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2022年度 海陽中等教育学校・特別給費過去問【理科】大問1解説

問題PDF
感染症について、次の文章を読み、あとの問いに答えなさい。

 2020年1月頃から世界中で新型コロナウイルスが流行し、多くの死者を出しています。人類と感染症とのたたかいは古く、エジプトでは天然痘に感染した跡のあるミイラが出土しています。また、14世紀の中世ヨーロッパではペストによって人口の約1/3が死亡したと言われ、20世紀に入ってもスペイン風邪によって約4000万人が死亡しました。最近の日本でも昭和20年代までは不治の病として結核が流行していましたが、抗生物質の発見、実用化によって死亡者数、死亡率は大きく減少しました。抗生物質とは、他の微生物が増えるのを防ぐ物質のことであり、微生物が生産しています。最初に発見された抗生物質であるペニシリンは細胞壁が作られるのをさまたげる効果があります。細胞壁とは、細菌や植物がもつ細胞膜の外側にあるものです。細菌の細胞壁の合成はいくつかの段階に分かれていますが、ペニシリンはその最後の段階をさまたげ、最終的には細菌が死んでしまいます。

問1
新型コロナウイルスなどのウイルスと、結核菌やペスト菌などの細菌類の大きさについて
正しいものを選びなさい。
ア:ウイルスと細菌は、ほぼ同じ大きさ
イ:ウイルスの方が細菌よりも10倍ほど大きい
ウ:ウイルスの方が細菌よりも500倍ほど大きい
エ:細菌の方がウイルスよりも10倍ほど大きい
オ:細菌の方がウイルスよりも500倍ほど大きい

問2
ペニシリンには人に対する副作用がほとんどありません。
その理由を答えなさい。

問3
ペニシリンで死んでしまう菌(野生型菌)とは異なり、ペニシリンによって死なないペニシリン耐性菌(耐性菌)が発見されました。耐性菌はペニシリンを異なる物質に変化させているようでした。このことを確認するためには、どのような結果が得られればよいでしょうか。次の文中の空らんにあてはまる言葉の組み合わせとして正しいものを選びなさい。

 菌を育てるための2つの培地(容器)にペニシリンを入れ、一方に野生型菌、もう一方に耐性菌を入れた。ある程度の時間がたった後に2つの培地の( ① )を比較すると、野生型菌よりもペニシリン耐性菌の方が( ② )なっているはずである。

ア:①培地に残っているペニシリンの量 ②多く
イ:①培地に残っているペニシリンの量 ②少なく
ウ:①菌体内に取り込まれたペニシリンの量 ②多く
エ:①菌体内に取り込まれたペニシリンの量 ②少なく
オ:①菌の数 ②多く
カ:①菌の数 ②少なく


 ペニシリンは飲み薬ですが、すべての薬が飲みこんで吸収され、細菌に感染した組織に届くとは限りません。通常の飲み薬の場合、飲みこんだ後は腸で吸収され、血液の中に入り、それぞれの組織に運ばれます。図1は薬A~Cを飲みこんだ後の、腸内での濃度、血液中での濃度、組織内での濃度の変化を表したものです。薬A~Cは役目を終えた後はすべて体外へ排出、または体内で分解されるものとします。

問4
薬A~Cはどういった目的で用いられる薬であると考えられますか。
次の中からそれぞれ選びなさい。
ア:出血のある手術をする際に細菌感染を予防する。
イ:組織内に長期間留まることで、細菌感染を予防する。
ウ:細菌感染した組織へ移動し、細菌を死なせる。
エ:腸内に存在する細菌を死なせる。

問5
体内に最も取りこまれにくいのは、薬A~Cのどれですか、記号で答えなさい。
また、そのように考えた理由を答えなさい。

問6
腸から体内への取りこまれにくい薬を取りこませる方法の一つとして、血管への注射があります。ほとんどの場合、注射する血管は静脈です。静脈のほうが動脈と比べて都合がいいからですが、その理由を静脈の特徴に注目して1つ答えなさい。


