2020年度 麻布中学過去問【社会】解説

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〔衣服に関するリード文〕
*以下、リード文を適宜、要約しながら抜粋しております。
四季がある日本では、暑さや寒さをしのぐために季節にあった衣服を着ます。同様にア、世界各国でも自然環境に応じてさまざまな衣服が見られます。たとえば、気温や湿度の高い地域には男女とも腰巻布を身につける国があります。ズボンよりも風通しがよく、熱を逃がしやすいという性質があるからです。また、日差しが強く乾燥している地域では、あえて全身を覆うような衣服を着て、頭を布で覆うことがよく見られます。これは日差しから肌を守るとともに、身体から水分が蒸発しないようにするための工夫です。さらに、寒い地域では動物の毛皮を衣服に利用することもありますし、ポンチョのような、穴の開いた布をかぶるように着ることで熱を逃がしにくくしている衣服も見られます。

問2
下線部アについて。下のグラフ①~③は、それぞれのある都市の気温と降水量を示したものです。

これらの都市で着用されている衣服として下の写真のなかから選びなさい(★)

①:あ、②:え、③:う
*本来は中学の世界地理で習う内容だが本文にヒントがある。
①6・7月の気温が低いので南半球。
夏の12~2月に雨が少し降るが、全体的に少雨で気温は安定して低い。
高山気候に見られる特徴で、アンデスの山岳地帯で飼育されるアルパカやポンチョのある(あ)。
②降水量がほぼなし→乾燥帯
アラブ民族っぽい(え)。問題文が大きなヒントとなる。
気温の年較差(最も暖かい月の平均気温と最も寒い月の平均気温の差)が大きいのは、
大陸性気候(大陸内部の気候)だと思う。
③年間を通して気温が25℃以上で温暖な気候。腰巻布の(う)。
雨季・乾季がはっきりしている。(モンスーン・アジアかな?)
モンスーン(季節風)は季節によって風向が逆になり、夏は海からの湿った風が雨を降らせ、
冬は大陸から乾燥した風が吹く。
(い)は北極圏(カナダ北部~グリーンランド)の先住民族であるイヌイット
アノラックといってアザラシやカリブーの皮でつくるんだって(‘Д’)

江戸時代もなかばをすぎると、江戸や大阪を中心に町人文化が花開くなかで、イ、さまざまな素材や模様の入った小袖が流行しました。このことはウ、評判の美人や歌舞伎役者を描いた浮世絵からも分かります

問3
下線部イについて。現在でも地域ごとに独自に発展した織物が伝統産業として残っています。
下の①~③の織物の産地として適当なものをそれぞれ地図中のなかから選びなさい(★)
①小千谷ちぢみ…麻を織って作られる布を雪にさらし、白さを際立たせる技法が用いられてきた。
②結城紬…かつては汚れなどで売り物にならなかった繭からつむいだ糸で作られていた。
③西陣織…高級織物として知られ、明治時代にいち早く外国製の自動織機が導入された。
 
①え、②う、③い
*地図が斜めに傾いているが(;`ω´)
麻布受験生は完答してくるレベルです。
小千谷…新潟、結城…茨城~栃木、西陣織…京都

IONO STOREより。小千谷ちぢみって布を雪にさらすんですね(;`ω´)

問4
下線部ウについて。評判の美人や歌舞伎役者を描いたさまざまな浮世絵を、
江戸の人びとは買い求めました。それはなぜでしょうか。
以下の浮世絵を参考にしながら答えなさい(★★★)

有名人の肖像から流行のファッションを知るため。
*すごい問題(;´Д`)
下線部ウの手前『このことは』の内容は下線部イを指す。
下線部イ『さまざまな素材や模様の入った小袖が流行しました』を浮世絵と関連させればOK。

町のベッピンさんは今でいうアイドル。
歌舞伎役者は大衆演劇のスター。
有名人や芸能人が写る浮世絵はブロマイド写真、現代のファッション雑誌に相当する。
浮世絵は大量に刷られたので庶民が手にしやすく、江戸の町人文化に華を咲かせた🌸

