大問1(歴史)
〔9つの博物館に関するリード文。問題作成者はすべて踏破したのだろうか?(^^;〕
日本の各地には、その地方の歴史や文化を紹介・展示する博物館があります。博物館には、地域の歴史を一般の人に紹介し、説明するだけでなく、現在に伝わる昔のものや、歴史を解明する手がかりになる資料を整理し、保管する役割もあります。次のA~Nの各文章は、日本各地の博物館について述べたものです。後の問いに答えなさい。
A「根室市歴史と自然の資料館」は、北海道の東部、根室市にある博物館です。この博物館にある「国境標石」は、(あ)樺太にできた国境を示すために日本が設置した目印の石で、国境を海で隔てられていることの多い日本にとっては、大変珍しい資料です。また、資料館の近くの納沙布岬(のさっぷみさき)にある「望郷の岬公園」には、この近くに住むアイヌの人たちが1789年に起こした「(い)クナシリ・メナシの戦い」の約20年後に建てられた石碑があります。
根室市より、日本側からみた国境標石。
パスポートと同じく、日本の花を代表する菊の紋章があしらわれている。
問1
下線部(あ)について、この石が設置されてのは何年ですか(★★)
ア:1856年 イ:1986年 ウ:1906年 エ:1946年
ウ
*日露戦争の講和条約であるポーツマス条約。
ポーツマスはアメリカのニューハンプシャー州にある市。
日本軍はロシアの旅順要塞を攻略、日本海海戦でバルチック艦隊の撃破など善戦を尽くしたが、
日本もボロボロだったのでセオドア・ローズヴェルト大統領の仲介のもと、ロシアと講和を結ぶ。
これにより樺太千島交換条約(1875)で放棄した樺太の南(北緯50度以南の南樺太)を手にする。
問2
下線部(い)について、この石碑の裏面には、以下のⅠのような文章が書かれています。また、その横には、現在、以下のⅡのような説明の書かれた看板が、根室市教育委員会によって設置されています。このⅠとⅡの文章から、歴史について研究する時にどのようなことが大切だとあなたは考えますか。その考えを書きなさい(★★)
Ⅰ(読みやすい現代語にしてあります)
寛政元(1789)年の夏5月に、この地の凶悪なアイヌの人たちが、集団となって反乱を起こして立ち上がった。不意に殺されてしまった侍と庶民の合計は71人で、その姓名の記録は、別に役所に保管してある。ここに、とむらいのために石碑を立てる。
Ⅱ(和人とは、アイヌ民族ではない本州出身者のことを意味します)
寛政元(1789)年5月、和人のアイヌ民族に対する脅迫や非道行為によって追い詰められた結果、国後島と現在の標津しべつ町、羅臼町らうす付近のアイヌ民族が和人71人を殺害した。この出来事は、「クナシリ・メナシの戦い」と呼ばれ、最終的にノッカマップ(根室市牧の内)で戦いに関わったアイヌ民族37人が和人によって処刑された。
(途中省略)
墓碑裏面には、和人の視点からアイヌ民族が不意に襲ってきたとあるが、和人が殺害された原因は、アイヌ民族への非道行為に原因があり、石碑の内容と事実は異なる。
歴史的な資料に書かれてある内容をそのままうのみにせず、
きちんと背景を調べて正しい史実を見つける努力が必要であること。
*あなたの考えを述べなさい問題だが、指針は立てやすい。
石碑の裏面にあるⅠだけを見ると、アイヌが全面的に悪いように思えるが、
Ⅱの看板では、和人によるアイヌ民族への非道行為が原因だと書かれてあり、
アイヌ民族37人が和人に処刑された点にも言及している。
アイヌ差別は中学入試でもよく出てくるので、Ⅰの内容は不十分であるとわかるはず。
ここから、歴史研究に対する姿勢をひねり出す。
B
「開陽丸記念館」は、北海道の西部、江差えさし町にある博物館です。この博物館は、江戸幕府が開国した後にオランダから購入した「開陽丸」という軍艦の形をしています。