 現在、新型コロナウイルスの流行で、抗体検査やPCR検査など検査に関する言葉を耳にする機会が増え、医療に関わりのない多くの人も使う用語となりました。

問7
PCR検査と抗体検査の説明として正しい文の組み合わせを選びなさい。
①PCR検査で陽性の場合、現在新型コロナウイルスに感染している可能性がある。
②PCR検査では、過去に新型コロナウイルスに感染していたかがわかる。
③抗体検査で陽性の場合、現在新型コロナウイルスに感染している可能性がある。
④抗体検査では、過去に新型コロナウイルスに感染していたかがわかる。
⑤PCR検査で陰性でも抗体検査で陽性になる場合がある。
⑥PCR検査で陽性でも抗体検査で陰性になる場合がある。
⑦PCR検査と抗体検査で違う結果になることはほとんどない。

ア:①④⑤ イ:②③⑤ ウ:②③⑦ エ:①④⑤⑥ オ:②③⑤⑥ カ:①②④⑦
キ:①②④⑤⑥ ク:①③④⑤⑥ ケ:②③④⑤⑥


 PCR検査で感染していると判定されたら陽性、感染していないと判定されたら陰性という言葉で表されます。また、本当は感染しているのに検査では陰性と判定された場合を偽陰性、本当は感染していないのに検査では陽性と判定された場合は偽陽性と表現します。つまり、検査は正確性が完全ではありません。感染した人を正しく陽性と判定できる割合を感度、感染していない人を正しく陰性と判定できる割合を特異度といいます。表1はそれらをまとめたものです。

問8
人口100万人の都市で、全員がPCR検査を受けたとします。PCR検査の精度について、感度が70%、特異度が99.9%、新型コロナウイルスに感染している人の割合を0.1%として、(1)~(4)の問いに答えなさい。
(1)
この都市に住む100万人のなかで、新型コロナウイルスに感染していない人数を求めなさい。

(2)
新型コロナウイルス感染者の中で陰性と判定された人(偽陰性者)の人数を求めなさい。

(3)
新型コロナウイルスに感染していないのに検査結果で陽性と判定された人(偽陽性)の人数を求めなさい。

(4)
検査結果が陽性となった人の中で、本当に感染している人は何%ですか。
小数第2位を四捨五入し、小数第1位まで答えなさい。


@解説@
問1:オ?(エ?
*しょっぱなからクセがある。
なんとなく細菌の方がウイルスより大きいと察せるんじゃないかな?

大幸薬品より。1mmの1000分の1が1μm(マイクロメートル)。
1μmの1000分の1が1nm(ナノメートル)。
これによると、ウイルスの大きさは細菌の20分の1、強いて50分の1ほどなのですが…、
他も調べてみたら50分の1~100分の1が多く、10とも500ともとれない数値でバラけていた(;´・ω・)
10分の1だとウイルスが大きすぎるし、500分の1だと小さすぎるし悩みどころ。。
細菌やウイルスの種類によると思うが、10倍ではない(と思う)のでオにしました。
ウイルスは電子顕微鏡を使わないと視認できない。

@ウイルスは生物でない?@
細菌は細菌類でれっきとした生物だが、ウイルスはそうとは言えない。
生物の定義には様々な見解があるようだが、異論のない範囲では、
①細胞で構成されている
②代謝(ATPという物質でエネルギーのやり取りをして化学反応)を行う
③複製行為をする

ウイルスは自己のDNAを持ち、他の生物に寄生して増殖する。
しかし、細胞で構成されておらず、代謝もしない。
ウイルスは生物のようで生物ではない、でも生物っぽい…という曖昧な立ち位置にいる

