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大問1
建築物をテーマとしたリード文
問1
グラフ1は東京都の1日当たりの水使用量と人口の移り変わりを表したものです。
(1)1965年から1970年にかけて、人口に比べて水の使用量が大きく増加しているのはなぜでしょうか。僕の家の間取り図を参考にして答えなさい(★★★)
(2)1995年以降、人口が増加しているにもかかわらず
、水の使用量が減少しているのはなぜでしょうか(★★)
(1)家に風呂が作られ、水洗トイレが利用されるようになったから。
(2)節水の意識が高まり、節水機能がついた商品が使われるようになったから。
*家のなかで水を多量に使うものは何ぞ?と考えると、浴槽に水をためる風呂が思い浮かぶ。
年代が高度成長経済期の後半なので迷うかもしれないが、現代のお風呂の歴史は意外と浅い。
また、従来の水洗トイレは1回の使用に13Lの水を使用していたそうで、スーパーで売られる大きなぺットボトルが2Lであることをふまえると、1回のジャーーでかなり多くの水を使っていることがわかる。そこで、節水モードがついたトイレが開発され、最新式の水量は4Lほどに減ったのだとか(それでも多いが)。
問2
瓦を使った以下のあ~うの建築物の名前と、
建てられた場所の都道府県名を答えなさい(★★★★)
(よくみたら、【い】にマウスポインタの手が写ってしもうた(´゚д゚`)・・)
あ:平等院鳳凰堂、京都府 い:旧開智学校、長野県 う:東大寺正倉院、奈良県
*【い】が難しい。長野県松本市にある旧開智学校は近代教育の先駆けとなった小学校。
1876年に建設。外観は西洋風だが、どアップでみると龍をこしらえたデザインもみられる。
【あ】は藤原頼通が現在の宇治市に造営した、10円玉の表のヤツ。【う】は校倉造で有名。
問4
江戸の町では武家屋敷や寺院以外にも、次第に瓦屋根の建築物が増えてきました。
なぜ、江戸の町で瓦屋根が必要とされたのでしょうか(★★)
瓦は燃え広がりにくい素材だから。
*日本の家屋は木でできているので、どこかで火事が起こると延焼して街が滅んでしまう。江戸期では放火は重罪で厳しく取り締まられ、人々も非常食の小豆を枕につめて火事に備えていたそうな。
問5
(1)同潤会(アパートの名前)のアパート建設事業の目的は多様で様々な特徴をもったアパートがいくつも作られました。下の表にあげた3ヵ所のアパートの特徴について述べた文章として、最もふさわしいものはあ~おのどれでしょうか。
地図2も参考にしながら、それぞれ記号で答えなさい(完全解答:★★★)
表1
所在地 | 青山 | 猿江 | 大塚 |
土地買収年 完成年 |
1925 1926 |
1926 1927 |
1928 1930 |
家族向け 独身向け 店舗*1 その他 合計 |
137 1 138 |
251 43 294 |
149 5 4 158 |
付属施設 | 児童遊園 | 児童遊園 前隣館*2 |
食堂 浴室 日光室 音楽室 応接室 |
*1・・・アパートの建物の1階にある店
*2・・・住民の職業紹介などをする総合福祉施設
あ:貧しい人々の住む地域の整備と、仕事を中心とした被災者の生活再建を目的に建てられた。
い:アパート建設事業の完成形で、家族向けから独身向けまで、多くの人々が暮らせる工夫をこらして建てられた。
う:職業婦人とよばれた働く独身女性を対象につくられ、女性の過ごしやすい付属施設があることで注目された。
え:被災地域では土地買収が進まなかったので、市街地から離れた土地に中流家族向けの住宅として作られた。
お:震災からの復興が進むなか、被災地域への新たな移住者を対象として作られ、都心の静かな地域の住宅して注目された。
青山・・え 猿江・・あ 大塚・・う
*与えられた資料と地図から各アパートの特徴を求める、思考系の問題。不適な選択肢が2つ紛れている。通常の資料問題とはパターンが特殊でビビる:;(∩´﹏`∩);:
断定しにくいときはとりあえず候補を挙げて次にいき、最後にもう一度検討して確定する。
あ:「貧しい人々の住む地域の整備」「仕事を中心とした~生活再建」から、
職業紹介をする善隣館のある猿江?
い:家族向けと独身向けを双方兼ねそろえるアパートはなし。
う:いろんな付属施設がある大塚?男性にも嬉しい施設だが、
当時の基準でいえば独身女性か?(日光室が謎)
え:被災地域では買収が進まなかった→被災地域から離れているのは青山か大塚。
青山のオシャレなイメージを知っていれば、中流家族向けは東京市外にある青山か?
