉱石から精製した酸化アルミニウムを氷晶石とともに電気炉でとかし、それを炭素電極で電気分解をする方法です。この電気分解の過程では、酸化アルミニウムから生じた酸素が電極の炭素と結びつくことで、大量の二酸化炭素を排出します。2012年の調査によると、アルミニウムを1トンつくるために排出される二酸化炭素は12.7トンだと見積もられています。さらに、アルミニウムの精製には多くの電気が必要なので、発電方法にもよりますが、その電気を発電する過程においても多くの二酸化炭素を排出しています。2015年の報告によると、アルミニウムを1トンつくるためには、一般家庭3世帯の年間消費電気量に相当する電気にが必要になります

(3)
下線部③について答えなさい。
 「溶ける」と「融ける」は、どちらも「とける」と読みますが、意味が異なります。「溶ける」は「水に塩化ナトリウムが溶ける」というように、溶解することを表す言葉です。一方、「融ける」は「氷を加熱すると融けて水になる」というように、融解つまり固体から液体へ変化することを表す言葉です。
 ここで、氷も塩化ナトリウムをよく混ぜたものを考えます。-10℃付近では氷も塩化ナトリウムも固体ですが、これを少しづずつ加熱していくと、氷がとけて水になります。塩化ナトリウムは、水にとけて塩化ナトリウム水溶液となります。
 ホール・エルー法では、固体の酸化アルミニウムと固体の氷晶石をよく混ぜたものを約1000℃に加熱した溶液に対して電気分解を行います。酸化アルミニウムの融点は約2000℃、氷晶石の融点は約1000℃なので、1000℃付近まで加熱すると( A )がとけ
。ここに( B )をとかして、電気分解する溶液をつくります。

文章中の下線部a、bの意味として適するものとして正しい組み合わせを選びなさい。


文章中の( A )( B )に適する物質およぶ下線部c、dの意味として適するものとして正しい組み合わせを選びなさい。

(4)
下線部④について、次の水溶液①、②で電気分解したときに、
電極装置のプラス極につないだ方の電極から発生する気体は何ですか。
①塩酸  ②水酸化ナトリウム水溶液

(5)
下線部⑤、⑥について、日本国内においてホール・エルー法によるアルミニウムの精錬は行われていませんが、もしこの方法でアルミニウムを1トンつくる場合、ホール・エルー法の電気分解によって排出される二酸化炭素と、電気分解に必要な消費電気量を発電するときに排出される二酸化炭素と、電気分解に必要な消費電気量を発電するときに排出される二酸化炭素の合計は何トンになりますか。必要であれば、四捨五入して小数第一位まで答えなさい。ただし、この発電にもちいたエネルギー別の構成比は、天然ガス50%、石炭30%、石油10%、その他二酸化炭素を排出しないエネルギー10%とします。また、一般家庭1世帯の年間消費電気量を発電するときには、天然ガスのみで火力発電した場合には二酸化炭素が2.2トン、石炭のみで火力発電した場合には二酸化炭素が4トン、石油のみで火力発電した場合には二酸化炭素が3トンそれぞれ排出されることとします。


 今回発表されたアルミニウムの新しい精錬方法では、炭素を使わない新しい素材の電極を用いることで、精錬するときに二酸化炭素を排出しないだけではなく、酸素を排出することが可能になるといわれています。この新しい精錬方法が商業化されるのは2024年頃ということですが、将来的には精錬の過程と発電の過程で二酸化炭素をまったく排出しないでアルミニウムをつくることができると期待されています。

(6)
下線部⑦について、発電の過程で二酸化炭素をまったく排出しない発電方法を1つ答えなさい。


@解説@
(1)①〇 ②〇 ③× ④×
アルミニウムの性質。
塩酸に溶けて水素を発生する。水酸化ナト水溶液と反応する。
磁性がないのでスチール缶と違い、磁石にくっつかない。
銅は熱と電気をよく通すと覚えておこう。

(2)①石灰水 ②白く濁る。
二酸化炭素の検知。基礎です。

③酸化銅を熱して、水が出てこないことを確認する。
けっこう難しい:;(∩´_`∩);:
『酸化銅ではなく炭素の粉末から水が出てきたことを確かめるため』には、
どのような実験を行えばよいか。

酸化銅と炭素の混合物の燃焼で水が生じた。
ということは、酸化銅か炭素のどちらかの燃焼で水が生ずる。
もし、【炭素の粉末を燃焼させて水が出てくる】ことを確認した場合、
炭素から水が出てくることはわかるが、酸化銅から水が出てくる可能性が否定できない
問題文では『酸化銅ではなく』の部分があるので、この事実を確定するには、
【酸化銅を燃焼させて水が出てこない】ことを確認すればいい。
酸化銅で水が出てこなければ、必然的に残りの炭素から水がでてきたことがわかる。
1回の試行実験で2つの事実が判明するこちらが正答になる。