■追記■

天下の農林水産省では10倍でした。エ説濃厚に。。
数値の並びをせめて50倍or5000倍くらいにして欲しかった。

■追記2■
現役の外科医の方からお問い合わせを頂きました。地球の大きさをヒトとすると、男の子が細菌で、サッカーボールがウイルスの大きさになぞらえると言われているようです。
地球:男の子:サッカーボール=ヒト:細菌(バクテリア):ウイルス
男の子の10分の1がサッカーボールではないので、オが正答ですね。

問2:人の細胞には細胞壁が無いから。
読解問題。
世界初の抗生物質であるペニシリンは細胞壁が作られるのをさまたげる効果がある。
細胞壁とは、細菌や植物がもつ細胞膜の外側にあるもの。
ということは、ヒトの細胞には細胞壁がない。

個別指導塾マナビバより、植物細胞と動物細胞。
昨年の千葉県公立高校入試の1問目で細胞壁が出題されました。
細胞壁の成分は主にセルロースで固い。
骨格のない植物は細胞壁を備えた細胞を積み上げて体を支えている。

草食動物はセルロースを分解する微生物を体内に宿しているので、草を消化できる。
ちなみに、ペニシリンはフレミングがアオカビ(チーズ作りに利用される菌類)から発見した。

問3:イ
耐性菌はペニシリンを別の物質に変化させているという。
ペニシリン耐性菌の方が『培地に残っているペニシリンの量は少なく』、
『菌体内に取り込まれたペニシリンの量は少なく』『菌の数は多い』。
あとはどれが一番確認しやすいか
菌はサイズが小さいので、体内のぺ二シリンの量や菌の数は測定しづらい。
となると、培地に残っているペニシリンの量が最も把握しやすい。

@薬剤感受性試験@
培地に残ったペニシリンの量をどうやって測定するかですが、
それっぽい検査方法を発見したので紹介します。
薬剤感受性試験という抗菌薬の有効性を図るテストです。

東京都芝浦食肉衛生検査所より。
治療目的で抗菌性物質を使用した牛や豚は、法令で定められた期間(薬物が体外に排出される期間)を経ないと出荷できないようで、当該物質が体内に残っていないかを検出する事例です。

はじめに家畜の肝臓、腎臓、筋肉の一部を採取・粉砕して、その液体をろ過して得た抽出液をディスクと呼ばれる乾燥ろ紙にしみ込ませます。つづいて、寒天培地に細菌を培養します。細菌が増殖した部分は上写真のように白く濁ります。ディスクを真ん中に置きます。もし、抽出液に抗生物質が残っていると、ディスクの周辺にある細菌が死んで透明な円ができます。これを阻止円といい、この阻止円が大きいと抗生物質が多いことになります。阻止円の直径を測定すれば抗生物質のおよその量を知ることができます。写真では筋肉に抗生物質が多く含まれています。
本問は先にペニシリン、後から細菌を入れていますが、同じことができるように思えます。

問4:A—ウ、B—ア、C—エ
薬の効用を当てるという…。

わかりやすいものから判定していく。
薬Cは腸内で濃度が高まる時間が12時間ほど継続している。
腸で効果を発揮するから、「腸内に存在する細菌を死なせる」。

組織で活性化する薬Aは、濃度が高まるのが12時間、最大濃度が4時間。
イとウですごい悩む(;`ω´)
感染予防としては効果の時間が短いように思えるので殺菌。

薬Bは血液中で活性化している。血液に関係するのは「出血のある手術の際の感染予防」。
手術中は切開で血管が空気に触れるので、微生物が付着して感染リスクが高くなる。
血液中の濃度が高い薬Bで抗菌する。
解説に自信がないので、なにか独自の見解がございましたら、
コメント欄かお問い合わせよりお知らせ願います。