お:関東大震災は1925年。「復興が進むなか」なので、ある程度、時が経過している。
となると、土地買収年が最も遅い大塚が怪しいが、大塚は火災がひどかった地域にはない。
全体から推測していけば何とかなるはず。
まどろっこしく、途中で思考を放棄したくなるが、資料問題は新テストでも狙われるので要注意。
ちなみに青山の同潤会アパートは現在、表参道ヒルズになっている。
(2)同潤会(アパートの名前)はアパートに入居する人に向けて、入居規定(資料1)を示しています。80年以上前のものですが、現在のアパートやマンションで暮らす時に参考になる部分もあります。これをよく読み、図も参考にして次の①と②に答えなさい。
①管理組合の役割は何ですか(★★★)
②同潤会が、管理組合とは別に町内会への加入を勧めているのはなぜだと考えられますか(★★★)
資料1 同潤会アパートの入居規定(1930年ごろに発行されたもの)より
アパートご入居についてのご注意
ご入居になる時には、次のことをお守りください。また、アパートの同じ入り口をご利用になっている各戸には
それぞれの管理組合を組織していただいておりますので、必ずご加入ください。
〇階段、廊下、下水について
(一)各戸の玄関先や、廊下、階段のおどり場には、牛乳ビンや掃除道具などの品物を置かないこと。
(二)管理組合で相談して階段や下水道などの掃除をすること。
(三)共同で利用する場所の電球の取り換えなどは当番を定めていますので、
詳しくは隣の方などにご確認ください。
〇その他
このアパートでは町内会が組織されています。これは同潤会が組織したものではありませんが、
会費は少しですので、ご入会をお勧めいたします。
①共同で利用する場所のルールを決める役割。
②住民同士のつながりが大切であると考えたから。
*麻布の記述は字数指定がないが、解答用紙の長さから30字程度におさめなくてはならない。
アレコレ書けないからこそ、要点を外さないこと。
①(三)で『共同で利用する場所』を使う。(一)(二)も『共同で利用する場所』に含まれる。
アパートの共有部分(みんなで使うところ)の取り扱いに関するルールを定め、住民トラブルを未然に防ぐ。
②素直に考える。児童犯罪の抑止や震災ニュースでも、地域住民との連携が大切だ!という話はよくでてくる。町内会は地縁団体の1つで、地域住民のつながりを目的とした組織。
問6
役割を終えた後も壊されずに残され、新しい役割を担っている建築物があります。具体例を一つ挙げ、どのように役割が変化したのかを説明しなさい(★★★)
待機児童を解消する目的で、廃校になった学校をリフォームして保育施設に変えた。
*具体例を自らひねり出さないといけないので、社会に対する目を養っていなければならない。
わかりやすいのは学校。公立学校は公の施設なので、何かと別の施設に流用されやすい。
待機児童の問題では、廃校をもっと有効活用すべきとの声が上げられている。
サボの母校(小学校)も生徒減で廃校となり、今は市の保管庫に変わってしまいました (;´Д`A
その代わり、取り壊されずに原形を保ってくれているので、これはこれで感謝ですね。
他にも、富岡製糸場のように観光資源へ生まれ変わった建築物は多々ある。
問7
下の地図は多摩ニュータウンができる前(地図3)と入居が進んだころ(地図4)のものです。
この2枚の地図を比べて以下の問いに答えなさい。
(1)多摩ニュータウンでは、どのような地形のところに住宅がつくられましたか(★★)
(2)グラフ2は多摩ニュータウンのある東京都多摩市の1980年と2015年の5歳ごとの人口構成を表したものです。現在多摩ニュータウンに住む人々は、(1)との関係で、どのような問題をかかえていると考えられますか(★★★★)
(1)高低差のある丘陵地
(2)坂道が多く、体力が弱ったお年寄りにとって交通が不便である問題。
*多摩問題。テレビの特集でみたことがある(σ・д・)σ
(1)地図1をみると、等高線が指紋のようにグルグルと走っている。
かといって、大きな山の山頂に向かっているわけではなく、アップダウンを繰り返す丘陵地である。丘陵 (きゅうりょう)とは、なだらかな小山。漢字の読み問題でもでてくるけど、意味も知ってたかな?
