2019年度 海陽中学過去問・特別給費【理科】大問2解説

植物プランクトンは主に窒素やリンなどの栄養塩類をえさとして増殖します。
栄養塩類が不足する湖は貧栄養湖と呼ばれ、そこに生息する生物の種類も多くありません。
反対に、栄養塩類が多い湖は富栄養湖と呼ばれます。
しかし、栄養塩類が多いからといって生物の種類が多いとは限りません。
栄養塩類のほとんどは、河川からもたらされます。
流れこんできた栄養塩類は、水面付近にのみ供給されるわけではなく、むしろ水底へ流れ込んでいきます。
栄養塩類の濃度が高くなると、(a)水面の色が変わるほどプランクトンや藻類が大増殖することがあります。また、水中でできた物質が何らかの原因でわき上がって色が付いて見えることもあります。プランクトンなどの生物が増えると、それにともなって死骸も増え、それらは水底に沈んでいきます。これらの死骸を分解してくれるのが、菌類や細菌類です。このような環境では、水中の溶存酸素量(水中にわずかに溶けている酸素の量)が大きく変化します。
日本のような温帯域においては、夏ほど日射量が多く、植物はさかんに光合成をします。しかし、(b)植物プランクトンの量は日射量の多い真夏ほど多いわけではなく、春や秋に多くなることが知られています。冬になると気温が下がるため、水面付近の水温は低下します。しかし、水底の水温の季節による変化は、水面付近ほど大きくはありません。

問1:次のうち、富栄養湖をすべて選びなさい。
ア:摩周湖-河川の出入りがない閉鎖湖である。
イ:十和田湖-唯一、奥入瀬川が流れ出ている。
ウ:諏訪湖-多数の河川が流れこんでいる。
エ:霞ヶ浦-平均水深4mの浅い湖である。

問4までは、水面付近とは水深が1mに満たない深さとし、水底とは水深20mとします。
また、気候については日本のような温帯域で考えます。

問2
植物プランクトンはおもに水中のどこに生息していますか、選びなさい。
ア:水面付近  イ:水底付近
ウ:小さい種は水面付近、大きい種は水底というようにすみわけている

問3
下線部a『水面の色が変わるほどプランクトンや藻類が大増殖する』について答えなさい。
(1)このような現象とはあまり関係ないものを選びなさい。
ア:赤潮 イ:青潮 ウ:黒潮 エ:白潮

(2)このような現象が起こるとき、水中にすむ魚介類はどのようになりますか。
最も考えにくいものを選びなさい。
ア:水中の溶存酸素量が不足するため、魚介類が減少する。
イ:増殖したプランクトンがえらにつまり、魚介類が窒息する。
ウ:藻類などがつくる毒によって、魚介類が死ぬことがある。
エ:えさが豊富になるため、魚介類が繁栄する。

(3)このとき、溶存酸素量の変化は①水面付近と②水底で大きく異なります。
それぞれ溶存酸素は増加するか、減少するか、理由とともに答えなさい(解答欄は1行ずつ)。

問4
下線部b『植物プランクトンの量は日射量の多い真夏ほど多いわけではなく、春や秋に多くなる』について、真夏に植物プランクトンの量が最大にならない理由を、上下方向の水温分布に注目して考え、説明しなさい(解答欄は2行)。

それでは、海に目を向けてみましょう。
日本一の干満差(干潮と満潮の潮位の差)をほこり、日本最大の干潟面積をもつ有明海は、多数の河川が流れこみ、豊かな生態系を育んでいます。潮汐潮流といって、潮の満ち引きにともなって湾内の流れができますが、それが頻繁に変わることで、よくかき回されているのです。

問5
有明海では近年、干潟が減少したり、奇形魚が生まれるなどの環境問題が深刻化しています。
漁獲量が減少したり、海苔の不作が続いていることの原因として、
明らかに誤っているものを選びなさい。
ア:有明海の海底下まで伸びた三井三池炭鉱が閉山し、
  坑道が崩落するなどして海底が沈降したから。
イ:諫早湾干拓事業における堤防の閉め切りで、有明海全体の潮汐潮流が変化したから。
ウ:下水道が発達し、また下水処理の技術も進んで、
 特にリンの除去が高い精度でできるようになったため、海に流れこむ水がきれいになったから。
エ:筑後川をはじめとする多数の河川で取水が広く行われるようになり、
   河川の流量が減少しているから。
オ:西日本は梅雨時期を中心に豪雨に襲われることが多く、
   そのたびに多量の土砂が有明海に流れこむから。

海洋深層水をうたった商品が多数売られています。
海洋深層水とは、水深200mよりも深部にある海水をさす言葉で、多くは水深500m~1000mぐらいの水深から採取しています。海水のままではしょっぱくて飲めませんので、脱塩処理といって食塩の成分を取り除いてから販売します。
海洋深層水の特徴として、陸や大気からの細菌や化学物質による汚染にさらされる機会がほとんどないため、大変きれいであることがあげられます。また、(c)栄養塩類を多量に含んでいます