問5
下線部エ『明治時代になると政府が洋服を普及させようとしました』について。
下の二つの絵は、当時日本に住んでいたフランス人画家が、
鹿鳴館の様子を描いて、洋服を着た日本人を風刺したものです。
どのような点を風刺したのでしょうか。二つの絵に共通することを答えなさい(★★)
西洋人のまね事をして、うわべだけ取りつくろった点。
*資料集でお馴染みのジョルジュ・ビゴーの作品だが、差別意識ひどくないですか(´゚д゚`)!?
とくに左の男女。鏡に映っている姿は、体を省略された猿人なんですが…。
(これが西洋人からみたイエローモンキーか????)
右の貴婦人たちはドレスを着飾っているが、他者の視線がないためか舞台裏でたばこを吸い、
柵にもたれかかったり、床にたばこをあてたりと品が悪い。

上馨(かおる)の欧化政策は、日本が文明国として生まれ変わった姿をアピールすることで、
明治政府における喫緊の課題であった不平等条約の是正を目指そうとした。

NHKより、鹿鳴館(ろくめいかん)。
お雇い外国人の1人、イギリス人技師コンドルが設計した。
『ヨーロッパのさるまね( ´,_ゝ`)』と国粋主義者から非難を受け、条約改正にも失敗。
風刺画があらわすのは、外面だけ整え、肝心の中身が抜け殻であったということ。
井上は外務大臣を辞職、鹿鳴館は閉鎖される。

じゃあ、なくなった鹿鳴館の跡地って今は何があんのよ?(・Д・)

現在の東京都千代田区内幸町1-1をグーグルマップで調べてみると、
皇居の南側、日比谷公園に隣接しております。

帝国ホテルは閉館前後から開業しているので、NTT日比谷ビルあたり。

Walkerひで物見遊山記より。跡地には1枚の石碑が埋まっている。
むなしいね(´゚д゚`)

戦後直後は布地を買う余裕などありませんでしたが、オ、戦後の復興期から高度経済成長期を通じて洋服が広まっていき、和服を着ることがふつうだった女性たちの間でも洋服が定着しました。
戦後しばらくの間は、洋服は家庭でミシンを使って自分たちで作るか、仕立て屋で自分にあわせて作ってもらうことがほとんどでした。しかし1960年代後半になると、サイズや年齢などに応じて、すでにできあがった洋服が販売されるようになりました。こうして、洋服を製造・販売する産業が大規模化していきました。カ、このようにあらかじめサイズなどが決まっている洋服を既製服とよびますが、現在では工場で大量生産された既製服を着ることが主流になっているのです

問6
下線部オについて。戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、都市部を中心に洋服が広まりました。
なぜ洋服が人びとに支持されたのでしょうか。時代の様子を考えて二つ答えなさい(★★★)
・経済成長を背景に文化が発達し、豊かな服飾が好まれたから。
アメリカのファッション文化に対するあこがれが広まったから。
*2つもいらなくない?(´・_・`)
従来の和服から洋服に変わった理由を述べる。
1つは『高度経済成長』から経済の発展→文化の発達に発想を飛ばし、
豊かな生活様式を求める動きのなかで洋服が支持された点。

戦時下のリード文では、『物資不足から贅沢やおしゃれが悪いものとされ、
男性は国民服を、女性はもんぺを着用するようになった』とある。
戦後の経済成長を背景に人間らしい生活の営みが重視され、ファッション文化が醸成する。

もう1つは、GHQの占領統治下でアメリカの文化が流入した点。
どうやら、オードリー・ヘップバーン主演の『ローマの休日』がブームに火をつけたらしい(‘Д’)
欧米のセンスが最先端でイケてるという感覚は現代にも通ずるものがある。

■追記■
戦後の占領統治下において、アメリカからガリオア資金・エロア資金とよばれる復興支援を目的とする資金援助が行われた。それをもとにアメリカから輸入された品物のなかに衣料が含まれている。また、ララ(LARA;公認アジア救済連盟)やケア(CARE;国際ケア機構)といった
国際NGOによるララ物資やケア物資でも送られてきたそうだ。

