2017年度 横須賀高校・特色検査【問4・5】問題解説

<問4>
A君は、考古学や地質学等で年代を測定する方法に関してレポートをまとめた。
次はそのレポートの一部である。これを読んで、あとの各問いに答えなさい。
≪A君のレポート≫(一部)
自然界には、質量が異なる炭素12、炭素13、炭素14の3種類の炭素原子が存在する。
炭素14は、宇宙空間から地球に降り注ぐ宇宙線と呼ばれる
高エネルギー粒子によって大気中の窒素が変化し、生成される。
また、大気中の炭素14は二酸化炭素として存在し、光合成によって植物内に取り込まれる。
植物の種類によって炭素14を取り込む割合はそれほど変わらない。
このため植物組織内にはほぼ一定の割合で炭素14が存在し続ける。
植物が死滅すると光合成が停止するので、植物内に取り込まれていた炭素14の新たな供給は絶えれる。
植物内に取り込まれていた炭素14は放射線を出しながら窒素へと変化し、
次の図のように時間経過とともに減少する。

この図を見ると、植物内の炭素14の残存率は5730年後には50%に減少することがわかる。
そこからさらに5730年経過した11460年後には25%まで減少する。
この性質を利用することで、遺跡からの出土品が植物に類するものであれば、
その中の炭素14の量を測定し、その年代を特定することができる。
これを放射性炭素年代測定法という。
この測定方法は、大気中の炭素14の濃度が過去から現在までのどの時代においても一定であるという
仮定のもとに成立する。
しかし、(あ)近年の研究において、この仮定が厳密には成立しないことがわかっている
したがって、炭素14の残存量のみで測定した年代には誤差が含まれている。
この誤差を補正するためには、年代ごとの炭素14の残存量を知る必要がある。
その方法の一つとして、古い建物に使用されている木材や木化石(木の化石)の年輪を一つ数えあげて年代を特定し、その年輪の中の炭素14の量を測って年代を対応させる方法がある。
しかし、(い)ある年代を境に木材や木化石がほとんど手に入らなくなるため、
この方法では遡(さかのぼ)ることが可能な年代に限界がある。
そこで、それよりも古い年代の炭素14の残存量を知るために福井県の水月湖(すいげつこ)の湖底堆積物が利用されている。
水月湖は面積4.15km2、水深34mの湖で、湖底には約75mの厚さの堆積物がある。
湖底には季節ごとに異なる微生物や鉱物質が堆積するので、堆積物の種類によって一年ごとに
ほぼ同じようなパターンからなる堆積物の層(年縞;ねんこうと呼ばれる)ができる。
湖底堆積物の一部から採取された年縞の一年あたりの厚さは平均0.7mmで、
これらの年縞には葉化石(葉の化石)が含まれている。
年縞の層を一年分ずつ数えた結果、年縞中の葉化石に含まれる炭素14の残存量を測定することで、
年縞との対応からその葉が落ちた年代の炭素14の量を正確に知ることができる。
また、年縞には偏西風に乗って大陸から飛んでくる火山灰や黄砂が含まれているため、
火山灰から火山が噴火した年代、黄砂からは偏西風の風向きの変化などを知ることができる。
水月湖の年縞を用いて作成された炭素14による年代測定のデータは、
2013年9月に公表され、考古学や地質学における「世界標準のものさし」として活用されている。
さて、年縞の形成には地形や周辺環境が大きく及ぼしている。
次に挙げる主な要因が重なって、水月湖には良好は年縞が形成されることとなった。

〔良好な年縞が形成された主な要因〕
要因1 湖に流入する大きな河川がないこと
要因2 湖が高い山々に囲まれていること
要因3 湖底付近に大型の生物がいないこと
要因4 湖の付近に活断層があること

このような好要因がそろった湖は世界的にも珍しく、水月湖は「奇跡」の湖であると言われている。
◆(ア)
植物が死滅した時点の炭素14の残存量を100%としたとき、
炭素14の残存量が8分の1まで減少するのに要する時間は何年か。
A君のレポート中の図をもとにして答えなさい。

17190
*放射性炭素年代測定法の計算。
炭素14は5730年ごとに半減期を向かえ、残存量が50%と半分になる。
8分の1ということは、半分の半分の半分。つまり、半減期3回分。
5730×3=17190年