←w(゚Д゚)wじゃらんより。
この開陽丸が、大政奉還の後に起きた旧幕府軍と新政府軍の戦いで、江差町の沖合いで沈没したことから、その形を復元して建てられました。博物館の中には、沈没した開陽丸から引き揚げられた、武器や道具なども展示されています。
C
「青函トンネル記念館」は、青森県の津軽半島の外ヶ浜そとがはま町にある博物館です。青函トンネルは、1961年から建設が開始され、トンネル内に大量の水があふれ出すなどの難しい工事の末、1987年に完成しました。この博物館は、工事の青森県側の基地があった場所に建てられ、実際にトンネル工事のために掘られた坑道まで、ケーブルカーによって下りることができます。
D
「弘前市立弘前博物館」は、青森県の桜の名所として知られる弘前城の中にある博物館です。江戸時代、この弘前には弘前藩という藩がありましたが、(お)江戸時代を通して何度も大きなききんに見舞われ、多くの犠牲者を出しました。博物館には、弘前の祭りとして有名な「ねぷた」に関する展示の他に、ききんと戦ってきた土地の歴史についての展示もあります。
問5
下線部(お)について、江戸時代中期に起きた天明の大ききんでは、弘前藩でも被害が大きく、数万人の人が犠牲になったとも言われています。このようなききんの時に、都市に住む人びとが米屋などを破壊することを何といいますか(★)
打ちこわし
*漢字では『打毀』と書く。名の通り、破壊行為を伴う。
米騒動と間違える人もいるが、こちらは米価の高騰を原因に生じた暴動で、
とくに1918年、富山の魚津から全国へ広まった暴動を指す。
ちなみに、リード文の『ねぷた』と「ねぶた」は訛りの違いらしい。
E
「日本銀行貨幣博物館」は、東京都中央区の日本橋にある、日本の歴史の中で使われた貨幣についての博物館です。展示品の一つである「石州せきしゅう銀」は、16世紀ころから本格的に開発された石見銀山で産出された銀で作られた貨幣で、主に西日本を中心に使用されました。
F
「江戸東京たてもの園」は、東京都の小金井市にある博物館です。この博物館は広大な敷地に、30におよぶ住居、商店、交番、銭湯、旅館などの建物が移築されており、実際に中に入って見学することもできます。その一つである「高橋是清邸」は、明治時代から昭和時代にかけて活躍した政治家である高橋是清の邸宅を移築したもので、高橋是清が暗殺された二・二六事件の事件現場となった建物でもあります。
G
「横浜市八聖殿はっせいでん郷土資料館」は、横浜市の本牧ほんもく地区にある博物館です。変わった形をした建物は、戦前の政治家である安達謙蔵が、(く)法隆寺の夢殿ゆめどのという建物を参考にして建てたもので、むかし横浜の海で盛んだった海苔の生産に関する展示や、横浜の埋め立ての歴史が紹介されています。
問8
下線部(く)について、法隆寺を建てた人物が行ったこととして
正しくないものを選びなさい(★)
ア:小野妹子を隋に送る。 イ:冠位十二階を定める。
ウ:十七条の憲法を定める。エ:日本初の水時計を作る。
エ
*聖徳太子と関係しない選択肢を選ぶ。
他が教科書レベルなのでわかりやすい。
誤答のエ(水時計)は、中大兄皇子(天智天皇)といわれる。
国立飛鳥資料館より。漏刻(ろうこく)という。
4段に分けることで流量の変化を安定させ、時の進みにムラがないようにしたそうだ。
H
「静岡市立登呂博物館」は、静岡県静岡市の登呂遺跡にある博物館です。(け)弥生時代の米作りの遺跡として知られる登呂遺跡は、アジア・太平洋戦争中に軍の工場を作る際に発見され、戦後、世の中の混乱が続く中で発掘調査が行われ、その成果が話題になり、人びとが力づけました。博物館では弥生時代や米作りのことだけでなく、そのようなエピソードも紹介されています。
問9
