2022年度 麻布中学過去問【理科】大問2解説

 「和食」が日本の伝統的な食文化として保護、継承されるべきものであるとユネスコ(国際連合教育科学文化機関)が認められ、2013年に無形文化遺産に登録されました。この理由の1つに発酵食品や発酵調味料の豊富さがあるといえます。みなさんは発酵という言葉になんとなく体に良いという印象を持っているでしょう。ここで発酵について考えてみましょう。
 私たちにとって特に大切な栄養素である炭水化物(でんぷんや砂糖の仲間)、たんぱく質、脂質、無機質(ミネラル)、(A)を五大栄養素といいます。でんぷんはブドウ糖という砂糖の仲間が、たんぱく質はいろいろなアミノ酸が、それぞれたくさん結びついた大きな物質です。
 微生物が酵素という物質をつくって炭水化物やたんぱく質を分解することで、私たちにとって役に立つものができることを発酵といいます。その一方で、役に立たないものができることを腐敗といいます。つまり発酵も腐敗も、微生物が生きるために行っている、大きな物質を小さな物質にする活動で、私たち人間が呼び分けているに過ぎないのです。
 私たちは物を食べるときに味を感じます。この味は長い間、甘味、塩味、酸味、苦味の4つの基本要素であるとされてきました。しかし、アミノ酸の一種であるグルタミン酸の仲間を食べたときに感じる味が、この4つでは説明できないことに池田菊苗(きくなえ)博士が気づきました。そして5つ目の基本要素として旨味の存在を1908年に主張し、2002年についに認められました。

問1
空欄(A)に入る栄養素の名前をカタカナで答えなさい。

問2
私たちは、腐敗物を酸味、毒物を苦味として感知しているといえます。一方、体に必要なものを甘味や旨味として感知しているといえます。甘味と旨味は五大栄養素のうち何を感知しているといえますか。それぞれ答えなさい。

 和食の中心にあるのは、発酵調味料の味噌と醤油だといえるでしょう。特に味噌は、かつては多くの家庭でつくられており、その出来をおたがいに自慢しあっていたようです。自慢することを手前味噌というのはその名残であると考えられます。ここで、味噌づくりで利用している酵母菌と麹(こうじ)菌という微生物に着目してみます。
 酵母菌はブドウ糖を分解し、エタノールというアルコールと、気体の( B )ができる発酵を行う微生物で、お酒やパンをつくるときにも使われます。パンをつくるときに使う酵母菌は一般的にはイースト菌とも呼ばれ、パンに独特の香りがあるのはエタノール、パンがふくらむのは(B)ができるためです。
 麹菌はカビの仲間ですが、日本で伝統的に使われている麹菌は世界的にも珍しい、毒をつくらないカビです。そして、でんぷんを分解してブドウ糖にする酵素や、たんぱく質を分解してアミノ酸にする酵素をつくって発酵を行い、お酒をつくるときにも使われます。
 味噌の中でも最も多くつくられている米味噌のつくり方を紹介します。
(1)白米を炊いて柔らかくする。
(2)(1)の米に麹菌を加えて発酵させる。これを麹という。
(3)大豆を炊いて柔らかくし、十分に冷えてからつぶす。
(4)(3)の大豆に塩を加え、麹菌を含む多くの微生物が死滅する濃度にし、
 (2)の麹を加える。
(5)麹菌がつくった、たんぱく質を分解する酵素が大豆のたんぱく質を分解し、アミノ酸にしていく。また、塩に強い酵母菌や乳酸菌が一部生き残っていて、これらも発酵を行い、さらに複雑な味にしていく。

問3
味噌などの発酵食品が消化や吸収されやすいといわれる理由を答えなさい。

問4
味噌が腐敗しにくく、長く保存できる理由を答えなさい。

 私たちの身の回りにある物質の多くは、原子というとても小さな粒からできています。原子には炭素原子、水素原子、酸素原子などの種類があり、炭素原子と水素原子と酸素原子の1個あたりの重さの比は、12:1:16です。それらの原子がつながって分子となり、その分子が非常に多く集まって目に見える大きさの結晶になっています。
 例えば、ブドウ糖の結晶を細かく分けていくと、ブドウ糖の分子になります。この分子は炭素原子6個と水素原子12個と酸素原子6個からできています。また、エタノールの分子は炭素原子2個と水素原子6個と酸素原子1個からできています。

問5
前段落の下線部について、炭素原子を〔炭〕、水素原子を〔水〕、酸素原子を〔酸〕として、
この変化を図で表すと、下のように、ぶどう糖の分子1つから、エタノールの分子2つと
(B)の分子2つができます。X、Y、Zに入る数字を答えなさい。
ただし、原子は増えたり減ったりしません。また、空欄(B)に入る物質の名前を答えなさい。

問6
ブドウ糖1分子とエタノール1分子と(B)1分子の重さの比を、
最も簡単な整数比で答えなさい。

問7
ブドウ糖の水溶液に少量の酵母菌を加えてよく混ぜ、全体の重さが1kg、ブドウ糖の濃度が20%の水溶液をつくりました。これを発酵させると、発生した(B)がすべて空気中に出ていき、44g軽くなりました。
 まだ残っているブドウ糖の重さと、エタノールの濃度をそれぞれ答えなさい。ただし、この間に水やエタノールの蒸発はなかったものとします。また、答えが割り切れない場合は、小数第二位を四捨五入して小数第一位まで答えなさい。