問5:C
(理由)体外である腸内でしか薬の濃度が上がっていないため。
*解答はグラフの結果通りだが、ノーヒントだと小学生には厳しいと思う。。
つまるところ、『体内』がどこを示すかということ。
実は、食べ物が通る消化管や空気が通る気管は体外である。
体の中にあるが、口(入口)と肛門(出口)をつなぐ1本道は外とつながっている。
一方で、体内は細胞がぎっしり詰まって体液で満たされているところ
腸は体外にあたる。小腸の内壁にある柔毛から吸収されて体内の世界に入る。
これを知らないと書きづらい。

問6:(例)血管の壁が薄いので注射針が通りやすく、出血量が少ない。
(例)静脈は心臓に近い血管で、薬の成分を全身の組織に素早く運べる。
*動脈は高い血圧に耐えられるよう、弾力に富んだ厚い壁で覆われている
一方、静脈は動脈と比べて壁が薄いので、針が通りやすい。
動脈は血流が速く、注射を打つと止血の問題もある。
また、動脈は体の奥側を通っており、静脈は体の表面を通っている点
静脈に打たれる理由の1つである。

他にも、動脈に打つと〔注射した部位⇒毛細血管⇒静脈⇒心臓〕と移動するが、
静脈の場合はそのまま心臓に向かい、大動脈を通じて全身の組織に運ばれる点から、
薬の効能を素早く行き渡らせるには静脈の方が都合が良い。

問7:ク
耳にタコができるほど聞いたワードだが、ここまで突っ込まれるとは:;(∩´_`∩);:
PCR検査は、検査時点で新型コロナウイルスに感染しているかを調べる

国際環境経済研究会より。
PCR検査は唾液を採取して、コロナウイルスの遺伝子を検出する。DNAは二重らせん構造をしているが、加熱すると1本ずつの鎖にはがれる。この鎖には配列パターンがあり、特定の配列でないとくっつかない性質がある。かかる性質を利用して、コロナウイルスに見られる特徴的な配列パターンを人工的に作ったDNAの断片(プライマー)を使い、はがれた1本鎖(さ)にプライマーをくっつける。酵素の力で残りの部分を複製。二重らせんに再度、熱を加えて1本鎖にしてプライマーをくっつけて複製
。これを繰り返すと培養の難しい少量のウイルス遺伝子を大量に増やして、その存在を検出することができる。

一方で、抗体検査は過去に新型コロナウイルスに感染していたかを検査する。ヒトには体内に侵入してきた異物を排除して、身の安全を図る免疫機能が備わっている。新型コロナウイルスにかかるとそれを撃退する専用の抗体が作られるので、血液を採取して抗体の有無を検査すれば過去に感染していたかを把握することができる。
ちなみに、ワクチンは弱毒化や無害化したウイルスを接種
することで人為的に免疫を獲得させる

■選択肢判定■
PCRでは現在の感染確認を調べる(①)。
後ろの問題のように偽陰性がでることもあるので、あくまで感染の可能性。
抗体検査では過去の感染状況を把握するが(③)、
抗体が作成されてもウイルスが死滅していなかったり、再度感染しているかもしれない(④)。
現在感染していなくても過去に感染していたら、PCRで陰性、抗体検査で陽性になる(⑤)。
現在感染しており、抗体が作られていなければ、PCRで陽性、抗体検査で陰性になる(⑥)。

問8(1)999000人
計算4題が続く。特給合格を狙うには全問正解を目指したい。
感染者は、100万×0.1%=0.1万人=1000人
感染していない人は、100万-1000=999000人

(2)300人

感度は70%⇒陽性:偽陰性=
感染者は1000人だから、偽陰性者は1000×/=300人

(3)999人
特異度は99.9%⇒陰性:偽陽性=△999△1
感染していない人は999000人だから、偽陽性者は999000×△1/△1000=999人

(4)41.2%
陽性者は1000-300=700人
検査結果が陽性となった人数は、△1=700+999=1699人
このうち、本当の感染者の割合は、700÷1699×100=41.20…≒41.2%
半分もない…(;^ω^)
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