問7
下線部カについて。衣服を自分たちで作るか仕立ててもらう時代から、
既製服を買う時代に変化したことで、衣服に対する考え方も変化しました。
どのように変化したでしょうか。答えなさい(★★★★)
修繕しながら長く着られていた衣服は、
大量消費・大量廃棄の対象に含まれるようになった。

*なんか書きにくいよ< `∀´ >
戦後まもなくして洋裁ブームが起こったそうで、
自分で作ったものや仕立て屋のオーダーメイドはサイズもデザインをいかようにできるし、
自分だけの思い入れのある特別な服。
ほつれたら部分はミシンで直し、使い果たしたら雑巾にリユースされたりしていた。
一方で、既製服は他人が作ったものを陳列棚からチョイスして買うだけ。
他の工業製品と同じく、品質が均一化して没個性になると廃棄されやすくなる。
社会科の答案風に言えば、大量生産-大量消費-大量廃棄のサイクルに組み込まれるようになる。
後ろの設問にでてくるファスト・ファッションの問題点がヒント。

1980年代になると、地方の賃金も上がってきたため、日本よりも賃金の安い外国、なかでも日本から近く、労働者も多くいる中国に進出する企業が現れました。その後、中国も経済が発展して賃金が上がったため、賃金のより少ないベトナムやバングラデシュなどに工場を移す企業が多く見られるようになりました。キ、それでも日本企業の工場が中国からなくなってしまったわけではありません

問8
下線部キについて。経済発展により賃金が上がっているにもかかわらず、
なぜ日本の企業は中国に工場を残したのでしょうか。理由を答えなさい(★★)
中国にある巨大市場の獲得を目指したから。
*企業がこぞって中国に進出した理由は賃金の安さだけでなく、
世界1位の人口をかかえる中国の巨大市場が魅力的だから。
中国の工場で作った製品は日本への逆輸入にくわえて、中国の内需にまわされる。

@チャイナプラスワン@
最近、耳にしなくなったチャイナプラスワン。
中国との関係なくして日本の経済は成り立たないが、
一方で、
尖閣諸島の領土問題や米中戦争のあおりなどの政情不安から、
中国に対する過度な投資を回避する動きがある。
中国以外にも工場を建設してリスクを分散することをチャイナプラスワンという。
新たな投資先はベトナムやバングラデシュなどの東南~南アジアが候補によくあがる。

@労働力指向型工業@
繊維工業や電気部品の組み立ては多くの労働力を必要とする工業で労働力指向型工業という。
一度やり方を覚えれば同じ作業の繰り返しも多く、教育水準が高くない国でもできるので、
労働力が安価な場所に立地されやすい(安い労働力は国際競争力をもつ)。


ク、近年、人件費の安いこれらの国ぐにで、衣服がこれまでになかったような規模で大量生産され、世界中で低価格で販売されるようになっています。このような衣服はファスト・フードのように安くて手軽なためにファスト・ファッションとよばれています。ファスト・ファッションを販売する店舗では毎日のように売れ行きがチェックされ、つねに流行にあわせた売れ筋の衣服が並べられています。以前よりも人びとは格段に多くの店舗で、多くの衣服を低価格で買うことができるようになっています。

問9
下線部クについて。ファスト・ファッションの世界的な広がりは社会にさまざまな問題を生み出しています。どのような問題を生み出しているでしょうか。二つ答えなさい(★★★)
・多くの衣料ゴミが廃棄されてしまう問題。
・生産者に過酷な労働を強いる問題。
*1つは先ほどの大量生産→大量消費→大量廃棄。
『毎日のように売れ行きがチェック』されるので、売れない服は大量に捨てられる。
社会を100年先に繋ぐSatisfactory
↑このページによると、日本における衣類廃棄量は中小企業基盤整備機構調べで年間100万トン。
枚数にすると、33億枚!!(゚Д゚;)エエー
総人口の25倍以上の枚数が捨てられており、誰も袖を通していない服も多いのだと…w( ゚Д゚)w
廃棄が多い理由はファスト・ファッションだけでなく、トレンドの細分化(服の種類が増えてムダが増える)、返品在庫の再販不可(売れ残った衣類は小売店からメーカーへの返品が難しい)点も挙げられています。

