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2016年度 横浜翠嵐高校・特色検査【課題1】問題解説

〔人為的な介入が生物の多様性に及ぼす影響について〕
◆設問1
問1

下線部1-ア「河川」とあるが、日本の河川の特徴として、河況係数が諸外国の河川に比べてきわめて大きいことがあげられる(図1)。河況係数とは、河川のある地点における1年のうちの最大流量と最小流量の比で、数値が大きいほど流量の変化が大きく、数値が小さいほど流量の変化が小さいことを表すものである。なぜ、日本の河川は河況係数が大きくなるのか、その理由について、日本の地形や気候をもとに説明しなさい。

日本の河川は世界の河川と比べて長さが短く、斜面が急なので、
陸地に降った水が一度に河川へ流れやすい。また、梅雨や台風など雨が降る季節に偏りがあり、
河川の流量に大きな変化をもたらしやすい。

*記述すべき要素はわかりやすい。
河況係数は最大流量と最小流量の比なので、流量の変化が大きいと値が大きくなる。
日本の河川は短くて急だから、水が一気に流れて氾濫しやすい。
気候は季節は雨が降る時期と降らない時期があり、太平洋側では梅雨や台風など夏~秋
日本海側では雪解け水が流れる春頃に流量が大きくなる
この2つの要因から最大流量と最小流量に顕著な差が生まれ、河況係数が大きくなる。

問2
下線部1-イ「信玄の霞堤」とあるが、霞堤とは図2の模式図にあるように上流側に向けて開いた逆ハの字型の堤防のことである。河川の流域に堤防を作るとそれよりも下流域では洪水による被害が軽減されるが、それはどのようなしくみによると考えられるか、洪水で水かさが増える時の水の動き方、洪水が引く時の水の動き方、下流域における流量の変化の3点に着目して説明しなさい。

洪水が起きると逆ハの字の堤防の裏側に水が回りこんで勢いが弱まり、
あふれ出た水は堤防の間に留まることで周囲には広がらない。
洪水が引く時は堤防の間を通って河川に戻り、下流域における水の流量の変化が和らげられる。

*水がどのように流れるか、堤防の形から流体の動きを推測する難問。
記述すべき点は3つ。
・洪水で水かさが増える時の水の動き方
洪水が引く時の水の動き方
・下流域における流量の変化
水害の被害を抑えるので、最後の「下流域における流量の変化」は小さくなるはず。
水が一度に押し寄せるから被害が拡大するので、徐々に水を流す役割が霞堤に求められる
では、どのような仕組みで徐々に水を流すようにするか。

国土交通省より。
水かさが増えると水流が逆ハの字の霞堤の裏側へ回り込み、水流の勢いが衰える。
流れが緩やかになりながら、あふれ出た水は堤防の隙間をグルグルと循環し、
堤防の外側へ水が広がらない。洪水が引く時は、再び堤防のあいだから河川へと戻る。
河川の水流を弱めつつ水を一時的にプールさせ、氾濫が収まったら徐々に水を河川に戻すことで、
水流の変化を少なくし、下流域での水害被害が軽減される。
合理的な治水法として、後世でも評価が高かったようです。


◆設問2
下線部2「かい掘り作業により、ため池の水質が保たれると同時に、翌年の稲作に必要な水が保証されていたと考えられます。湖沼遷移の初期状態に人が揺れ戻していたと理解すればよい」とあり、筆者は、ため池を人口の湖沼を見なし、そのかい掘り作業が湖沼遷移を著しく進行させずに初期の状態を保つことになったと見ることができるとしている。このことから逆に、天然の湖沼において、その初期の状態と、遷移が進んだ湖沼の状態がどのようなものか、本文の内容に沿って述べなさい。
-本文抜粋-
ダムもため池も、川の流れを止め、本来流水域であったところを止水域に変えてしまうこと、その結果、水だけでなく土砂も止め、貯めてしまうことは同じです。そしてこれらの水と土砂には降雨とともに陸域から流れ込んだ落ち葉や動植物の死体に代表されるデトリタスなる有機物が含まれています。これらの有機物は、バクテリアをはじめとする分解者によって分解・還元され、無機物になることによって植物に取り込まれ、最終的に私たちの食糧を保証しているのですから重要なものであり、無機化された時点で栄養塩と呼ばれるのですが、過ぎたるは及ばざるがごとしで、多すぎると湖沼の富栄養化を招くしろものなのです。
そこで、ため池ではかつて「かい堀り」が毎年秋に行われていました。池を干し上げ、底にたまった泥、つまり土砂とデトリタスを除去する作業です。そしてそのついでに、もともと稚魚として放流したフナやコイを収穫していたのです。(江崎保男『自然を捉えなおす』)
初期の天然の湖沼は水深が深く、栄養塩が乏しい状態にあるが、
周囲から入り込む土砂の堆積から次第に水深が浅くなり、
分解者が底に貯まったデトリタスを分解や還元をすることで富栄養化が起こる。

*むずかしい。
ため池はダムと同じく人工の湖沼。
では、人の手が加わらない天然の湖沼はどのような遷移をたどるのか。
本文には記載がないので、人工の湖沼である、ため池の遷移と比較して考える。

ため池では流水域を人為的に止水域に変えた。
だから、土砂が堆積してデトリタスが底に貯まってしまう。
デトリタスが増えると湖沼の富栄養化を招き、水質が悪くなる。
そこで、かい掘りをしてデトリタスを除去し、ため池の富栄養化を防ぐ。

