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2022年度 栄光学園中学過去問【理科】解説

問題PDF
 栄一君の家では、庭でいろいろな野菜を育てています。
庭では野菜の花も咲きます。栄一君は水やりなどの手伝いをしています。

問1
キュウリの花は何色ですか。次の中から正しいものを選びなさい。
ア:白 イ:黄 ウ:緑 エ:むらさき オ:赤

問2
大きくなった根を主に食べる野菜を、次の中からすべて選びなさい。
ア:ニンジン イ:ダイコン ウ:レンコン エ:ジャガイモ オ:サツマイモ


 あるとき、栄一君は水やりを2日間忘れてしまいました。この2日間、雨は降りませんでした。3日目に気がついて、あわてて様子を見に行くと、土の表面はかわいていて、野菜の葉がしおれていました。心配になった栄一君は水をたっぷりやりました。次の日、野菜を見ると、葉はしっかりしていて、いつもの元気を取りもどしていました。「植物ってすごいなぁ。どのくらいしおれると、元にもどらなくなるのだろう?」栄一君は疑問に思ったので、実験してみることにしました。

【実験1】
 お店で豆苗(とうみょう;エンドウマメの苗)を買ってきました。ふくろの中にたくさんの苗が入っていて根がからまっている(写真1)ので、根を傷つけないように1本ずつ取り外しました。苗には豆(種子)がついているのでそれを取り外し(写真2)、根をアルミ箔で包みました(写真3)。この状態で豆苗を置いておくと、豆苗はだんだんと乾燥していきます。午前8時にそれぞれの苗の重さを量り、以降4時間ごとに重さを量りました。栄一君がねている間の記録はありません。結果を表1に示し、表1をグラフにしたものを図1に示します。アルミ箔の重さは除いてあります。

問3
表1や図1からわかることをまとめた次の文章を読み、空らんに適当な数字や語句を入れなさい。

 豆苗Aの重さは、はじめの4時間で( 1 )g減少し、32時間後から36時間後までの4時間では( 2 )g減少している。豆苗A以外の苗も、はじめの4時間に比べて32時間後から36時間後までの4時間のほうが減少量は( 3 )くなった。


 4本の苗は実験開始時の重さがちがうので、重さの減り方のちがいについては、表1や図1からではわかりにくいです。そこで栄一君は、それぞれの苗の最初の重さを100として、重さの変化を比率で表すことにしました。それが表2です。また、表2の豆苗A、豆苗B、豆苗Cについてグラフにしたものが図2です。

問4
表2の空らん〔 あ 〕と〔 い 〕に入る数値を、
小数第一位を四捨五入して、整数で答えなさい。

問5
豆苗Dについてのグラフを、解答らんの図にかきいれなさい。
グラフの点は△で示しなさい。

問6
最初の重さを100としたときの豆苗の重さについて述べた、次の文について、
正しいものには〇、まちがっているものには×を書きなさい。

ア:実験開始直後と比べて、実験開始4時間後の重さが最も軽くなった豆苗も、実験開始48時間後の重さが最も軽くなった豆苗も、豆苗Cである。

イ:重さの変化を比率で表したとき、豆苗Aと豆苗Dでは、数値が100から70になるまでにかかった時間は、数値が70から40になるまでにかかった時間の半分以下である。

ウ:重さの変化を比率で表したとき、それぞれの時刻の値が最も大きい豆苗と値が最も小さい豆苗を比べると、実験開始4時間後よりも8時間後のほうが値の差が大きくなっている。しかし、24時間後を過ぎると差は小さくなり始め、48時間後には8時間後よりも差は小さくなっている。


 栄一君は、根をアルミ箔で包まなかった場合にどうなるかも調べました。表3は、根をアルミ箔で包まずに乾燥させた豆苗Eの重さの変化です。最初の重さを100として、重さの変化を比率で表しています。

問7
豆苗A~豆苗Dの結果と豆苗Eの結果を比べて、根をアルミ箔で包まなかった場合、どのようなことが起こったのか、あなたの考えを説明しなさい。なお、豆苗は根を包む以外は同じ環境で乾燥させたとします。