問6
海洋における深層水は海水の何%を占めますか、最も近い値を選びなさい。
ア:35% イ:55% ウ:75% エ:95%

問7
下線部cについて、なぜ海洋深層水は栄養塩類を多く含むのか、説明しなさい(解答欄は2行)。

次に太平洋について考えてみましょう。
太平洋は赤道をまたぐ世界一大きな大洋です。北太平洋は右回り、南太平洋は左回りの海流が大きく循環するように流れており、それぞれの中央部には強い海流は流れていません。
赤道太平洋(太平洋の熱帯地域)では、西部(インドネシア沖)の方が東部(ペルー沖)と比べて水温が高くなっています。赤道付近では貿易風という東風が強く吹いていますが、西部ではこの貿易風によって東部の暖かい海水が西部吹き寄せられて水温が上昇し、東部では海洋の下層から冷たい海水が湧き上がって(湧昇流)、水温が低くなります。このd)湧昇流によってペルー沖は豊かな漁業になっています
魚類は変温動物であり、水温が高いほど活発に活動するため、生息しやすいと考えらえます。しかし、水温が低いところでも、その水温に合った魚類が生息しています、ペルー沖では、ふだんアンチョビー(カタクチイワシ)がたくさん採れます。

数年に一度、何らかの原因で貿易風が弱まることがあります。すると赤道太平洋東部の海面水温は平年より高くなります。これを( ① )(現象)といいます。( ① )が起きると、世界中の天候に影響を与えます。遠く離れた日本にも影響はおよび、一般に( ② )になります。

問8
北太平洋の中央部と北太平洋北部では、どちらがよりよい漁場となっているでしょうか。
理由とともに答えなさい(解答欄は2行)。

問9
下線部d『湧昇流によってペルー沖は豊かな漁業になっています』について、
低温の湧昇流が湧き上がることで豊かな漁場となる理由を説明しなさい(解答欄は2行)。

問10
文章中の( ① )に入る語を答えなさい。
また、( ② )に入る語として、次の中から選びなさい。
ア:猛暑・暖冬 イ:猛暑・厳冬 ウ:冷夏・暖冬 エ:冷夏・厳冬


@解説@
問1:ウ・エ
富栄養湖を選ぶ。
問題文に『栄養塩類のほとんどは、河川からもたらされます』とあるので、
多数の河川が流れ込む諏訪湖は選びやすい。
もう1つは水深の浅い霞ヶ浦。
『栄養塩類はむしろ水底へ流れ込む』とあるので、
水深の深い湖では栄養塩類の濃度は高くならず、富栄養化が起こりにくいと考えられる。
逆に、太陽光が水底まであたる浅い湖では富栄養となりやすい。

問2:ア
植物プランクトンは光合成をするので、水面付近によくいる。

問3(1):ウ
赤潮と黒潮以外、聞いたことがない(;’∀’)
緑潮もあるらしい(´-`).。oO
黒潮は日本海流の別名なので、仲間外れだろうと推測する。

(2)エ
赤潮は良くないというイメージがあれば、必然的にエになる。
リード文にも、『栄養塩類が多いからといって生物の種類が多いとは限りません』とある。
豊栄養というと、生産者である植物プランクトンが増殖して生態系が豊かになると思われるが、
ア~ウのような弊害(へいがい)を招いてしまうので、栄養塩類がありすぎるのも良くない。

(3)①:植物プランクトンが光合成するので、溶存酸素は増加する。
②:菌類や細菌類の分解活動で酸素が使われて、溶存酸素は減少する。
①水面付近では、問2から植物プランクトンがたくさんいる。
これが大増殖すれば、光合成で溶存酸素量は増える。
②富栄養湖では前問のアのように、結果的に水中の溶存酸素量が不足する。
①の水面付近で増加したのなら、②の水底では減少しなくてはならない。
リード文で水底では、”水底に沈んだプランクトンの死骸を菌類や細菌類が分解し、
このような環境では水中の溶存酸素量が大きく変化する”とあるので、
死骸の分解過程で多量の酸素が消費されると推測できる。

問4:水面付近の水温は上がるが、水底の水温は大きく変化しないので、
大きな対流は水面付近だけで行われ、水底に沈んでいる栄養塩類が浮上しにくいから。
*きちんと説明しようとすると文字数が足りない(´゚д゚`)
リード文に散らばっている情報を整理する。

『冬になると気温が下がるため、水面付近の水温は低下します。
しかし、水底の水温の季節による変化は、水面付近ほど大きくはありません』
日射が届きやすい水面付近では、夏は水温が上がり、冬は低くなる。
一方で、水底はそれほど変化しない。
ということは、”上下方向の水温分布に注目”すると、
夏の湖は水面付近が温かく、水底はそうでもない

