2020年度 立教新座中学入試問題【理科】大問2解説

父:健児、またポケモンカードを見ているのか。そのキャラクターはウツボット?

健児:ウツボット知っているの?
父:たぶん実在する食虫植物のaウツボカズラを参考にしているんだ。
 形がよく似ているぞ。
健児:ウツボットはウツドンが進化したものなんだ。
父:進化かぁ。ポケモンの進化は、生物学でいう進化とちょっと違うんだぞ。
健児:えっ、どうちがうの?
父:例えば、ポケモンではゲーム中にいきなり別な姿になることを進化というね。
 でも、進化はそんな一瞬では起こらないんだよ。例えばフシギダネがフシギソウ、
 フシギバナに変わるのは、花が咲くだけだから開花というんだ。

健児:じゃあ、キャタピーがトランセル、バタフリーに変わるのは?
  
父:それは( ① )だろ。モンシロチョウなどの昆虫で見られる変化だよ。
健児:ツチニンがテッカニンに変わるのは?

 
父:それは( ② )だろ。cセミの幼虫の背中が割れて、成虫が出てきただけだ。
健児:それじゃ、お父さんのいう進化って?
父:何万年、何十万年という長い年月の間にからだの設計図が少しずつ変わって
 新しい種類の生物が誕生することを進化というんだ。
健児:ポケモンではその瞬間で変わっちゃうもんね。
父:そうだよ。だから進化とはいわないんだ。
健児:新しい生物の誕生かぁ。ところで、からだの設計図って何?
父:DNAという物質からできているんだよ。
健児:デオキシスのこと?

 デオキシスは宇宙ウイルスのDNAが変異して生まれたポケモンなんだよ。
父:そうだね、デオキシスのうでの形はDNAによく似てるね。
 DNAは2本のひもがからまった構造をしていて、
 それぞれのひもには4種類の塩基というものがたくさん並んでいるんだよ。
 それぞれの塩基はA、T、G、Cと表し、からまりをほどいて描くとこんな感じだ。


 片方のひもの塩基の並びをみると左からTCTAGCTCACACCとなっているね。
 この塩基の並び順が設計図になるんだ。
健児:たった4種類の塩基で設計図がかかれているなんてすごいね。
父:DNAには他にも特徴があるのだけど、2本のひもで向かい合った塩基の関係がわかるかい?
健児:あれ、もしかして、向かい合う塩基の種類が決まっている?
父:そうだ。AはTと、CはGと向かい合っているんだ。

(1)
下線部aについて、ウツボカヅラの特徴として適切なものを選びなさい。
ア:つぼ状の構造に昆虫が落ちると、底から登れなくなり、外に出られなくなる。
イ:つぼ状の構造に昆虫が落ちると、すぐにふたがしまり、外に出られなくなる。
ウ:つぼ状の構造の入口に粘り気のある毛があり、それに昆虫がくっつくと動けなくなる。
エ:つぼ状の構造の底にはとげがたくさんあり、昆虫はとげに刺さると意識を失ってしまう。

(2)
会話文中の①、②に入る適切な語句を、それぞれ漢字2字で答えなさい。

(3)
下線部bについて、モンシロチョウと同じような①が起こる昆虫を、
次のなかからすべて選びなさい。
ア:ツクツクボウシ イ:ミツバチ ウ:トノサマバッタ エ:オニヤンマ オ:カブトムシ

(4)
下線部cについて、セミの特徴として適切なものを選びなさい。
ア:オスメスの違いは成虫ではわからない。 イ:鳴き声は胸からだしている
ウ:幼虫のころは根から樹液を吸っている エ:はねは2枚しかない

(5)
ある生物のDNA中のA、T、G、Cの割合を調べたところ、Aの割合は20%でした。
T、C、Gの割合はそれぞれ何%ですか。

(6)
DNA中の塩基が何ヵ所か違うかによって、生物の種類として近い仲間か遠い仲間かがわかります。お父さんはポケモンカードを使って、健児君にクイズを出しました。次のお父さんのクイズに答えなさい。

@クイズ@

次の4つのすがたが似ているポケモンのDNAを調べると、
DNA中の4ヵ所(①~④)に表のような違いがありました。

これらのポケモンをクリムガンに近い仲間の順に並べたものとして適切なものを選びなさい。
ア:ボーマンダ・カイリュー・リザードン
イ:ボーマンダ・リザードン・カイリュー
ウ:カイリュー・リザードン・ボーマンダ
エ:カイリュー・ボーマンダ・リザードン
オ:リザードン・ボーマンダ・カイリュー
カ:リザードン・カイリュー・ボーマンダ


@解説@
2020年の理科入試でプチ話題になったポケモン問題(*’ω’*)
(1)ア
まさかウツボカズラが聞かれるとは(;^ω^)
あま~い香りで虫をおびき寄せ、つぼの底にある消化液でジワジワと溶かして吸収する。
つぼの内壁は滑りやすく、一度落ちると容易には出られない。
ウツボカズラのフタは動かない!
フタの裏面から蜜を分泌したり、雨水が消化液にかからないようにしている。
そういえば、テレビでこいつの消化液を飲んでた人がいたよ(
´Д`||)

イ:ハエトリグサ

感覚毛に2度モノが触れると、約0.5秒でパクっと葉が閉じる。
大きなエネルギーを消費する動作なので、
面白がって何度も指でいじって遊ぶとハエトリグサがへばるので注意(´・д・`)

ウ:モウセンゴケ

触手がハエめがけて、ネットリとまとわりついてくる(( ;゚Д゚))
逃がさんぞという固い意思を感じる。。
食虫植物は体づくりに必要なリンや窒素などを根から十分に得られない不毛な土地に自生し、
不足分を昆虫の捕食から補っている。