COにより、年間の衣料ゴミ(2017年度のデータ)
リユース8%、リサイクル10%、焼却処分25%、埋め立て処分57%。
循環されているのは、わずか18%。焼却は温室効果ガスを伴う。
2000年と比べると衣類の購入量が60%増え、1着あたりの衣類の保管期間が半分になり、
購入サイクルの短期化は世界規模で最低でも3900万トンの繊維廃棄量が発生しているという。

もう1つは『人件費の安いこれらの国ぐに』から、消費国ではなく生産国に発想を飛ばそう。
廃棄量が多いということは、過剰な生産体制になりやすい。
繊維工場は賃金の安い発展途上国に建てられる
→低賃金、長時間労働

IDEAS FOR GOODより。
2013年、バングラデシュの首都ダッカ近郊で崩落した商業ビル「ラナ・プラザ」。
ラナ・プラザビルには5つの縫製工場が入居していたが、
生産量を増やすために違法な増築をして、4階建てのビルを8階まで伸ばした。
結果、発電機とミシンの振動でビルが崩壊し、死者1100人、負傷者2500人以上の犠牲者を出す。
労働者たちは「翌日まで帰宅するな」と命じられて、避難することもできなかったらしい・・。
我々は、劣悪な労働環境で搾取されている人々が作った衣類を商品棚から選んで買っている。

衣服を製造する企業は、流行を追って新たな商品を作っています。しかし企業自身が流行をつくりだしてもいます。人びとは流行を自分から追いかけているように思っていますが、実は広告などの力により、企業が生み出した流行を追いかけるように仕向けられているのです。企業にとって流行をつくりだすことは簡単ではありません。しかし、ケ、企業は、ある流行をつくりだすことに成功したとしても、流行している衣服の製造を意図的にやめることもあります

問10
下線部ケについて。なぜ企業は流行している衣服の製造を意図的にやめてしまうのでしょうか。
企業のねらいを答えなさい(★★)
ブランド価値の向上や維持を確立するため。
*需要量が増えればすぐ売れるので普通は供給量を増やすはずだが、
企業が意図的に供給をストップさせるのは、その服をレアなものにする→ブランドの創造
アパレル業界で成功するにはハイブランドの確立が大事なんだと思う。
『ブーム仕掛けてるヤツラが普段、雑誌に載ってる服なんて着ねーよ』(byマツコ)

この「らしさ」について考えてみましょう。体型に違いのない生まれたばかりの赤ん坊でさえも、男の子は男の子らしい衣服を着せられ、女の子は女の子らしい衣服を着せられます。こうしているうちに、男性はズボンを履きネクタイを締めることが男性らしいと思い、女性は化粧をしたりスカートを履いたりすることが女性らしいと考えられるようになります。しかし、世界を見ると男性がスカートのような衣服を着るところもありますので、コ、私たちが当然と思っている衣服についての考え方は、かならずしも当たり前のものではなさそうです

問11
下線部コについて。これまで衣服や身につけるものについて当然だと考えられてきたことでも、
近年疑問をもたれるようになっているものがあります。
どのようなものがありますか。具体例をあげて説明しなさい(★★★)
男子生徒がズボンを、女子生徒がスカートを履くこと。
*ニュースでときどき報じられることはあるが…12歳の男の子には厳しいのでは?(;’∀’)
時事対策プリントに載っているのかな?

リード文の『男の子らしさ』『女の子らしさ』といったジェンダー(社会的性差)がヒント。
最近は制服の選択を認める学校が増えてきている。
制服、性別関係なく選べます 千葉・柏の市立中学校(朝日新聞)
↑2018年2月の記事。私立の高校ではなく、公立の中学でビックリしたw(゚д゚)w
きっかけは心の性と体の性が不一致であるトランスジェンダーに対する配慮だが…

だけど、先生が言わなくてもそうなってたと思う(´~`)
今までずっと男=ズボン、女=スカートだったのだから、
初年で違う方を選んだら、ひょっとして・・?と周りに怪しまれるだろうって考えるし。
急には変わらない話なので、徐々に浸透していくのを待つしかない。