◆(イ)
下線部(あ)について、その理由として最も適するものを選びなさい。
1:海面の位置が現在の位置と異なり常に変化してきたため。
2:地球の公転周期が約365日であるため。
3:宇宙線の強度が変化するため。
4:植物種により光合成の効率が大きく変化しないため。

*『この仮定』とは、大気中の炭素14の濃度がどの時代でも一定であるという仮定
この仮定が厳密に成立しない理由について明記がされていないが、推測はできる。
レポートの1段落目に目を通すと・・・
・炭素14は宇宙空間から注がれる宇宙線で大気中の窒素が変化して生成される。
・炭素14は二酸化炭素として存在する。
・炭素14は光合成で植物内に取り込まれ、植物の種類によって取り込む割合はさほど変わらない
・炭素14は植物組織内で一定の割合で存在し続ける。
・植物が死滅すると、炭素14は放射線を出しながら窒素へと変化して減少する。
この循環のなかで炭素14が時代によって変化すると思われるのは、炭素14の成因である宇宙線の変化。宇宙線が強ければ炭素14が大量に、弱ければ少量となり、時代によって炭素14の濃度が変化してしまう。1・2はそれっぽい雰囲気があるが、文中に書かれていないので×。

◆(ウ)
下線部(い)について、「ある年代」の説明として最も適するものを選びなさい。
1:地球の平均気温が上昇し、氷河時代が終わった。
2:ホモ・サピエンスが出現した。
3:ヨーロッパでペストが流行し、人口が減少した。
4:エジプト文明、インダス文明、メソポタミア文明、中国文明が繁栄した。

*木材や木化石が入手できなくなる原因を求める。
地球規模で起こる出来事は1しかない。
人間の登場や文明の繁栄も、地球規模でいえばごく一部。

◆(エ)
A君のレポートの中の「良好な年縞が形成された主な要因」のうち、
特に要因1~3が組み合わさることで水月湖には世界に類を見ない良好な年縞が形成された。
次の文の空欄に5字以上10字以内で適する語句をいれ、要因1~3が組み合わさることで
良好な年縞が形成された理由を完成させなさい。

 湖底の堆積物とその付近の水が(       )ため。

混ざり合わなかった
*要因1~3より。大きな河川や大型の生物がないので水月湖に強い水流が起こらなかった。
高い山々に囲まれていたので、水月湖は閉鎖的な環境で波が立ちにくかった。
地層の年輪である年縞は一年あたり平均0.7mmほどの薄さで、
それらがミルフィーユにように連続して過去7万年分も堆積している。
ちょっとでも水の勢いが強かったら年縞がグチャグチャになって、
炭素14の残存量を知るためのモノサシとして機能を果たせなかった。

◆(オ)
A君のレポート中の〔良好な年縞が形成された主な要因〕のうち、
主に要因4によって水月湖は長年にわたって堆積物で埋まることなく、
湖底に堆積物が溜まり続けている。その理由として最も適するものを選びなさい。
1:湖底の下の岩盤の沈降が継続しているため。
2:湖底の下の岩盤の隆起が継続しているため。
3:湖底の下の岩盤が沈降も隆起もしないため。
4:湖底の下の岩盤から熱水が湧き出ているため。

*熱水が沸き出でいると、水が年縞をかき乱すため×。

<要因4:湖の付近に活断層があること>
岩盤が沈降するか、隆起するか、それとも現状維持か。
水月湖の年縞は一年あたりで平均0.7mm。
これが7万年分だと、0.7mm×70000=49mとなる。
50mも堆積すれば、普通は湖が埋まってしまう。
活断層で岩盤が沈降しつづけてことから堆積物で埋まらない湖となり、
湖底に堆積物が溜まり続けることができる

@湿性遷移@
湖沼はありのままだとやがて草原に変わる。
水底に生物の死骸や土砂などの堆積物が溜まるので、湖沼は埋まってしまうため。
これを湿性遷移という。

↑福井県のページより。手前の淀んでいる湖は三方湖で、その奥左手が水月湖。うしろは若狭湾。
海の近くなのに小高い山にうまく囲まれていますねw(゚ロ゚)w


<問5>
A君は、授業で空気の流れと圧力の関係について次の学習をした。
図1のように飛行機の翼の前方から空気が流れると、翼上面の流速(空気の流れの速さ)の方が
翼下面の流速よりも大きくなる。このときに流速が大きい翼の上面では空気の圧力が低くくなり、
流速が小さい翼の下面では空気の圧力が高くなる。これにより翼全体でには上向きの力がはたさき、飛行機を上昇させる力となる。これについてあとの各問いに答えなさい。

