2019年度 渋谷教育学園渋谷中入試問題【理科】大問1解説

 一昨年の6月、人間によって危険な動物である南米原産の「ヒアリ」が兵庫県で見つかりました。その後も、度々、ヒアリが発見されたというニュースが聞こえてきます。
 我々人間は、害虫を駆除するために様々な方法を用いてきました。例えば、強い殺虫性があるDDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン
)という物質は、シラミやマラリアという病気を引き起こす蚊の駆除を目的として、日本全国でまかれたことがあります。そして、今でも農薬としてDDTを散布している国もあります。以前、アメリカでは森林保護を目的に、葉を食い荒らすガや家屋への侵入が問題になっていたアリを撲滅するために、DDTを大量に散布しましたが、完全に駆除することはできなかったそうです。また、それだけではなく蚊が発生したというクレームにも、役所は蚊の発生源となる湖にDDTを流し込んで対応していましたが、一部の魚や鳥の体の中にDDTが蓄積されていることが発見されました。そのことはすぐに日本でも話題になり、30年以上前に販売されなくなりました。
 近年、農薬が効きにくい害虫が増えており、日本の農業においては新たな取り組みがなされるようになりました。それは、害虫の「天敵」を利用したものです。以下は「バンカー法」という害虫駆除の方法について書かれた新聞記事です。
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トマトを育てる温室に、なぜか紫色の花が咲いた花だんがあります。
昆虫を研究している日本典秀(ひのもとのりひで)さんがちょんちょん花をたたくと・・。
出てきたのは2ミリぐらいの小さな虫。くさい臭いを出すカメムシの仲間。タバコカスミカメです。
「この虫がトマトにつく害虫を食べてくれるんだよ」と説明すると、
子どもたちは「こんなに小さいのにすごい!」と目を輝かせました。
ある生き物にとって、おそろしい敵となる生物を「天敵」とよびます。
害虫にとって、タバコカスミカメは天敵です。
でも、ただ温室の中に放すだけではダメ。この花だんは、天敵を元気に働かせる工夫なのです。
(読売KoDoMo新聞 2017年7月27日)
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 上の記事にある温室の中の花だんには、バーベナという植物が植えられています。また、タバコカスミカメは雑食性でトマトの害虫であるコナジラミだけでなく、バーベナも食べます。この習性を利用した方法は、ナスの温室でも活用され、ナスの生産量が日本一の高知県では、ナスを育てている温室の97%で、タバコカスミカメが活用されているそうです。
 このように、天敵による害虫駆除を行うことで、農業にたずさわる人の、害虫を防ぐために作業をする時間が大幅に削減され、使用する殺虫剤の量も減らすことが可能になりました。

(1)
下線部①について、ヒアリを発見したときに大きく生態系に影響を与えない形で駆除する方法として、最も適切であるものを選びなさい。
ア:ヒアリが発見された場所にベイト剤(毒餌)を置く。
イ:ヒアリに直接熱湯をかける。
ウ:ヒアリが発見された場所近辺に、アリ用の殺虫剤をまく。
エ:ヒアリが発見された場所に天敵であるノミバエを放す。

(2)
下線部②について、DDTが魚や鳥の体内に蓄積したのは、湖にいるプランクトンがDDTを取り込み、それを魚が食べ、さらに鳥がが魚を食べたからだと考えられます。いま、10gのDDTが10.000.000個体のプランクトンの中に取り込まれ、それらのプランクトンすべてを10匹の魚が食べ、それら10匹の魚すべてを1羽の鳥が食べたとします。プランクトンの体内に含まれるDDTの濃度(体重1g当たりに含まれるDDTの量)と比較して、魚と鳥の体内に含まれるDDTの濃度はそれぞれ何倍になりますか。ただし、DDTは生物の体内では分解されず、体外に排出されない物質です。また、プランクトン1個体の重さを0.01g、魚1匹の重さを500g、鳥1羽の重さを1kgとします。

(3)
下線部③について、農薬が効きにくい害虫が増えているにもかかわらず、もっと強力な農薬の開発を行いませんでした。その理由を本文の内容にそって考え、説明しなさい。