@@
サボが学生の頃、北千住の駅で女子制服をきた3人の生徒がホームにいたのですが、
よくみると、そのうちの1人は野球少年のような坊主で色黒の男の子でした。
正直、見た目にインパクトはありました。
電車のなかで優しそうなおじさんが男の子に声をかけて話してたけど、
周りにいたサラリーマンや女性、学生はジロジロジロ・・。
悪気はなかったのかもしれませんが、不憫に思いました。

@@
他には、公立高校の入学願書や履歴書から性別欄がなくなったり、
一定の要件を満たすトランスジェンダーの受け入れを表明した女子大が現れた。


ここまで、衣服が場所や時代によってさまざまに変化してきたことを見てきました。サ、衣服はその社会を映し出す鏡といえるかもしれません。そして、衣服は暑さや寒さを防ぐといった実用的な目的以外にもさまざまな目的や意味をもっていることも分かったでしょう。たとえば男性のネクタイは実用的とはいえませんが、おしゃれをして自分の趣味や好みを表現するという役割をもっています。

12
下線部サ『衣服はその社会を映し出す鏡といえるかもしれません』について。
本文では衣服はその社会を映し出す鏡といえるとありますが、衣服によって日本の社会のどのような特徴がわかりますか。具体例をあげて答えなさい(★★★★★)
保護者会に出席する親たちは派手すぎない服を着て悪目立ちを避ける。
無難なアイテムを選び、周囲に同調するという特徴がかいま見れる。

*12歳用の答案ではないが(笑)
サボは服の具体例ではなく、先に日本社会の特徴から想像しました。

日本人は自己主張が控えめで、周りの空気を読むのがうまい。
一方で、ときに同調圧力を呼び、皆と違う者を異質として村八分にしてしまう。
(海外でもよくある話だと思うが…答案作成のためにそれはおいておく(/・ω・)/)
服は自己表現の手段。
集団との摩擦を懸念し、自分らしさの主張を控える点を服の具体例と結びつける。
某私立小の保護者会では過度に露出をしないとか、紺色でないとダメだとか、
ボスママからいろいろチェックされるところがあるらしいよ( ゚д゚) (゚д゚ ) アラヤダ

しかし、ときにシ、衣服に対する考え方の違いから、問題が起きることがあります。衣服は「第二の皮膚」といわれるように、私たちにとってあまりにも身近すぎるので、それについてあまり深く考えることがありません。衣服との付き合い方を考えることは、社会そのものを考えることにつながるかもしれません。

問13
下線部シについて。本文では衣服に対する考え方の違いによって
人びとの間に問題が起きると述べられています。

(1)
そうした問題の具体例を下から一つ選び、対立する一方の言い分と、
他方の言い分を80字~120字で述べなさい。ただし、句読点も1字分とします(★★★★)
【例1】レストランや温泉などで、入れ墨が見えることを理由に入店や入浴を拒否されたことに、
外国人観光客からの抗議の声があがっている。

【例2】
髪を染めることを禁止する学校の校則に、生徒から反対の声があがっている。
*ポイントだけ(‘Д’)
相対する立場に言及する。小論文みたい。
【例1】
この話はネットでも度々でてくる(;´・ω・)
入れ墨(タトゥー)を体にいれたい人は、それをすることが自己表現の1つだと考える。
入れ墨は自分の体の一部であり、海外では当たり前にみられるファッション。
入れ墨を理由に店の利用を拒否することは不当な差別にあたる。

一方、反対派は、〔入れ墨=ヤクザ〕のイメージから反社会的な人物を想像しやすく、
入れ墨が人を威嚇したり、脅かしているように感じて恐怖や嫌悪感を覚えるという。
まっとうな日本文化ではなく、入れ墨がみえる人を入店・入浴拒否するのは道理にかなう。

【例2】
髪を染めるのも自己表現の1つ。
本来、自分の髪を何色に染めるかは他人に干渉される問題ではなく、他者に迷惑もかけていない。
いくら生徒の身分であっても、自分の髪を色で表現をすることは重要な自由権の1つである。

一方、学校は集団生活を営むうえで、規律や秩序を保つ必要がある。
奇抜な色で髪を染めた生徒がでてくると、多感な思春期にいる生徒たちが触発されて
クラス運営が困難となり、また、規律を染み込ませることも教育上の必要性がある。
そのために校則を定めて生徒の自由を抑制するのは合理性がある。