言葉が思いつかなかったら、「なだらかな坂が続く、起伏がある」など別の言い回しで表現する。
(2)地形図と人口構成から、住民がかかえる困難を推測するという面白い問題。
グラフ2から少子高齢化(どこの自治体もだいたいそうだが)。
少子と高齢、使うべきはどちらか。(1)から多摩ニュータウンは”丘陵地”にあるから、苦労するであろう人々は高齢者。買い物で外出するとき、坂を上り下りするのはお年寄りには苦痛である。
問8
田園調布は資料2にあるような憲章が定められ、つくられた当時の街の環境が維持されてきたこともあって、高く評価されてきました。しかし、人々のものの見方が変わり、憲章の受けとめ方も多様化したため、憲章にあるような街の環境の維持は難しくなっているといわれています。
街の環境の維持が難しくなってきたのは、憲章がどのように受けとめられるようになったからでしょうか。資料2を参考にし、人々のものの見方の変化と関連づけて説明しなさい(★★★★★)
資料2 田園調布憲章(1982年制定)の一部
1 この由緒ある田園調布を、わが街として愛し、大切にしましょう。
2 創設者渋沢翁(栄一)の掲げた街作りの精神と理想を知り、自治協同の伝統を受け継ぎましょう。
3 私たちの家や庭園、垣根、塀などが、この公園的な街を構成していることを考え、新築や改造に際しては
これにふさわしいものとし、常に緑化、美化に努めましょう。
4 この町の公園や並木、道路等公共のものを大切にし、清潔にしましょう。
5 互いに協力して環境の保全に努め、平和と静けさのある地域社会を維持しましょう。
6 不慮の災害に備え、常日ごろから助け合いましょう。
7 隣人や街の人々との交わりを大切にし、田園都市にふさわしい内容豊かな文化活動を行いましょう。
地域住民とのつながりより個人の自由が優先され、
憲章が示す街の文化や精神の継承を重んじることが重荷となってきたから。
*ハイパー書きにくい。
まずは「憲章がどのように受けとめられるようになった」かを考える。
資料2を読むと崇高(すうこう)な理想が列挙されているが、自治協同の伝統継承、建築制限、
環境保全、常日頃からの助け合いと内容がかなり面倒くさい。地元愛も強制されるとわずらわしくなる。
PTAや町内会の役員もそうだが、個人の自由が尊重される昨今では、プライベートな時間を割いてまで周りのルールに縛られるのは面倒くさいと感じる現代人は多い。できれば他人に押し付けて自分はやりたくない。
ようするに、”憲章は住民の重荷となり、負担と感じるようになった”。
これを『人々のものの見方の変化』(個人の自由の尊重)と関連付ける。
問9
わたしたちは社会の変化に応じて建築物を工夫し、さまざまな問題を解決してきました、しかし、広い視野で見直すと、また別の問題が見えてきます。下の例から一つ選び、こうした工夫がどのような社会の問題を解決してきたかということと、見えてきた別の問題を、100~120字で説明しなさい。ただし、句読点も1字分とします(★★★★)
例:防犯付き住宅、オール電化住宅、高層マンション、
震災復興住宅、郊外の大型ショッピングセンター
省略
*ラストの長文記述。100~120字と幅のある字数指定はありがたい。
5つ例から好きなものを1つ選んで、メリットとデメリットを述べる。
あくまで「社会の問題」なので、初期費用が高くなるとか、高層階の見晴らしは最高などと個人的な問題は書かない。文章の構成は立てやすいが、”社会に対する目”が強く問われる。
解答例は面倒なので省略!ここではポイントだけ。
■防犯付き住宅
○犯罪を未然に抑止する。独身女性やお年寄りには心強い。安全は人々に安心を与える。
×防犯システムに頼りきりで、かえって人々の防犯意識が薄まるおそれがある。
■オール電化住宅
○ガスを使わない→火事が起きにくい、クリーンな空気、地球温暖化の対策に貢献
×停電が起こるとお湯すら沸かせず不便、電力供給の問題
■高層マンション
○高層化による土地の有効活用、都市開発による経済効果
×近隣の日照権問題、景観が損なわれる恐れあり。震災時エレベータに閉じ込められる危険性・・。
(聞く話によるとタワーマンションは住民同士の交流はほぼないのだとか。メリットにもデメリットにもなりえる)
■震災復興住宅
○避難所生活からの脱却、被災者の生活の本拠地を確保する。
×立退期限がせまっても、被災者の高齢化などにより強制退去が難しいケースが発生する。
自立ある生活再建が問題となる。復興費の増大
( 震災復興については『復興と復元は違う、どうすれば復興したといえるのか、復興の定義を決めなければ永遠に”復興”に公的資金を投入し続けることになる』との意見もある )
■郊外の大型ショッピングセンター
○地域の経済活性化、1つのショッピングセンターで多くの用事を済ませられる利便性の高さ。
×周辺の個人店や商店街がつぶれてシャッター通り化。乗用車を運転できない人は不便。
かつては徒歩や自転車で行ける近場の商店街で買い物を済ませる人が多かったが、
自動車の普及(モータリゼーション)が進むと、1回の買い物で多くの商品が購入できる
大型ショッピングセンターが郊外の主要道路沿いに立地するようになる。
昔ながらの町の商店街は競争に負けて廃れていき、車を運転できない人はかえって不便になった。
麻布の採点者は個性的な解答を受け入れてくれそうな気もするが・・
かといって、無理をするのはやめましょう。。
@データ@
合格者数:382名,最高点:146点,最低点:106
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