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光にはさまざまなおもしろい性質がありますが、そのうちのいくつかを光の進み方とともにみてみましょう。現在では、光は空気中をおよそ秒速30万kmの速さで進むことが知られていますが、光に速さがあると考えられるようになったのは、17世紀になってからであるといわれています。当時、このような考えをもったガリレオは、遠く離れた二つの山頂に光源(光を出すもの)を持った人がそれぞれ立ち、片方の人が光を送って、それを確認したもう一方の人がすぐに光を送り出すことによって、光の速さを求めようとしました。しかし、この方法はうまくいきませんでした。その後も、科学者たちは光の速さを求めるのに苦労しました。
問1
ガリレオの方法で光の速さを求めるためには、何と何を測定する必要がありますか。
それぞれ適当な語を答えなさい。
また、それらのうち、測定がより困難なのはどちらか答えなさい。
ところで、17世紀後半にフェルマーは、光の進み方に「二点間を進む光は、考えられる経路のうち、進むのに時間が最も短い経路を通る」という決まりがあるのではないかと考えました。たとえば、①光源から出た光は真っ直ぐに進むという性質がありますが、フェルマーの考え方を用いれば、光がこのような性質をもつのは、真っ直ぐ進む方が遠回りして進むよりも、かかる時間が短いからであると説明できるのです。
問2
下線部①とは関係がない現象を選びなさい。
ア:点灯させた懐中電灯を壁に向けると、壁に円形の明るい領域ができた。
イ:晴れた日に運動場の地面に棒を立てると、棒の影が地面に映った。
ウ:遠くにある星でも、近くにある星よりも明るく見えるものがあった。
エ:カーテンのすき間から、太陽の光が差しこんでいる様子が見えた。
また、②光は鏡で反射します(はね返ります)が、このときの光の進み方もフェルマーの考え方で説明できます。図1において、光源Pから出て鏡で反射し、点Qを通る光について考えましょう。
鏡に対して点Qと対称な点をRとし、鏡上のある点をSとします。SQとSRの長さは等しいため、PSとSQを足した長さが最も短いのは、PSとSRを足した長さが最も短くなる、P、S、Rが一直線上に並ぶときだとわかります。光はかかる時間が最も短い経路に沿って進むため、図1で実際に光が反射する点は、直線PRと鏡が交わる点となるのです。
問3
図2において、光源Pから出て鏡で反射し、点Qを通った光は、鏡のどの点で反射しましたか。
図2のA~Gから選びなさい。
問4
下線部②について、現在では図3のように、発行ダイオード(LED)を用いた信号機が数多く見られるようになりました。一方、図4のように、電球を用いた信号機もあり、この信号機には電球の後方に光を反射する鏡が取り付けられています。図4の信号機に関して、次の(1)と(2)に答えなさい。
(1)
図4の信号機では、どのような目的で鏡を取り付けていると考えられますか。
(2)
LEDを用いた信号機にはフードがないタイプのものもありますが、交通安全上の観点から、電球を用いた図4の信号機には、フードが必ず取り付けられています。図4の信号機にフードを取り付けなかった場合、どのようなことが起こって、交通安全が確保されなくなる可能性がありますか。
空気中に置かれた光源から水に向かって光が出されると、光は水面で曲がって進むことがあります。また、水中での光の速さは、空気中よりも遅く(約3/4倍)になります。フェルマーの考え方を用いれば、これらの関係についても説明できます。
たとえば、図5の光源Pから出て点Qに到達する光について考えると、P→R→Qと真っすぐに進むよりも、水面上の点Sで曲がってP→S→Qと進む方が、点Qに到達するまでの時間が短くなります。よって、遠回りになっても、光は途中で曲がって進むことになるのです。
問5
図5において、光源Pから出た光が、仮にP→R→Qと進む場合に点Qに到達するまでにかかる時間と、P→S→Qと進む場合にかかる時間の比を、最も簡単な整数比で答えなさい。ただし、水中での光の速さは空気中の3/4倍であるとします。
問6
図6のように、水中に置かれた光源Pから出た光が水面上の点A、Bで曲がって進み、
それぞれ空気中にいる観測者の左目と右目に入りました。
観測者が片目で見たとき、観測者には目に入ってきた光が進む向きの反対側に光源があり、そこから光が真っ直ぐ進んで目に入ってきたように見えます。観測者が両目で見たとき、光源Pはどの位置にあるように見えますか。図に位置を求めるために必要な線をすべて描いた上で、その位置を小さな丸で示しなさい。
光はガラス中を進むときにも、空気中より速さが遅くなります。このため、空気中にガラスを置くと、光が途中で曲がって進むことがあります。
図7において、点線部分にある形のガラスが置かれており、点A~Cから同時に平行な光を出すと、これらの光は交わることなく、それぞれ点a~cに到達しました。このとき、フェルマーの考え方を用いれば、ガラスの表面での光の曲がり方をくわしく考えなくても、点線部分に置かれたガラスの形の特徴がわかります。なぜなら、「光が点Aから点aまで進むのにかかる時間は、実際の経路(図7)を通るほうが、それ以外の経路(たとえば、点Aと点aを結ぶ直線)を通るときよりも短くなる」と考えればよいからです。
問7
図7の点線部分に置かれたガラスの形や向きとして考えられるものをすべて選びなさい。
光が曲がって進む現象は、宇宙でも観測されることがあり、太陽などの重い星の近くを通過するときは、光が曲がることが知られています。この原因を、次のように単純化して考えてみましょう。