では、人為的な介入のない天然の湖沼の場合はどうなるのか。
たとえば、噴火で地面に穴が開き、そこに水が貯まってできた湖沼(初期の湖沼)は、水深が深く、生物がいないので栄養塩が乏しい状態(貧栄養湖)にある。湖沼は止水域で水が出ていかないが周りから土砂が流れ込むことがあり、湖沼の底が土砂で堆積することで水深が浅くなっていく。
この土砂に含まれる有機物、デトリタスが微生物の分解還元にされることで、湖沼の栄養塩が供給されるようになる。はじめはクロモなどの沈水植物が育ち、ウキクサなどの浮葉植物、ハスなどの抽水植物と植生が変わっていく。その間でも土砂の堆積で水深は浅くなっていき、水深が浅いと水底まで太陽光が十分にあたるので、デトリタスの分解が促進されて富栄養化が進む。

@湖沼の成因@
・カルデラ湖…噴火で地中のマグマがなくなって空洞ができると、
地盤が耐え切れなくなって陥没し、くぼ地ができる。
・堰止湖(せきとめこ)…土石流などで河川がせきとめられてできる。
・断層湖…断層運動でくぼ地ができる。
・氷河湖…氷河の侵食作用で形成されたくぼ地。
・三日月湖…蛇行した河川が洪水でストレートになり、取り残された湖。

最終的に湖沼は水がなくなり、やがて草原へと遷移します
詳しくは高校生物の湿性遷移で習います。
湖の富栄養化は栄養塩類が豊富だから、一見良さそうに思えますが、
実は水質の悪化につながってしまいます。赤潮は富栄養化の実害として有名ですね。
海陽中学で富栄養化の大問が出題されたので、興味のある方は挑戦してみてください。

◆設問3
下線部3「春の小川は さらさら いくよ」は、春の小川の水がよどみなく流れていゆく様子を言い表している。つまり、この「さらさら」という語は、「液体がよどみなく流れる様子。」を言い表す擬態語である。ところで、「さらさら」あるいは「さらさらと」という語は、これ以外の「様子」を言い表すこともある。それはどのような「様子」か。2つ答え、それぞれにふさわしい文を作りなさい。ただし、
・「様子」は、「液体がよどみなく流れる様子。」などとできるだけ一般化し、
2つが異なる「様子」を表すおのとすること。
・作る文は、主語・述語を備え、文中に「さらさら」あるいは「さらさらと」を用いること。
文字数は12字以上25字以内とし、句読点は1字に含めること。
・湿り気や粘り気のない様子。
⇒さらさらしたシルクの生地は触りごこちが良い。

・なめらかに進む様子。
⇒書道家の彼は、さらさらと筆を走らせた。
・物が軽く触れ合い、かすかに立てる音を表す様子。
⇒風が吹いて、笹がさらさらと音を立てる。

*言葉の意味をふるい分け(異なる2種)、その例文を答える。
語彙レベルが高く要求される:;(∩´_`∩);:
最後の意味はなかなかでてこないと思われる。。
「さらさら~ない」は副詞であって擬態語ではないから誤りとなる。


◆設問4
下線部4「センサス(人口調査)して、そこにいる鳥たちをカウントした」のように、鳥類の調査では、設定した調査ルートや、見通しのきく場所で確認できた鳥類の種類や個体数を記録する方法がとられる。一方、魚などの水中の生物では、目視による個体数の確認ができない、その生物をすべて捕獲することができないなどの理由から、標識再捕獲法という方法が用いられることがある。これは、捕獲したすべての個体に標識をつけてから放し、しばらく時間をおいてそれらが十分に拡散した後、再び同様な条件の下で捕獲し、捕獲した個体に含まれる標識個体数から全体の個体数を求める方法である。次の各問いに答えなさい。

問1
いま、ある湖に生息する魚A種の個体数を調べることにした。ある日その湖から50匹の魚A種を捕獲し、そのすべてに標識をつけた後、再び湖に放った。2日後、その湖から同じ方法で魚A種を捕獲したところ、60匹が捕獲され、そのうち12匹に標識がついていた。この湖には魚A種が何匹いると推定できるか、答えなさい。
250匹
*捕獲した60匹のなかで、印あり:印なし=12:48=1:4
印は50匹につけたので、全体では、50×5/1=250匹

問2
標識再捕獲法の説明の中に、「再び同様の条件の下で捕獲し」とあるが、たとえば、動物の多くは、一日の活動時間や行動範囲が決まっているので、最初の捕獲と再捕獲とは、同じ方法、同じ時間、同じ地点で行う必要がある。標識再捕獲法では、ここまでに述べられていること以外にも個体数を正しく推定するために前提となる条件が複数ある。そのうち2つをそれぞれ30字以内で述べなさい。句読点は1字に含めること。
・標識をつける個体は無作為に捕獲し、再捕獲も同様であること。
・再捕獲時までに、標識が消えずに存続していること。
・標識をつけたことで、個体の生活態様に影響を及ぼさないこと。
・再捕獲までに個体数に大きな影響を及ぼす環境の変化がないこと。

*標識再捕獲法の前提条件を考える。ここも異なる2つの視点で述べることが要求される。
標本調査なので、サンプルは偏りが出ないよう無作為に抽出する。
標識をつけても再捕獲までに標識が消えてしまったら、標識の有無の比率が変わってしまう。
標識の化学成分や付け方によって個体の生活様式に影響を及ぼしてしまうと、
これまた比率が変動するおそれがある。標識に問題がなくとも外部の環境変化で、
その個体をとりまく生態の要因が変わってしまうと、統計結果に変化をもたらしてしまう。

◆設問5
リード文の内容正誤。~省略~

7つの選択肢から2つ選ぶ。all英語。
ecosystem(生態系)やnutritive salts(有機塩)といった中学生には難解な単語もあるが、
末尾に単語集が載っているので英文としては難しくはない。
ただ、本文が長いので読解に時間が追われる。
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