下線部(け)について、弥生時代に日本にひろまった米作りは、大陸から九州北部を通って日本に伝わりました。米作りのあとが発見され、日本列島に米作りが伝わった最初のころのものと考えられる福岡県の遺跡は何ですか。漢字で答えなさい(★★★)
板付遺跡
*本来は中学以上のレベルかと思うのだが(´゚д゚`)
稲作は縄文の終期~晩期頃には大陸に近い九州北部へ伝わり、
福岡にある板付(いたづけ)遺跡の水田跡には足跡が残っている。
ちなみに、最古の水田址(すいでんし;水田の遺跡)は佐賀の菜畑遺跡。
I
「奈良県立橿原かしはら考古学研究所附属博物館」は、奈良県の橿原市にある博物館です。考古学とは遺跡から昔のものを発掘するなどの手段で過去の社会を研究する学問です。博物館周辺の地域は、古墳時代から奈良時代にかけて日本列島の中心だった場所で、数多くの遺跡から発掘された貴重な資料が展示されています。
J
「堺市博物館」は、大阪府堺市の大仙古墳のすぐ近くにある博物館です。大仙古墳に関する展示だけでなく、戦国時代から安土桃山時代にかけて堺の町で活躍した商人たちに関する展示も豊富です。特に、戦国時代に堺で多く生産された鉄砲については、その操作方法やさまざまな種類の鉄砲などが細かく紹介されています。
K
「津山洋学資料館」は、岡山県の津山市にある博物館です。津山という町は、江戸時代の後半に洋学(蘭学)の有名な学者も何人も生んでおり、それにちなんだ博物館です。その一人である宇田川玄随うだがわげんずいは、( し )のもとで学んだこともあり、( し )は著書である『蘭学事始』の中で、宇田川玄随のことを「非常に意志が固い人物で、学問がよく進む」などと書き記しています。
問12
Kの文章の( し )にあてはまる人名を漢字で答えなさい(★)
杉田玄白
*前野良沢とともに、ドイツの解剖書『ターヘル・アナトミア』のイタリア語訳を
日本語に翻訳した蘭学医者。『蘭学事始らんがくことはじめ』で翻訳作業の苦心をもらしている。
L
「広島県立歴史博物館」は、広島県の福山市にある博物館です。建物の中には、鎌倉時代から室町時代に博物館近くの芦田あしだ川の河口にあった「草戸千軒くさどせんげん」と呼ばれる市場が復元されており、この時代の商業の様子を知ることができます。この「草戸千軒」のあと地からは、多くの(す)商売や日常生活に関わるものが発掘されており、それらも博物館で展示されています。
問13
下線部(す)について、鎌倉時代から室町時代にかけての人びとの生活に関して
正しくないものを選びなさい(★)
ア:一日3回食事をとる習慣がみられるようになった。
イ:稲をかり取ったあとに麦などを作る二毛作がひろがった。
ウ:衣服に木綿を使うようになった。
エ:備中ぐわや千歯こくなどの新しい農具が普及し、農作物の生産力が高まった。
エ
*正答はあてやすい。
江戸時代に登場した新しい農具により生産効率がアップする↑↑
ア:時期判定が厳しい(;`ω´)
昔は1日2食であったが、鎌倉から室町にかけて食習慣が変化し、1日3食が広がる。
ただ、庶民に浸透したのは江戸の元禄期~。
イ:二毛作の広がりは鎌倉。ちなみに、人の糞尿を肥料に用い始めたのもこの頃。
ウ:これも判定が難しい(´・_・`)
鎌倉時代にはすでに木綿が日本に伝わっていたようだが、
室町中期~戦国にかけて徐々に広まり、江戸に入ってから庶民も着るようになる。
M
「大山衹おおやまづみ神社宝物館」は、愛媛県今治市の大三島おおみしまにある大山衹神社にあります。この神社は、全国にある三島神社や大山衹神社の総本社で、古くから「戦いの場」として尊敬されたため、多くの武将から刀や鎧などが奉納されました。宝物館には、その一部が展示されており、源頼朝や源義経が奉納したと伝わる国宝の甲冑などを見ることができます。
N