@水はどこから…@
題の実験は、酸化と還元を同時に行う酸化還元反応
酸化銅の酸素を炭素が奪い(酸化)、酸化銅から酸素がなくなる(還元)。
2CuO+C→2Cu+CO2
酸化銅+炭素→銅+二酸化炭素
水がない…(;`ω´)

水の化学式はH2O。
酸素原子Oは大気中にある。
問題文では『炭素の粉末から水がでてきた』とあるので、
炭素の粉末(カーボンブラック)に水素原子Hが含まれていたと思われる。

(3)①ウ
「溶ける」と「融ける」の違い。
「溶ける」は溶解。液体と一体になって均一になる。
「融ける」は融解。固体が液体に状態変化する。
a…氷が融けて水になる。
b…塩化ナトリウムは、水に溶けて塩化ナトリウム水溶液になる。
『氷が溶ける』という表現を随所で見たことあるが・・(;^ω^)

②キ
8択もあるので正確な理解が求められる。
1000℃に達すると、融点に到達した氷晶石が液体へ融解する。
液体となった氷晶石に固体の酸化アルミニウム溶解して、電気分解する溶液をつくる。

(4)①塩素 ②酸素
電気分解は中学の範囲だと思っていたのだが…また勝手に範囲が広がったのか?((( ;゚д゚))
理解するにはイオンの知識がいります。
①塩酸は塩化水素(HCl)とよばれる気体が溶けた水溶液。
HCl(塩化水素)→H+(水素イオン)+Cl(塩化物イオン)
陽極には-イオンである塩化物イオンが集まり、Cl2(塩素)が発生する。
ちなみに、陰極では+イオンである水素イオンが集まり、H2(水素)が発生。

②NaOH(水酸化ナト)→Na+(ナトリウムイオン)+OH(水酸化物イオン)
2O(水)→H+(水素)+OH(水酸化物イオン)
陽極では、水酸化物イオンが集まり、O2(酸素)とH2O(水)ができる。
一方、陰極では水素イオンが集まり、水素が発生。
ナトリウムはイオン化傾向(イオンになりやすい度合い)が大きいのでイオンのまま。

(5)20.5トン
計算式は複雑ではないが、読解と情報整理に苦心する。
求める値
は、アルミニウム1トンをつくる場合の【ホール・エルー法の電気分解によって排出される二酸化炭素】①+【電気分解に必要な消費電気量を発電するときに排出される二酸化炭素】②。
このうち、①については12.7トンと問題文に答えがでている。
②は問題文に提示された電力構成の割合から算出する。
■電力構成の割合■
天然ガス…50% 石炭…30% 石油…10% CO2を排出しない発電…10%
■1世帯年間消費電気量を発電したときのCO2排出量■
天然ガスのみ…2.2トン
石炭のみ…4トン
石油のみ…3トン
CO2を排出しない発電…0トン

下線部⑥で、アルミ1トンつくるのに3世帯の年間消費電気量に相当するから、
(2.2×50%+4×30%+3×10%)×3=7.8トン
したがって、12.7+7.8=20.5トン

(6)原子力・太陽光・水力・風力・地熱・波力…など。
CO2は化石燃料を燃焼すると発生する。
化石燃料を燃焼させない発電方法であれば○。

新エネルギーの一種であるバイオマス発電は×。
木材や生ごみなど生物由来の資源を利用したバイオマス発電は、
加熱によって温室効果ガスを排出する。
バイオマスが比較的クリーンといわれる所以は、カーボンニュートラルという考えにある。
発電時に温室効果ガスを出しても、現役時(生物であったとき)に光合成で二酸化炭素を減らしているから、トータルで考えるとプラマイゼロになるとみなしている。

@ジャイロ発電@
発電機といえばハンドル付きで手回しをするイメージがあるが、
最先端の発電機はハンドルがないという。。
どうやらジャイロ効果というものを使って発電しているらしい。
コマを高速で回すと、軸が少し傾いていもまた直立しようとする。
この元にもどる力がジャイロの源だそう。

すごい(*’ω’*)w
まだやるか!ていうくらい粘ってますね。
ジャイロの発電はハンドルを回さず、装置全体をシェイクするだけで多量の電気が生まれ、
波力発電の分野では実証実験が行われているようです。
以前、サイエンステレビにでていた東大の研究室に務める若手の女性研究家は、
発電効率を維持したまま、装置の小型軽量化に尽くしたいと仰っていました。
なんとジャイロ発電機を衣服に取り付けて、歩行の運動で電気を生み出したいんだとw(゚Д゚)w
科学者の発想は違いますね。
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