1行目では『植物プランクトンは栄養塩類をえさとして増殖する』と書いてあり、
栄養塩類は水底に沈むことから、栄養塩類が水面付近まで浮上しない点を
水面分布につなげて書けばいい
それは対流
水の中ではグルグルと循環する対流で熱が伝わるが、
水面付近だけが温かいと、対流の範囲もそこだけに限定されてしまい、
水底からダイナミックに上昇する流れが置きにくくなる。
すると、栄養塩類が水面付近にいつ植物プランクトンに届かないので、
真夏に植物プランクトンの量が最大にならない。

読み進めていくと、湧昇流ゆうしょうりゅう)という言葉があり、
問9でも本問と似たようなことが問われている。

以下、駒場東邦中の1問目より。

図1はエ、図2はカになります。

図2では、BC間で対流が起こるからです。正解できたかな?(σ`・д・)σ

問5:ウ
有明海で漁獲量の減少や海苔の不足が続く原因を求める。
知識として知りようがないので、推測するしかない。
ありえそうなのは誤答の可能性が高い。
ア:もし崩落で海底が沈降すると、水深が深くなるので海苔に光が当たらなくなると思える。
  また、水底にいた分解者(菌類・細菌類)が死んでしまう。〇
イ:リード文では『有明海は潮汐潮流でよくかき回されている』とある。
  かき回されることで栄養塩類がすみずみにわたり、豊かな生態系を維持しているといえる。
  干拓事業から潮汐潮流が変化すると、水産資源にも悪い影響を与えそう。〇
ウ:富栄養化で湖の生態が破壊されるおそれがあるとのことなので、
  リンが下水道から湖に垂れ流されないようになれば、むしろ生態系に良い。×
エ:最初のリード文で、栄養塩類の多くは河川からもたらされるとあったので、
   取水が広く行われたら栄養塩類の不足を招きかねない。〇
オ:河川は上流から栄養分を運んでくるので、一見、正しいように思える。
  しかし、スーパーボランティアこと尾畠春夫さんもおっしゃられていたが、
  土砂は栄養分を含んでおらず、むしろ有害な菌を含むので植物にも害を与える。
  多量の土砂が有明海に流れこむのは悪いことだと思う。〇

問6:エ
去年の平成教育委員会でもやってました。
95%が深層水ということは、海のほとんどが深海なんですね。


問7:栄養塩類が水中に沈み、深層で植物プランクトンに消費されないから。
一番の理由は食べられないから。
水面付近は植物プランクトンが栄養塩類をえさとするので枯渇ぎみだが、
太陽の光があたらなくなる深層では植物プランクトンがいないので溜まっている。
解答例では、”栄養塩類はむしろ水底に流れ込む”とある部分を付け加えた。

問8:北太平洋北部では、強い海流により海水がよくかき混ぜられるので、
   深層の多分な栄養塩類が
海面付近に吹き上げるから良い漁場となる。
*今までのおさらい。
良い漁場となるには、生産者である植物プランクトンが繁殖しなければならない。
植物プランクトンは光合成のために光が届く水面付近にいるが、
栄養塩類は深層にたまっている。
そこで、良い漁場となるには深層の水と水面付近の水が混ざり合うことが条件となる。
リード文では、北太平洋中央部では強い海流が流れていない一方で、
北太平洋北部では右回りに大きく循環する海流が流れている。
ここから、流れが強い北太平洋北部の方が豊かな水産資源に恵まれると推測できる。

ちなみに、問4から、夏の暑い時期では温かい水面付近で対流が起こり、
低温を保つ水底から上昇する水流は起きないとあった。
北太平洋北部では外気により海水が冷えることで密度が大きくなり、
これが沈むことで上下方向の対流が起こりやすいといわれる。

寒流と暖流がぶつかる潮目でも、冷たい寒流が下に沈むことで渦が形成され、
海水が攪拌(かくはん;かきまわす)されて好漁場となる。

問9:深層に富む栄養塩類が湧昇流によって水面付近に供給され、
   植物プランクトンの繁殖を促すから。
*問8まで理解できたら、その繰り返し。
湧昇流にのって深層の栄養塩類が上昇して、植物プランクトンのえさが増える。
寒流のペルー海流が流れる太平洋南東部では、リード文の通り、
表層の海水が貿易風で西にさらわれることにより、
下から湧昇流で良漁場となり、アンチョビー(カタクチイワシ)が生産されている。
アンチョビーは魚粉(フィッシュミール)として肥料や飼料に使われる。
(高校地理でも習いますよ!)

問10①:エルニーニョ ②:ウ
知識でサクッといけるはず。

気象庁より。
貿易風が弱まるとインドネシア近海の暖水が西へ移動し、
雲ができるポイント(水蒸気の多いところ)も西に移動する。
雲の形成は低気圧であり、これが太平洋高気圧の勢力を弱めて、
エルニーニョ現象により日本は冷夏になりやすいといわれる。
冬は西高東低の気圧配置が弱まり、シベリアからの季節風も弱まり、
暖冬になるといわれる。
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