「坊津ぼうのつ歴史資料センター輝津館きしんかん」は、鹿児島県の南さつま市の坊津という場所にあります。薩摩半島の南西にあるこの地は、古くから日本と中国大陸を行き来する船の港として使われていました。奈良時代に派遣された遣唐使船だけでなく、室町時代には中国や東南アジアへ向かう船の出航地にもなりました。
大問2(地理)
〔お雑煮の多様性を語るリード文〕
問4
香川県などの瀬戸内海に面した地域は、日本の他の地域に比べて年間降水量が少なく、乾燥した晴れの日が多い気候です。なぜ年間降水量が少ないのですか、この地域の気候に影響を与える地形に具体的にふれながら、理由を説明しなさい(★★)
夏は南東の季節風が四国山地に、冬は北西の季節風が中国山地にさえぎられ、
しめった空気が瀬戸内海に流入しにくいため。
*内容は教科書レベル。
『~地形に具体的にふれながら』とあるので、山地の名前を入れた方がいいかも。
問6(1)
岡山県にある水島コンビナートは、石油精製や石油化学工業などがさかんです。
タンカーで運ばれてきた原油は石油精製工場に運ばれ、加熱炉で熱せられたあと
蒸留塔に送られて、蒸発する温度の違いによっていくつかの石油製品がつくられます。
石油製品の一つで、プラスチックや合成ゴムの原料となる製品の名前を答えなさい(★★)
ナフサ
*説明は問題文の通り。
原油を分留し、沸点の違いから物質を分ける。
高校入試でナフサを見かけたことがない。
(2)
下の地図のA~Dの国は、2017年の日本の原油の輸入先上位4か国を示しています。
Bが示す国の名前を答えなさい(★★★★)
カタール
*アラビア半島にある中東(西アジア)の国々。
本年度は中東やイラン問題が狙われたが、世界地理を詳しく習わない小学生にはキツイ。
2019年現在、原油と天然ガスの輸入先ランキング3位はカタール。
首都はドーハ。サッカーのドーハの悲劇を思い出す(^^;
A:クウェート B:カタール C:アラブ首長国連邦(UAE) D:サウジアラビア
Aの北がイラク。Cの南はオマーン、その左がイエメン。
問7
次のア~オはそれぞれ、ある都道府県の形を示しています。
食肉用にわとりの飼育羽数が第1位の都道府県を選びなさい(★)
イ
*ブロイラー(食肉用にわとり)といえば鹿児島・宮崎コンビ。
都道府県のアウトラインは中学受験では基本問題だが、
何度かみたバラエティー番組では軒並み正解率が悪かったことに衝撃。
ア:岩手 イ:宮崎 ウ:茨城 エ:奈良 オ:群馬
問8(3)
北海道の農家は平均で約25haの耕地を経営していて、これは全国の農家の平均と比べておよそ10倍の広さです。下の地図は、横浜雙葉中学校周辺の1万分の1の縮尺の地形図です。地図中のア~エの正方形が示す範囲のうち、北海道の農家の平均耕地面積に最も近いものを選びなさい(★★)
イ
*25ha=250,000m2=500m×500m
縮尺が1万分の1なので、500m(50,000cm)÷1万=5cm
1辺の長さが5cmの正方形を選ぶ。
地形図の面積問題は攻略できるようにしておこう。
大問3(公民)
問1
下のア~ウの写真のうち、衆議院の本会議場として正しいものを選びなさい(★★★★)
ア
*ビックリw(゚Д゚)w
実質2択だが、大人でも迷う。
左が衆議院本会議、右が参議員本会議。
参議院には中央部に天皇陛下が開会式でお座りになられる座席がある。
ウは国連総会。
問4(1)
2018年度の一般会計の当初予算の総額として正しいものを選びなさい(★★)
ア:約80兆円 イ:約100兆円 ウ:約120兆円 エ:約140兆円
イ
*数字問題だが…現役生は時事対策でやるはず。
ちなみに、2019年度の一般会計の歳出総額は101兆4564億、
2020年度は102兆円台後半となる予想が立っている。
問6
内閣は、内閣総理大臣と国務大臣から成り立ちます。国務大臣の多くは各省庁の長となります。