◆(ア)
この内容を授業で学習したA君は図2のような実験を行った。

2個のピンポン玉にそれぞれ同じ長さの糸をつけて6cmの間隔をあけて同じ高さになるように棒につるし、2個のピンポン玉の中間地点に対して先の曲がるストローを使って息を上から強く吹き込んだ。このときの空気の圧力の状態と、A君から見たピンポン玉の様子として最も適するものを選びなさい。


*流動力学に関する問題。
翼の例(図1)でいうと湾曲する翼の上面は流速が大きく、翼上面に働く空気の圧力は低くなる。
同様に、ピンポン玉の湾曲した内側の側面(吹きかけた息があたる面)に働く空気の圧力が低くなる。
ピンポン玉の外側の側面にかかる空気の圧力は変わらないため、ピンポン玉の内外で圧力差ができ、外側の面が内側にピンポン玉を押すことで、2つのピンポン玉は中心に近づいてくっつく。

2枚のティッシュを少しあいだを空けてフーッと吹いても、2枚のティッシュがくっつくよ(ฅ’ω’ฅ)​

@なぜ、翼の上面の流速は大きく、下面の流速は小さくなるのか@
空気が移動するというより、翼が移動する。
翼の前方にあった空気は翼によって上下に分断されるが、
翼が通過したあとは翼の後方で同時に合流する。
上面は湾曲しているので移動距離が長い。下面はそれよりも移動距離が短い。
速さ=移動距離÷時間
上面は距離が長く、時間は同じなので、速さは速くなる。

下面は距離が短く、時間は同じなので、速さは遅くなる。

なぜ、流速が大きくなると、翼上面にはたらく空気の圧力は小さくなるのか。
これはベルヌーイの定理という流体力学の話にはいる。大学で勉強してください(;´Д`)

ちなみに、2018年度の渋谷幕張中学の社会科で面白い問題が出ました。最後の(4)です。
日中の高温や標高の高さで飛行機が飛ばなくなる現象の説明問題です。

◆(イ)
次に、図3に示すように、風のない部屋の中でA君がお盆と空気を入れた風船を同時に同じ高さから静かに手を離したところ、お盆が風船よりも先に地面に落ちた(実験1)。また、お盆の上に風船を乗せて静かに手を離したところ、お盆と風船はほぼ同時に地面に落ちた(実験2)。

実験2について、A君は次のように考察した。

(i)
A君にはこの考察をもとに、縦横の長さ10cmの厚紙とろうそくを図4のように配置し、
厚紙の中心に息を強く吹きつけた(厚紙実験1)。息を吹き付けたときの空気の流れを上からみた様子と、厚紙の向こう側にあるろうそくの炎を横から見た様子の組み合わせとして最も適するものを選びなさい。ただし、1~6に描かれている矢印は。空気の流れを表している。



*A君の考察をもとに答える。
A君の考察を簡単に言うと、、
・お盆の下はお盆の落下でギュっと押さえつけられるので、空気の圧力が高くなる。
・お盆の上はお盆の落下で一瞬、空気が薄くなる(空気の圧力が低くなる)。
・お盆があった空間を埋めるように、周囲の空気がお盆の上に流れ込む。
→お盆の上の部分に回り込むように空気が流れるということ。

図4でいえば、厚紙で押し込められた空気が裏に回りこむのは4・5・6のいずれか。
空気がクルッと回るので、ロウソクの火は厚紙の裏面に向かう。

(ii)
次にA君は、縦横の長さが10cmの厚紙を折り曲げて図5のように配置し、
息を強く正面から吹きつけた(厚紙実験2)。
息を吹きつけたときの空気の流れを上から見た様子と、厚紙の向こう側にあるろうそくの炎を
横から見た様子の組み合わせとして最も適するものを選びなさい。
ただし、1~6に描かれている矢印は、空気の流れを表している。


*単純に考えよう。
折り曲げた厚紙の形は翼に似ている。
厚紙に衝突した空気は上下に二手に別れ、厚紙の後方で合流する。
ロウソクの火はそのまま後ろになびく。
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