(2)
上の二つの具体例では、なぜ双方が歩み寄って問題を解決することが難しいのでしょうか。
二つの例に共通する理由を述べなさい(★★★★)
*ポイントだけ(;´・ω・)
【例1】
先日の2020/9/1、時事通信『「タトゥーに解雇は違法」高級すし店の男性が申し立て』より。
ホテルニューオータニ内にある高級寿司店で板前補佐として勤務していた20歳の男性が、
体に入れ墨があることを理由に解雇されたのは違法だとして、店に損賠賠償を求めた事例。
そのヤフーコメント欄(おすすめ順1ページのトップ10コメ)がこちら↓

辛辣な批判が多し(;´・ω・)
ヤフコメは40代以上のおじさんが多いのですが、なかには感情的な言葉も散見されます。
(ちなみに、ポチは複アカやクッキー削除で同一人が何度も押せたりもする)
入れ墨を少しでも認めようとするならば抹殺されそうな勢いです。
入れ墨系のニュースコメントは毎度こんな感じで荒れます(;´Д`)
まとめると、やはり入れ墨に対する嫌悪感、日本にふさわしくはない、が多いしょうか。

一方で、ネットではあまり見かけない、入れ墨賛成派の意見としてよく見るのは、
海外では当たり前に認められている。入れ墨拒否は人権や差別の問題
確かに、欧米人は入れている人が多いです。漢字のタトゥーとか。
…が、日本人にはピンときにくい(;´∀`)

互いに平行線です。
入れ墨の嫌悪感は自然にわきでてくる感情で仕方がない。
そもそも入れ墨をいれるかは人権問題ではない。海外の文化と日本の文化は別。
いや、個人がいかなるファッションをするかは自由権の話だ。
人権は普遍的な問題であり、日本はグローバルスタンダードから遅れをとっている。

価値観が激しく衝突しています
お互いが自分こそ正しいと言い張り、歩み寄る姿勢とは程遠い。感情を爆発させ、相手の立場にたって考えることすら拒んでいる印象です。炎上騒動に飛びつく人々の心理をひもとく、2年前の麻布の問題と近いかな?”相手の意見はありえない、議論の余地すらない”とする空気感が強いです。
入れ墨のケースでいえば、『国内の価値観(文化)vs海外の価値観(文化)』
文化には優劣がないとする文化相対主義という考えがあるのですが、人権や差別問題に絡ませて、他方の文化を蔑ろにすることはよくありませんよね。そもそも入れ墨をいれることが人権の1つにカウントされるべきものなのか、疑念をもつ日本人は多いと思います。
一方で、入れ墨の嫌悪感について。高齢の方は任侠ドラマの影響が大きいのかもしれませんが、現代のドラマでは入れ墨のシーンをあまり見かけません。マスコミが意図的にそういった演出を控えているのだと思いますが、まだ若い(ほうである)サボはコメント欄でいわれているほどの拒絶はありません。目にしないから、よくわからないが正直なところです。どでかい龍が昇っているのはともかく、ちょっとしたサイズのタトゥーなら気にしないかな(^^;
昨今は入れ墨の話題になったら先のようなコメントが大量にあふれるのがお決まりの流れで、そういった大量の言説や賛同ポチを繰り返し目にすることで、脳内で〔入れ墨⇒拒絶〕のインプットが堅固されているようにも見えます。これは入れ墨の件に限らず、ネットで普遍的にみられる現象ですが、古くからの日本の風習やしきたりとは別の要因で強調・誇大されている節があります。

@@
では、法律の世界ではどうなのか?がんばって調べてみました。
まず、入れ墨のある人の入店・入浴拒否を認める法律はないとのこと。また、どのような客を招くかは店の裁量判断によるので、一定の合理性があれば店側の判断に違法性はないとされるようです。入れ墨を理由に入店や入浴を拒まれた訴訟事件はいまだ起きていないようで、以下想像です。