次のA、Bは国務大臣が長となる省庁の説明です。それぞれの省庁の名前を答えなさい。
A:この省庁の下には、資源エネルギー庁、特許庁、中小企業庁などがおかれている(★★)
B:この省庁は東日本大震災をきっかけとして、期間限定で設置された(★)
A:経済産業省 B:復興庁
*Aがやや当てにくいか。
原子力行政やエネルギー政策、伝統工芸品の指定も行っている。
問7
内閣総理大臣と国務大臣により構成される会議の名称を漢字で答えなさい(★★)
(本文では、選挙に関する新聞記事の穴埋め問題となっております)
閣議
*公民分野は生徒がイメージしずらい領域だが、報道で用いられる一般用語なので覚えておきたい。
閣議は多数決方式ではなく、慣習上、全会一致(全員の賛成)で成立する。
閣僚メンバーらが一堂に会せず、官僚が閣議書を持ちまわり、
各国務大臣の署名をもって成立する持ち回り閣議とよばれる形式もある。
問10(1)
日本国憲法第7条には「天皇は、( )により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ」
と定められています。( )に入る語句を8字で答えなさい(★)
内閣の助言と承認
(2)
次のア~カのうち、憲法に定められている国事行為として
正しいものをすべて選びなさい(★★)
ア:条約の公布 イ:国会の召集 ウ:内閣総理大臣の指名
エ:国務大臣の任命 オ:栄典の授与 カ:最高裁判所長官の指名
ア・イ・オ
*国事行為は狙われやすいが、すべて式はキツイ(:`ω´)
本文は誤答が平易なので、それを外せば正解できた。
憲法7条各号を閲覧すると、、
①憲法改正、法律、条約の公布、②国会の召集、③衆議院の解散
④総選挙の施行公示、⑤国務大臣や官吏の任免、⑥恩赦、⑦栄典授与
⑧外交文書の承認、⑨大使や公使の接受、⑩儀式を行う
政治性の高い行為もあるが、国事行為の実施には内閣の助言と承認を要するので、
実質的な権限は内閣にあり、天皇の国事行為は形式的・儀礼的なものと扱われる。
ウ:内閣総理大臣の指名→国会
エ:国務大臣の任命→内閣総理大臣
問11
選挙について学習した花子さんのクラスでは、「日本は選挙で投票に行かなかった人に罰金を設けるべきである」という論題で、下のルールで討論会を行うことになりました(★★★)
<ルール>
・賛成側と反対側に分かれて行います。
・自分の意見に関係なく、賛成側と反対側に分かれます。
・賛成側・反対側はそれぞれの立場で主張や反論を行い、
説得力があると判定された方を勝ちとします。
<賛成側の主張>
私たちは「日本は選挙で投票に行かなかった人に罰金を設けるべきである」
ことに賛成です。理由は次の3つです。
①投票率が下がると、国民の意見が政治に反映されません。
②投票日に行けない人のための制度があるのだから、
当日用事があったからという理由で選挙に行かないのはおかしいと思います。
③オーストラリアでは投票を義務づけていて、罰金制度があるので投票率があがったようです。
だから、日本でもやるべきです。
あなたは、反対側の立場です。この賛成側の主張を受けて、あなたはどの部分に対してどのような反論をしますか。賛成側の①~③の3つの理由の中から一つを選び、解答用紙にその番号を書いたうえで、それについて反対側としての反論を書きなさい。ただし、どの理由を選んでもかまいません。
下記参照。
*投票に行かなかった人に罰金を設ける、義務投票制(強制投票制)の是非。
設問はディベード形式の設定で、賛成側が呈示した3つの理由のうち、
いずれか1つについての反論を記述する。以下、その一例。
③オーストラリアでは投票を義務づけていて、罰金制度があるので投票率があがったそうです。
だから、日本でもやるべきです。
