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M君は、車や電車に乗っているときに、月が自分を同じ速さで追いかけてくるように見えることを不思議に思いました。そこで学校に行き、S先生に聞いてみました。S先生は「実験をやってみましょう」と言いました。
<実験1>
S先生:部屋の窓の向こう側にマンションが見えるでしょう。
M君:はい。遠くと近くに2棟見えます(図1)。
S先生:じゃあ、遠くのマンションBを見ながら( ① )みてください。
M君:あれ?なんだか窓の向こう側のマンションBが拡大されたように見えます!
S先生:不思議でしょう。M君はあのマンションBに近づいていないのに、
拡大されたように見えるのです。
問1
空欄( ① )に入る語句を選びなさい。
ア:しゃがんで イ:窓から遠ざかって ウ:片目をつぶって
エ:左右に体をゆすって オ:窓に近づいて
<実験2>
S先生:なぜ拡大されたように見えるのか考えて見ましょう。
Cと書かれた円形の板(物体C)をM君から1m離したときと、
3m離したときで見え方にどんなちがいがあるのかを確認してみましょう。どうですか?
M君:3mの方が小さく見えます。
S先生:M君が物体Cを見るとき、「近くにあるのか遠くにあるのか」を、
「見えている範囲(「視野」といいます)の中での面積の大きさ」で判断しています。
図2-1と図2-2を見てください。
M君が物体Cから1m離れて見たときと、3m離れて見たときとを比べています。
M君:そうか、「②遠近法」は、これをうまく使っているのですね。
S先生:そうですね。東京ディズニーランドに行ったことはありますか?
シンデレラ城は高さ約51mですが、下から見上げると、③それ以上の高さに見えます。
問2
下線部②について、遠近法の説明文の空欄にあてはまる語句を〔小さく・大きく〕から選びなさい。
「絵画で、遠近の距離を、目に見えるのと同じ距離感を与えるように平面に表す方法。
同じ大きさの物でも、近くにあるときは( ア )、遠くにあるときは( イ )描く」
問3
下線部③について、シンデレラ城を実際の高さ以上に高く見せる工夫を簡単に答えなさい。
ただし、周りの建物や景色ではなく、シンデレラ城の建物自体になされた工夫を答えなさい。
S先生:次に、物体CがM君の近くにあるときにさらに1m離す場合と、
遠くにあるときにさらに1m離す場合とで、見え方のちがいがどうなるかを考えてみましょう。
図3-1は、M君から1m離れた場所にあった物体Cを、M君からさらに1m離した場合の見え方の変化を表しています。図3-2は、M君から3m離れた場所にあった物体Cを、M君からさらに1m離した場合の見え方の変化を表しています。
M君:あっ、もともと遠くにあるときの方が、物体Cの見える大きさの変化が( ④ )です。
S先生:そうです。その結果、もともとの距離が大きくなればなるほど、「見え方の変化」から「距離の変化」がとらえにくくなるのです。M君が( ① )いくと、実際には窓(窓わく)もマンションBも見える大きさは小さくなっていきます。しかし、マンションBの方が見える大きさの変化が( ④ )です。ここで窓から見える景色を「視野」だと考えて下さい。M君が( ① )いくと、「視野」が小さくなります。ところが、マンションBの見える大きさの変化が( ④ )ので、拡大されたように見えるのです。
M君:なるほど。それならば、マンションAに注目してもいいと思います。
マンションBはマンションAより見える大きさの変化が( ④ )ので、
マンションAに対して大きくなったように見えるのですね。
問4
空欄( ④ )に入る語句を選びなさい。
ア:大きい イ:小さい ウ:まったくない
<実験3>
S先生:では、月が追いかけてくるように見える理由を考えていきましょう。
この部屋の窓を車の窓だと考えてください。そして車が左方向に進んでいくと想像してください。すると、見える景色も変わっていきますね。図4-1⇒図4-2は車が移動するときの様子を真上から見た図で、網かけの部分がM君の見えている部分、すなわち「視野」です。図4-2では近くのマンションAは見えなくなりますね。遠くのマンションBはまだ見えています。