入れ墨をいれる権利を人権概念に含ませるのであれば、憲法13条を根拠とした自己決定権になります。自己決定権とは、私的な事項については公権力の干渉を受けることなく、自分で決める権利。ただし、13条の法的性質について判例通説は人格的利益説をとっていまして、憲法に明文のない新しい人権の保障は『個人の人格的な生存に不可欠な権利自由』だけと限定を付します。何でもかんでも人権として認めると、人権同士の衝突事例が増えてしまい(人権のインフレ)、本当に守るべき権利自由の保障が阻害されてしまうおそれがあるからです。

自己決定権の中身は非常に広範囲で、たとえば、自己の信仰上の理由から輸血を拒否するなどの医療拒否権(エホバの証人輸血拒否事件)、または、子供を持つかどうか、何人持つかといった家庭の在り方や性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)に関わるような決定事項は、『個人の人格的利益に不可欠』な利益と認められやすいです。

対して、入れ墨のように個人の選択で行うライフスタイルに関する決定は、それ自体が人格の形成に影響があったとしても、憲法で保障すべきほどの人格性があるかといえば、かなり微妙です。入れ墨は生まれつきのものでもありませんしね。
また、人権は対公権力、つまり、公権力対個人を想定していますから、お店と客といった私人(個人)同士には人権規定を直接適用できません。このような場合、『私人間効力』という憲法上の論点では個人間の私的自治の原則(契約の自由)に配慮し、公序良俗(民法90条)や不法行為(民法709条)といった一般条項を媒介にして間接的に適用されます(間接適用説)。これによると、憲法上の人権概念は他方当事者の利益と天秤にかけられて違法性の判断がなされるので(比較考慮)、保障の度合いは対公権力のケースと比べると下がってしまいそうです。

ちなみに、観光庁ではインバウンド対応に向けてこのような働きかけをしています。
入れ墨(タトゥー)がある外国人旅行者の入浴に関する対応について
留意のポイントとして、
・宗教、文化、ファッション等の様々な理由で入れ墨をしている場合を留意する。
・利用者相互間の理解を深める必要性。
・入れ墨は衛生上の支障が生じるものではない。
具体的な対応として、
・シールなので入れ墨部分をおおい、見えなくする。
・入れ墨のサイズや態様から威圧感を与えない場合はOKにする。
・家族連れが少ない時間帯に入浴を促す。
・浴場を分けるなどして、貸切風呂に案内する。
貸切風呂は難しそうだけど、シールとかは妥協点として良い落としどころかな?( ˘ω˘ )

判決文では『社会通念』という言葉がよくでてきます。裁判所も社会の風潮や時代の変化をキャッチして判断しますので、入店・入浴の拒否が違法かどうかは、つまるところ、現在の日本社会にいる人々が入れ墨をどう思うかに集約されます。観光庁の働きかけにある対応の有無を考慮し、”一律の入れ墨拒否は極端であり違法”とされる時代が近い将来くるかも?しれません。

■追記■
令和2年9月16日、医師でない者のタトゥー施術行為(皮膚に色素を注入して入れ墨を彫る行為)が医師法17条(医業独占)違反に問われた事案につき、最高裁が逆転
無罪判決を言い渡した大阪高裁の判決を支持しました。以下、最高裁判例集より。
医師法17条で医師が独占すべき『医業』は『医行為を業として行うこと』であり、その『医行為』とは医療及び保健指導に属する行為のうち、医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるおそれのある行為をいう。
そして、ある行為が医行為に当たるか否かについて、当該行為の方法や作用のみならず、その目的、行為者と相手方との関係、当該行為が行われる際の具体的な状況、実情や社会における受け止め方等をも考慮した上で、社会通念に照らして判断するのが相当である。
以上に基づき、『タトゥー施術行為は、装飾的ないし象徴的な要素や美術的な意義があると社会的な風俗として受け止められてきたものであって、医療及び保健指導に属する行為とは考えられてこなかった』ものである。また、タトゥー施術行為は、医学とは異質の美術等に関する知識及び技能を要する行為であって、医師免許取得過程等でこれらの知識や技能を習得することは予定されておらず、歴史的にも、長年にわたり医師免許を有しない彫し師が行ってきた実情があり、医師が独占して行う事態は想定しがたい。このような事情の下では、被告人の行為は、社会通念に照らして、医療及び保健指導に属する行為であるとは認めがたく、医行為には当たらない。