(4)
下線部④について、バンカーとはbank(バンク)という英単語に由来しており、bankは日本語で「銀行」という意味です。この方法がなぜ「銀行」に例えることができるのか、本文と新聞記事を参考にして、説明しなさい。

(5)
下線部⑤について、飛べないテントウムシが開発され、温室の中で活躍しているようです。
テントウムシを入れることによって駆除される害虫は何か、カタカナで答えなさい。


@解説@
バンカーの由来とか何なのよ?((( ;゚д゚))
(1) イ
毒餌や殺虫剤などの化学物質は生態系への影響が懸念されるので×。
天敵の放出は一見すると、自然のシステムに委ねる形のように思えるが、
動物の場所を移動させている点に人為的な介入をしており、
外来生物が移動先の生態系を荒らすことはある。
(*ハブ退治にハブの天敵とされたマングースを持ってきたところ、
ハブが減らず、かえって希少種のアマミノクロウサギが減ってしまったという…。
そもそもハブは夜行性でマングースは昼行性。
両者が出会うことはめったになく、またマングースは雑食でハブ専門ではないから、
他の動物を食べて腹を満たしてしまえばハブに手をつけなかったそうだ。(゚Д゚)バカカ
よって、熱湯をかけるが正解。
かけた場所にいた小さな虫や細菌は死ぬかもしれないが、許容範囲でしょう。

(2)魚…20倍、鳥…100倍
(´・д・`)。。 
プランクトンが1000万います。
10gのDDTなので、プラ1匹あたりのDDT量は、10g÷1千万匹=100万分の1g
DDT濃度は体重1gあたりのDDT量で、プラ1匹の体重は0.01gですから、
プラ1匹のDDT濃度は、100万分の1÷0.01=1万分の1

1匹の魚は100万のプラを食べ、プラ1匹のDDT量は100万分の1gですから、
魚1匹のDDT量は、100万分の1g×100万匹=1g
魚は500gなのでDDT濃度は、1÷500=500分の1
よって、魚のDDT濃度はプラと比べ、1万分の1÷500分の1=20倍

1匹の鳥は10匹の魚を食べるのでDDTの量は、
1g×10匹=10g
鳥は1000gだからDDT濃度は、10÷1000=100分の1
鳥のDDT濃度は魚と比べ、1万分の1÷100分の1=100倍

プランクトンのDDT濃度を1とおくと、魚は20、鳥は100。
人間がもし5羽分の鳥を食べたら500倍になる。
DDTのように生物の体内で分解されず、かつ排出されないと、
食物連鎖の過程で濃度がどんどん高くなっていく。
これを生物濃縮といいます。

(3)
DDTのように生物の体内で貯蓄される化学物質が、
健康被害や生態系への悪影響を引き起こすおそれがあるから。
*本文から使えそうなところを抜き出す。
『一部の魚や鳥の体の中にDDTが蓄積されていることが発見された』
これをきっかけにDDTの販売が禁じられたので、
前問のような生態系への悪影響、もしくは健康被害が問題点として挙げられる。

(4)
栽培目的の作物とは別の植物を植えて害虫の天敵を蓄え、
害虫がやってたときにそれを供給する様が、
必要なときにお金を出せる銀行と似ているから。
*難しい:;(∩´_`∩);:
というか解答欄の長さが足りないような・・。
まずはバンカーが何で、どういうことを指しているかを考える。

bank=銀行
語尾にerをつけると「~する人・もの」となり、bankerは銀行業。
銀行はお金を預かり、別の人にお金を貸し出す金融機関。

本文ではトマト栽培にバーベナという植物を植えている。

園芸植物365花撰より、バーベナ。
バーベナを植えるのは、トマトを食い尽くす害虫の天敵である
タバコカスミカメを『元気に働かせる工夫』だから。
バーベナがバンカーとして害虫の天敵を増やして蓄え、
害虫がトマト畑にやってきたときに天敵を放つ。
これが必要な時にお金を引き出せる銀行の要求払預金と似ている。
解答では、バンカーが何で何を溜めているか。
それが銀行の何に例えているを示せば良いが、2行の解答用紙では厳しいと思う。。

(5)アブラムシ
アブラムシにとってテントウムシは天敵。
アブラムシは甘い汁をアリに与える見返りに、
アリにテントウムシを撃退してもらう。
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