 下の写真4は乾燥を始めた直後の苗のようす、
写真5、写真6は乾燥を始めてから24時間後と48時間後の苗のようすです。


 豆苗が乾燥していく様子を観察できたので、次に栄一君は、乾燥した豆苗に水をあたえて、しおれた豆苗の重さがどの程度もどるのか、重さを量ってその変化を調べようと思いました。
 栄一君は教科書を参考にして、水を入れた三角フラスコに乾燥させた苗を立てて水を吸わせようとしましたが、問題が生じてうまくいきませんでした。そこで栄一君は水の吸わせ方を工夫して、48時間乾燥させた豆苗にも、根から水を吸わせることに成功しました。

問8
下線部の「問題」とはどんなことだと思いますか。写真4~6を参考にして答えなさい。また、この問題を解決して根から水を吸わせるために、あなたならどのような工夫をするか説明しなさい。三角フラスコ以外の道具を使ってもかまいません。必要なら図をかいてもよいです。


【実験2】
 実験1と同じように1本ずつ取り外した苗を、たくさん用意しました。すべての苗の豆(種子)を取り外し、重さを量ったあと根をアルミ箔で包んで、しばらく乾燥させました。乾燥時間は豆苗ごとに変えました。乾燥を終えた豆苗は、アルミ箔を外して再度重さを量った後、根を水につけて、これ以上重さが増えなくなるまで十分に吸水させ、重さを量りました。結果の一部を表4に示します。

 表4には10本分の値しか示されていませんが、実際には90本ほどの苗を量りました。すべての苗の結果を、横軸に乾燥後の重さを最初の重さで割った値、縦軸に吸水後の重さを乾燥後の重さで割った値をとって図に表したものが図3です。

問9
図3中の矢印で示した値で、表4の豆苗①~⑩のうちのどれかです。
どの豆苗のものか、番号で答えなさい。

問10
図3について、乾燥後に吸水して完全に最初の重さにもどった場合のグラフはどのような曲線になりますか。解答らんの図にかきいれなさい。

 栄一君がこの実験を始めたきっかけは、水やりを忘れて野菜をしおれさせてしまったことでした。あわてて水をあげると、次の日には葉がしっかりして元気を取りもどしていました。植物の生命力におどろくとともに、いったいどこまでたえられるのかという疑問がわいたのでした。もう一日水やりを忘れていたら枯れてしまったのかもしれません。
 植物がしおれるのは、乾燥して水分が減ったからです。しおれてしまっても再び水をやれば、水を吸って元通りに回復することもあるのです。乾燥させすぎれば、元にはもどらないこともあります。

問11
栄一君の「どのくらい乾燥させると元にもどらなくなるのか、どれくらいまでなら元にもどるのか。」という疑問に対して、図3と問10でかきいれた曲線を参考にして答えなさい。


@解説@
問1:イ

花ざかりの森より。キュウリの花は黄色でした。

問2:ア・イ・オ
中学受験ならではの問題。
根を食べる野菜⇒ニンジン・ダイコン・サツマイモ
ジャガイモとレンコンは茎(地下茎)。
レンコンは漢字で『蓮根』(蓮ハスの根)と書くのに茎(#-∀-)

問3(1)0.48(2)0.04(3)小さ
(1)表1より、1.45-0.97=0.48g
(2)0.29-0.25=0.04g
(3)0~4時間後は0.48g減少、32~36時間後は0.04g減少。
ほかの豆苗も前半より後半の減少量が小さくなっている。

問4:あ…60、い…25
表1の数値を用いる。
豆苗Dは0時間のときは1.12g、12時間後は0.67g、36時間後は0.28g。
百分率に直す。
あ…0.67÷1.12=0.598…≒60(%)
い…0.28÷1.12=0.25=25(%)

問5:

表2(豆苗D)の数値を△でプロットしていく。
他と同じように折れ線で結べばいい。

問6:ア…×、イ…〇、ウ…〇
ア:4時間後も48時間後も最も軽いのはA。×
イ:時間ロスを食い止めるため、大雑把かつ的確に判断したい。

100~70の時間は、70~40の時間の半分以下。〇
ウ:最大値-最小値の差を求める。
4時間後⇒79(D)-67(A)=12
8時間後⇒66(D)-48(A)=18
24時間後⇒43(D)-28(A)=15
48時間後⇒21(D)-14(A)=7
4時間後よりも8時間後の方が差は大きく、24時間以降は差が小さくなっている。〇

問7:アルミ箔を包んだ豆苗より重さが減る。
これは根の表面積が大きいため、豆苗から水分が蒸発しやすかったからだと思われる。

プロットしてみると、傾向は似ているが全体的にA~Dより重さが減っている。
葉と茎だけでなく、根からの蒸発が追加されたので軽くなった。
根毛のある根は空気と触れる表面積が広く、その分、体外への蒸発が促進されたと思われる。

問8:問題点―しおれた豆苗が水に浸かってしまい、空気に触れにくくなる。
解決方法―水でぬらした脱脂綿で根を包む。

書きやすかったと思う。
しなびてヘタっている豆苗は茎がか細く、体を支えきれていない。
そういうときは塗らした脱脂綿でやさしく根を包み込む。

問9:⑦

*〔乾燥後〕÷〔最初〕=約0.24
〔最初〕の4分の1弱が〔乾燥後〕に相当するものをしぼると⑥・⑦が怪しい。
〔吸水後〕÷〔乾燥後〕=約2.3
〔乾燥後〕を2.3倍すると〔吸水後〕に相当するものは⑦。

問10:下図

通過すべき点をで示したが、実際の解答には不要。

実験結果は使わない。
横軸の0.1は〔最初〕から0.1倍した値なので、10倍すれば元に戻る。しかし、縦軸に10はない。
横軸が0.2のときは、2/10=1/5の逆数である5倍で元に戻る→(0.2、5)を通過
横軸が0.3のときは、3/10の逆数である10/3倍で元に戻る→(0.3、3.33…)を通過
以下、(0.4、2.5)(0.5、2)(0.6、1.66…)(0.7、1.42…)を通過するようにプロットし、
これらをなめらかな曲線でつなぐ。

問11:最初の重さのおよそ40%を下回ると元に戻らない個体が多くなる。
植物への水の供給をストップさせてから12時間以内に水やりをすれば元に戻る可能性は高い。

青線から離れている豆苗は乾燥させすぎた結果、おそらく死んだ細胞ができて元に戻れなかった。
横軸の0.4あたりからポツポツ発生するので、最初の重さの約40%に相当する重さ、
言い換えれば、体全体の60%ほどの重さに相当する水(
+α)を失ってもギリギリ耐えうる。

大塚製薬
人間は成人の場合、体重の約60%が水分。
うえのページによると、失われる水が2%でのどの渇きを覚え、5%で頭痛、
8~10%で痙攣、20%以上で死亡となっている。
0.6×0.2=0.12、つまり、体重の12%に相当する重さの水分を失うと死にいたる。
60%の喪失でも完全回復しうる植物の生命力がいかにたくましいかがわかる
(ちなみに、血液は人間の体重の1/13、全血液量の1/3以上を失うと生命の危機に瀕し、
1/2以上を失うと心停止にいたるようなので、1/13×1/2=1/26
つまり、体重の26分の1(3.84%)に相当する重さの血液を失うと心停止)

答案は図3と問10の曲線を参考にして答えるが、
表2で豆苗A~Dが40を超えているラインが実験開始12時間後のところなので、
12時間以内に水をやれば元に戻ると書いても大丈夫だと思う。

もっとも、どれほどの乾燥に耐えうるかは植物の種によって再生能力が異なり、
同種の植物であってもなかなか数値で断定することは難しいと思われる。
あくまで豆苗の場合の”目安”と考えておく。
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