M君:確かに、近くのものは一瞬で過ぎ去っていきます。
S先生:ではもう少し進ませてみましょう(図4-3)。
遠くのマンションBも見えなくなりましたが、さらに遠くにある山はまだ見えています。
M君:なるほど、遠くにあるものほどこちらが移動しても( ⑤ )のですね。
S先生:あの山は離れているとしてもせいぜい数十kmでしょう。一方、月は地球から約( ⑥ )km離れています。そのため、見ている人がどれだけ遠くに移動しても、それに影響されることなく月が見えるのです。
問5
空欄( ⑤ )に入る文を答えなさい。
ただし、「視野」という言葉を必ず入れなさい。
問6
空欄( ⑥ )に入る数値を選びなさい。
ア:380 イ:3800 ウ:38000 エ:380000
S先生:次に、月がM君と同じ速さで動いているように見える理由を考えましょう。
時速50kmで動く車の窓から近くのマンションAを見ると、反対方向に一瞬で過ぎ去っていくように見えます。では、隣の車線を同じ向きに時速50kmで走る別の車を見たらどうでしょうか?(図5-1⇒図5-2)
問7
次の文は最後のS先生の言葉と<実験2>と<実験3>を参考にして、月が同じ速さで追いかけてくるように見える理由を述べたものです。空欄に入る語句を答えなさい。ただし、同じ語句をくり返し用いてもよい。
M君の車と同じ速さで動く別の車を、M君が窓から見ると、その車は視野の中で、( ア )場所に( イ )ように見える。車の窓から見える月も、視野の中で( ア )場所に( イ )ように見える。その2つの見え方の区別が( ウ )ため、月がM君と( エ )速さで左方向に追いかけてくるように見える。
次に、月から遠ざかりながら月を見ると、月とM君との距離はとても離れているので、月の見える大きさは( オ )。つまり、月はM君と( カ )を保ちながら、M君についてくるように見える。
@解説@
問1:イ
『遠くのマンションBを見ながら( ① )すると、
マンションBに近づいていないのに拡大されたように見える』
近づいていない→窓から遠ざかる。
問3以降のリード文『M君が( ① )いくと、
実際には窓もマンションも見える大きさは小さくなっていきます』もヒントになる。
問2:アー大きく、イー小さく
遠近法の説明。美術でやりますね。
近くにあるものは大きく、遠くにあるものは小さく描く。
問3:城の上部のパーツを下部のパーツより小さく作る。
遠近法は近くにあるものを大きく、遠くにあるものを小さくするので、
地上から遠い城の上部にあるパーツを小さくすると遠近法で遠くに見える=城が高く見える。
ディズニー特集より。こんなこすい工夫が施されてたとは(;`ω´)
問4:イ
図3-1と図3-2を見比べる。
近いものを遠ざけるとグッと小さくなるが、遠いものを遠ざけるとそんなに小さくならない。
窓から遠ざかると近くにある窓枠は小さく見えるが、
遠くにあるマンションBはさほど小さくならないため拡大されたように見える。
問5:視野の中に残りやすい。
近くにあるとスッと通り過ぎる。
遠くにあるとあまり位置が変わらない→視野の中に残る。
問6:エ
地球~月の平均距離は約38万km。
(全然関係ないが、日本の国土面積も約38万km2)
地球~太陽の平均距離は1.5億kmほどで1天文単位という。
問8:アー同じ、イー止まっている、ウーつかない、エー同じ、オー変わらない、カー同じ距離
同じ時速50kmで同じ方向に走る2台の車は相対速度が同じなので、
視野のなかでは同じ場所にずっと止まって見える。
月ははるか遠くにあるため、月も同じ場所にずっと見えるから、2つの見え方は区別がつかない。
したがって、月も車と同じく、時速50kmの速さで同じ方向に追いかけてくるように見える。
月から遠ざかりながら月を見ると、月は遠くにあるから見える大きさは(4)より変わらない。
「近くにあるか遠くにあるか」を「視野の中での面積の大きさ」で判断するから、視野の中での面積の大きさが変わらないと、月が同じ距離を保ちながらM君についてくるように見える。
灘中の立体視でも月の錯視がでました。
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