図8は、四隅が固定された軽いテーブルクロスが空中に張られた様子を真上から見たものです。このテーブルクロスの上に球を静かに置くと、図9のように、球の周辺部分のテーブルクロスが伸びてたわみました。ここで、置く球をさらに重いものに交換した後、アリがテーブルクロスの上を、図8の点Pから点Qに向かって、途中で速くなったり遅くなったりせずに、決まった速さで進む場合について考えます。
問8
テーブルクロスの上に置かれた球がとても重いとき、点Pを出発したアリは、図8に示した経路のうちのどれを通ったときに、点Qまで到達する時間が最も短くなると考えられますか。ア~エから選びなさい。
20世紀にアインシュタインは、テーブルクロスが重い球によって伸びてたわむように、重い星によって周囲の「時空」がゆがむのではないかと考えました。そして、重い星の近くで光の経路が曲がるのは、そのゆがみが原因であると説明したのです。
@解説@
問1:距離と時間、測定が困難なのは〔時間〕
〔速さ=距離÷時間〕
2つの山頂の距離と、秒速30万kmで進む光の到達時間。
どちらが測りにくいかは歴然。
問2:ウ
ア:光が真っ直ぐ進むから、懐中電灯を当てたところしか光らなかった。
イ:真っ直ぐ進むので、棒の後ろに光が回りこまず、影ができた。
エ:真っ直ぐ進むゆえに、カーテンの隙間(スリット)から光が差し込んだ。
問3:E
定番問題。
Qを反対側にもってきて、PQ’を結ぶ。
鏡との交点Eで反射する。
問4(1)
電球の後方に向かった光を前方に反射させ、信号機の光を強くするため。
*光源から光は全方位に放射されるので、
後ろにいった光を前に向かわせて少しでも明るくさせる。
↑アルミホイルを使って、蛍光灯の本数を減らす省エネ術。
けっこう明るくなるらしい。
(2)太陽光が信号機内の鏡に反射されると、
実際には光っていない信号機が光って見えるようになるから。
*前問からのつなぎで考える。
フードがないと日中に太陽の光が信号機の中に差し込んでくる。
すると、電球の背後にある鏡に反射してドライバーの目に届くおそれがあるので、
実際には光っていない信号機が光っているように見えて交通事故を招く。
光以外の理由としては、飛来物による破損防止、街路樹の葉っぱや積雪を除外するなど。
問5:P→R→Q:P→S→Q=100:99
仮に光を秒速1cmとする。
水中の速さは3/4倍に遅くなるので、時間は逆比で4/3倍かかる。
P→R→Q…25.2+33.6×4/3=70秒
P→S→Q…29.7+29.7×4/3=69.3秒
70:69.3=100:99
問6
定番の作図問題。
右目とB、左目とAの延長線上の交点に光源Pが見える。
今年度の渋谷幕張では、『目に入射する光の経路を1本ではなく2本調べた』
理由を問う設問が出題された。答えは、像の位置を特定するため。
コップの底にコインを置く。
ある角度からみたときにコインが見えなかったが、水を入れたら見えるようになった。
これはコインから発せられた光が屈折して目に届いたから。
問7:イ・オ・カ
ガラスも水中と同じく、光の速さが遅くなる。
フェルマーの考えによると光は常に最短距離を動くので、
A-a間では直線の上ルートより、屈折した下ルートの方が到達時間が短くなるはず。
ということは、上ルートより下ルートの方が光が遅くなるガラスの層が薄い。
このなかではイ・オ・カが中央に近づくにつれて、ガラスの幅がすぼまっている。
@屈折の進み方@
シーシーエス株式会社より。
光を幅のあるデモ隊に例えるとわかりやすい。
舗装道路は歩きやすいのでデモ隊の行進は速く、砂浜は歩きにくいので遅くなる。
今、デモ隊が舗装道路から斜めの方向から砂浜に入っていく。
すると、インコースにいる右側の人物が先に遅れる。
隊列を乱さないように動くので、右側の人物に合わせて行進すると上図のように曲がる。
これを知っていると、ある程度光の進む方向が予測できると思う。
問8:エ
光は最短距離を常に進むので、アリも最短で着くようにする。
P-Q間を歩くアリは速さが一定なので、歩く距離を短くすれば到達時間が短くなる。
球に近づくほどテーブルクロスがたわみ、深い谷ができて平地より距離が長くなる。
したがって、距離が最も短いルートはテーブルクロスのたわみが少ないエ。
@重力レンズ@
質量が大きい天体や銀河の周辺では、巨大な重力場が形成されて光の経路が曲がる。
名古屋大学より。地球と明るい星のあいだに大きな暗い星がある場合、
明るい星の光は地球に届かず、本来は見えないはずだが、
あいだにある暗い星の質量が大きいと、光が歪んで地球から見えるようになる。
質量を持たない光は重力に引き寄せられないが、時空の歪みで曲がってしまう。
このように光が曲がる現象を重力レンズという。
重力レンズは一般の顕微鏡のように、対象物を10~100倍ほど拡大させることがあるという。
ハッブル宇宙望遠鏡より、重力レンズで円形に歪む銀河。
アインシュタインのリングというらしい…。
宇宙のあちこちに重力レンズが潜んでおり、
我々が地球から見える宇宙の姿はレンズで歪められている可能性がある。
アインシュタインの一般相対性理論によると、
重力は物質の質量が空間を歪ませることで生まれるらしい。。
質量を莫大にすると空間の歪みが激しくなり、
光が脱出できないほどのくぼみができる。いわゆる、ブラックホール。
昨年、撮影に成功した、太陽の2兆倍の質量をもつ銀河の中心付近にたたずむブラックホール。
光を飲み込むブラックホールを直接撮影することはできないが、
明るい高温のガスを背景にその存在を確認した。
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