本件の争点は入れ墨を彫る行為が医行為にあたるかどうかであって、入れ墨を理由とした社会的な取り扱いの差異には言及していません。この点、草野耕一裁判官による補足意見でも、『公共的空間においてタトゥーを露出することの可否について議論を深めるべき余地はある』としつつも、『タトゥーの施術に対する需要そのものを否定すべき理由はない』と書かれてあります。しかし、”装飾的または美術的な意義がある社会的な風俗として受け止められてきた”と、タトゥーの性格についてわりと正面から是認した姿勢がうかがえますね。


【例2】
どのような髪型、髪の色にするかも憲法上は自己決定権の保障との兼ね合いで問題になります。
髪型が人格の発露になるとはいえ、人格上の生存に不可欠なのかといえば、これまた微妙(;´・ω・)

普通は周囲に迷惑をかける故に人権が制約されるものですが、他者への加害がなくとも立場の弱い者や正常な判断ができない者を保護するために、その本人の自由を制約するという考えがあります。未成年者の人権問題でよく登場する『パターナリズム』です。和訳すると、父親的温情主義(;´∀`)子供は未発達。健全な人格形成を図るうえでは、本人の保護のために本人の自由を制限し、未成年者の人権は成年のそれよりも保障の程度が下回るとします。たとえば、選挙権。国民の代表者を選ぶ選挙は国の将来に関わる重大なイベントなので、一定の年齢ボーダーを敷いて選挙権を制限するのは合理性があると思います。同様に、公職選挙法では未成年者の選挙運動の自由が禁じられていますが、政治活動はともかく、票を呼び込む選挙活動は民主的に正当な大人のドス黒いガチ喧嘩に子供を巻き込むので、これも本人保護の名目で選挙権とセットに規制の対象としても仕方がないのかもしれません。他には職業選択の自由、婚姻の自由、飲酒喫煙、青少年保護育成条例などが問題になります。

髪型規制についてはどうでしょうか。この点、校則で禁止されていたにもかかわらず、無断で自動車免許を取得してパーマもかけた私立学校の高校生が反省しない態度を示したことを理由に自主退学の勧告を受けた事例(修徳学園パーマ退学訴訟;最判平成8年7月18日)につき、最高裁の判決文からパーマの部分だけを抜き出します。

『パーマをかけることを禁止しているのも、高校生にふさわしい髪型を維持し、非行を防止するためである、というのであるから、本件校則は社会通念上不合理なものとはいえず、生徒に対してその遵守を求める本件校則は、民法1条(私権の基本原則)、90条(公序良俗)に違反するものではない』

被告が私立学校なので、私人間効力の間接適用説が前提にあります。教育上の目的からパーマ規制には合理性があると判断しています。過去には、男子生徒に対して丸刈りを強制する校則が違法と判断されたケースがあるのですが、学校側が一定の髪型を一律に強制するのではなく、一定の髪型を一律に禁止するという手法だと合理性があるといわれやすいです。

憲法界の大家である芦部信喜先生によると、『規制に重要な教育目的があり、かつ、規制の態様・程度がその目的と実質的に事実上の合理的な関連性を有する』のであれば、校則による規制が認められる余地があるとしています。学校は集団生活の場。生徒たちの健全な育成は教育の目的の1つである。その目的と合理的な関連性が認められる範囲内の規制であればOKだと。合理的関連性は比較的緩やかに判断されやすく、この手の訴訟では学校側の判断が尊重されるので、現段階では髪の毛の染色を禁じる校則の違法性を訴えたところで敗訴となる確率は高そうです。

もっとも、修得学園の判決文にも『社会通念』がでてきたので、コチラも最終的には社会がどう考えるかによります。社会が変われば法も変わる。法律は生き物といわれる所以です(σ’д’)σ

麻布の解説から大幅にズレましたが、、深堀りはしたつもりなので、
あとは皆さんで考えてみてください(*’ω’*)

@データ@
4科目合計200点満点
最高点151点 合格最低点110点
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