(2)①変態 ②羽化
①フシギダネ→フシギソウ→フシギバナが”開花“。
これと似た感じの理科用語を埋める。

幼虫→蛹(さなぎ)→成虫
蛹を経ると完全変態だが、漢字2字なので変態となる。
変態とは、形を変えること。
②幼虫の背中が割れて成虫がでてくる→羽化
“成虫が現れる”ので、脱皮より羽化の方が適当と思われる。
ちなみに、卵がかえるのは孵化(ふか)。

(3)イ・オ
モンシロチョウと同じ、完全変態する昆虫を選ぶ。
すべて式だが中学受験では頻出なので正解したいところ。
不完全変態の代表例として、セミ・トンボ・バッタ・カマキリ・ゴキブリ
ツクツクボウシはセミ科、オニヤンマはトンボ目オニヤンマ科。

(4)ウ
セミの特徴について。代表的な昆虫ではあるが深く狙われた(;^ω^)
ア:わかりやすいのは鳴き声。鳴くのは求愛行為でオスしか鳴かない
イ:体をひっくり返すと、オスには腹弁という音を鳴らす弁がある。

飛行機とフルートより。画像は小さくしてあります(´・_・`)

 腹弁なので、胸ではなく腹にある。
 足や羽は胸から生えるが、音源は胸ではない!!(`ω´)
ウ:セミの幼虫は地中で暮らし、生涯で最も長い時間を過ごす。
 幼虫の食事は根から吸う樹液
エ:セミの羽は4枚。羽が2枚なのはハエ・蚊・アブなど。

(5)T…20%、C…30%、G…30%
塩基配列は高校生物で習うよ(^^;
経験したことのない内容を現場思考で乗り越える。
DNAは4種類の塩基というものの組み合わせからなるらしい。
塩基はA・T・G・Cの4種類あり、AはT、CはGと向き合う。
ある生物に含まれるDNAのうち、Aが20%だった。
AはTと向き合うので、AとTの数は同じ→T20%
残りは、100-20×2=60%
CとGは向き合うので、CとGの数も同じ→C30%、G30%

(6)エ
『塩基の並び順が設計図になる』ので、クリムガンと塩基が共通するほど近縁種
ボーマンダは④だけ同じ。カイリューは①②④が同じ。リザードンはすべて違う。
よって、カイリュー・ボーマンダ・リザードンの順。

@遺伝子の正体@
混乱しやすい場所なので整理します。
遺伝の法則で著名なメンデルは、遺伝子の伝わり方に規則性があることを発見するが、
遺伝子そのものが何なのかはその後の研究によって明らかにされた。

生物は細胞から構成される。すべての細胞には体の設計図となる遺伝子がある。
遺伝子は遺伝”情報”で、DNA(デオキシリボ核酸)という物質に刻まれる
多くの生物は、細胞のなかの
細胞核に複数の染色体がある。
染色体はXのような形状だが、細かくみると1本のヒモのようなものがウネウネと折り畳まれ、
さらに細かくみると、ヒモはヒストンとよばれるタンパク質に巻きつけられており、
1本のヒモは2本の鎖が螺旋(らせん)状にねじれている。この二重螺旋構造がDNA
1950年代にワトソンとクリックによって発見された。

受験のミカタより多少加筆。二重螺旋構造をさらにピックアップ。
それぞれの青い枠はDNAの構成要素でヌクレオチドという。
ヌクレオチドはリン酸(P)、糖(デオキシリボース;S)と4種類の塩基ATGCからなる。
塩基が糖とくっつき、糖はリンを通して他の糖とつながり、
このようなヌクレオチドの結合体をヌクレオチド鎖(さ)という。
塩基の名はA(アデニン)・T(チミン)・G(グアニン)・C(シトシン)
この塩基配列(並び順)が遺伝子の正体
AとT、GとCがつながる性質を相補性といい、
相補的な結合をした2つの塩基を塩基対(えんきつい)という。
塩基の相補性により、一方の塩基配列がわかれば他方の塩基配列が確定するので、
1つの2本鎖から2つの2本鎖を複製することが容易になる。(DNAの半保存的複製
また、AとT、GとCの個数が1:1になり(等しくなり)、シャルガフの法則とよばれる。
専門用語が大量に登場したが、どのみち高校生物で覚えるので、
中学受験を終えたら余力のある人は少しつめこんでいこう。

@ヒトゲノム計画@
人体を構成するプログラム、遺伝子の解析を試みたヒトゲノム計画。どの遺伝子がどのような役割を果たしているのか、地道に調べて特定していく。1990年代から研究が始められ、2003年に終了。そんな短期間で終われるものなのか不思議に思うが、IT技術の向上や民間企業の参画もあり、予定よりも早めに完了したそうだ。
発見されたヒトの遺伝子の数は22000個ほど(けっこう少ない!)。ヒトゲノムの解読により、遺伝病やガンの診断・治療、個々人の体質にあわせたオーダーメイド医療の実現が見込まれる。

一方で、ヒトゲノムのデータベース化から遺伝レベルで個人の特定が可能となると、プライバシー権との兼ね合いで遺伝情報の慎重な取り扱いが求められるようになる。また、”ある遺伝子を持つ者と持たざる者”の間で人の優劣が発生し、優生学的な遺伝差別が起こる危険がある。(そもそも遺伝学自体に多かれ少なかれ優生学的な差異を気にする考えが内在するのかもしれないが)
さらに、ゲノム編集は生殖医療技術と融合して、「高身長で男前な知能指数が高い子供が欲しい」と、親が望む理想の赤ちゃんをつくるオーダーメイド・ベビーの促進につながる指摘もある。技術的に可能となった人の欲望は生命倫理と強く衝突する。難しい問題ですな(`ω´)
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