@解説@
問1:ビタミン
家庭科の教科書もちゃんと読んでおきましょう(;’∀’)
五大栄養素→炭水化物、タンパク質、脂質、無機質(ミネラル)、ビタミン
三大栄養素は前半の3つ。
>>ハウス食品(山本研究員)より
『ミネラルと並んで、微量でもその役割はとても重要で、ヒトの体内で三大栄養素の代謝を助ける、いわば“潤滑油”のような働きをしています。そんなビタミンが不足すると、病気になったり、成長に障害が出たりします。ほとんどのビタミンは体内で作りだすことができません』
現在は13種類のビタミンが認められているようです。

問2:甘味—炭水化物、旨味—たんぱく質
読解問題です。
炭水化物(でんぷんや砂糖の仲間)』『でんぷんはブドウ糖という砂糖の仲間
甘味→甘い→砂糖の仲間→炭水化物
『たんぱく質はいろいろなアミノ酸が結びついた物質』
アミノ酸の一種であるグルタミン酸の仲間を食べたときに感じる味が旨味
旨味→グルタミン酸→アミノ酸の一種→たんぱく質

問3:微生物がつくった酵素が炭水化物やたんぱく質を分解するから。
これも読解問題。どうすれば食べ物は消化・吸収されやすくなるか。
前段落より『でんぷんはブドウ糖が、たんぱく質はアミノ酸がたくさん結びついた大きな物質』
『微生物が酵素という物質をつくって炭水化物やたんぱく質を分解する』
大きなカタマリである炭水化物やたんぱく質を細かくすれば、消化されやすくなる。

問4:高い塩分濃度により微生物が死滅するため。
リード文より、微生物が分解することで人間に有益なものができる⇒発酵
無益なものができる⇒腐敗と人間の都合で呼び分けている。
腐敗がしにくいのは無益なものをつくる微生物が死んだから。
大豆に塩を加えて微生物を死滅させた点とつなげて記述する。

@浸透圧@
去年の麻布中でも出題されている。


大問3より。野菜の表面にある『特別な膜』とは半透膜のこと。

塩事業センターより。
セロハンのように、水は通すが食塩のような大きい粒は通さない膜を半透膜という。
半透膜を境に左右で濃度差があると、
濃度を一定にするために
水が半透膜を超えて濃度の高い塩水側へ移動する

この移動を押し返してストップさせるために必要な圧力を浸透圧という。

生物の細胞をおおう細胞膜は半透膜の性質を持っている
周囲の塩分濃度が高くなると、水は体の外へ移動して脱水状態になる。
生物が生きていくには液体の水が不可欠なので(物質の運搬や体内環境の調整など)、

塩で水を抜くと微生物は死に絶える。

@微生物はどこから来るのか@
どんなに衛生環境を良くしようとしてもスープは腐っていく
腐敗が起こるということは、微生物がいつのまにかスープに混入しているということ。どんなに手を尽くしても腐るのは、微生物は何も無いところから湧き出てくるのではないか?古代ギリシア時代の哲学者アリストテレスが提唱した、生物は親なしで生まれることがあるという考え(自然発生説)は科学の世界でも長らく信じられていたらしい…。密閉容器では腐敗しないとわかっていたが、これは空気の入れ替えがないために微生物が増殖できなかったためだと説明された。のちに自然発生説は科学的ではないと疑問視する者が現れる。

19世紀に登場するフランスの細菌学者パスツールは次のような実験をおこなった。まず、フラスコ内に微生物の栄養となる培養液を入れる。次に、フラスコの首を熱で伸ばし、うえのように2回折れ曲がった奇妙な形状にする(白鳥の首フラスコという)。最後に培養液を煮沸して微生物を殺菌。この状態で数ヶ月間放置しても腐敗は起こらなかった。培養液と外の空気はつながっているが、微生物が管内の坂を登ることができず、フラスコの奥へ侵入できなかったためである。フラスコの首を切ったり、フラスコを傾けて培養液を首に流すと微生物は繁殖した。こうして、微生物は内部で自然発生せず、外からやってくることを実証した。
パスツールは様々な細菌研究に着手しており、狂犬病のワクチン開発にも成功している。

問5:X—1、Y—0、Z—2、B—二酸化炭素
化学反応式。

ブドウ糖の炭素は6個。
エタノールで4個使われたから、B1つあたりの炭素は、(6-4)÷2=1個。
水素12個はすべてエタノールに使われた。
水素は、(6-2)÷2=2個
気体Bは炭素原子1つ、酸素原子2つ⇒二酸化炭素(CO2)。

問6:ブドウ糖…90、エタノール…23、(B)22
原子1つあたりの重さの比は炭素:水素:酸素=12:1:16
これに原子の数をかけて足せばいい。

ブドウ糖…12×6+1×12+6×16=180
エタノール…12×2+1×6+16×1=46
気体B(CO)…12×1+16×2=44
ブドウ糖:エタノール:CO2=180:46:44=90:23:22

問7:ブドウ糖の重さ…110g、エタノールの濃度…4.8%
前問の解答を用いる。
注意点は、1分子あたりの重さであること!
反応式では1個のブドウ糖から2個のエタノールとCO2に分解される。

問5の問題文の通り、『原子は増えたり減ったりしない』。
反応前と反応後の原子の合計数は【90】で等しい。

本問ではCO2が44g発生したから、反応したブドウ糖は90g、発生したエタノールは46g。
反応前のブドウ糖は、1000g×20%=200gだから、
残っているブドウ糖の重さは200-90=110g

反応後の全体の重さは、1000-44=956g
エタノールの濃度は、46÷956×100=4.81…≒4.8%

@質量保存の法則@
化学変化の前後で物質全体の質量は変わらないことを質量保存の法則という。
発見者はフランスの化学者ラボアジェ。
ブドウ糖の発酵を化学反応式で表すと、以下のようになる。
6126(ブドウ糖)→2C25OH(エタノール)+2CO2(二酸化炭素)
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