⇒先んじて行っている国があり、そこで成功しているから日本も実施すべきとする意見。
*これが最も書きやすいんじゃないかな?(‘ω’)
他国で成功しているからといって、日本で成功するとは限らない。
“各国の国内事情や国民性の違いから必ずしも自国に合うとは限らない”旨の反論は、
この手の主張に付き物である。
とくに日本では、「欧米の制度は優れており、進んでいる」と賞賛する声を聞くときがあるが、
欧米の価値観が必ずしも正しいわけではなく、欧米の基準を世界基準と考えるのは少々疑問。
その制度が目指す個人の利益が人権としてカウントすべきか議論の余地もあるので、
『欧米がやっているから日本も絶対に倣うべきだ』ではなく、
個々の制度や利益の中身を国内でしっかり吟味したうえで、導入すべきか判断すべきである。
①投票率が下がると、国民の意見が政治に反映されません。
⇒投票率を押し上げて、民主主義を徹底する。
*現在の投票率を見てみましょう→総務省
直近の国政選挙では5割を切っている・・。(地方選挙はもっと悲惨)
実に有権者の過半数の民意が政治に及んでいない。
確かに、投票率を上げれば、より多くの民意を代表する政治となる。
これに対する反論としては、
罰金刑に裏打ちされた意思表示が、果たして自由意思に由来するものなのか。
個人の意思を尊重するには、その意思決定のプロセスにおいて何ら制約がない状態、
すなわち、自由な意思に基づいて行われたかどうかが重要になってくる。
投票しなければ罰金刑を下すぞ!と、制度による強制性が背後にあると、
意思決定のプロセスが歪められる危険があり、投票行為による意思表示に欠点が出てしまえば、
公明な選挙とはいえなくなる。
②投票日にいけない人のための制度があるのだから、
当日用事があったからという理由で選挙に行かないのはおかしいと思います。
⇒代替手段による選挙権の保障から、無投票者への責任追及をする合理性。
*期日前投票による代替手段が用意されていることから、
投票をしなかった者が罰金を払うのは自己責任とする。
これに対する反論としては、そもそも選挙権はあくまで権利であって義務ではない。
期日前投票は選挙権の行使を拡充するための制度であり、
仮にそれをしないまま投票日を過ぎても、選挙権を義務と捉えるべきではないから、
その不履行で責任追及を受けるのはおかしい。
罰金刑を負わせるのは、かえって財産権の侵害にあたる。
選挙権は参政権の一種であり、権利であることには疑いないが、
後述の通り、権利以外の側面を認める見解も存在する。
なお、期日前投票の他、仕事や旅行による不在や一定の身体障害者については不在者投票制度、
国外にいる在外日本人については在外選挙制度が用意されている。
@義務投票制@
↑オーストラリアの投票率。
『House of Representatives』が下院、『Senate』が上院。
いずれも90%を超えているw(゚Д゚)w
選挙権の法的性質について、通説的な見解は『選挙権は参政権の1つであるとともに、公務の執行という二重の性格を有する』(二元説)が採られている。権利であれば、権利者の自由な意思により権利を自ら放棄することができるが、公務の執行という選挙権の性格を重視すれば、義務投票制を敷いて投票(公務)を強制することもできなくはない。
一方で、憲法19条では思想・良心の自由の記述があり、その保障内容には国家権力が個人の思想を強制的に露見させることを禁ずる沈黙の自由を含み、義務投票制はかかる自由への侵害になるかが問題となる。この点、投票所へ強制的に足を運ばせても白票を投ずる選択はあるから問題ないとする意見もあるが、棄権の自由を認めるべく自由選挙の保障が憲法上要請されているとの声も根強い。ちなみに、憲法界の大御所である芦部信喜先生は、『棄権率の低下は政治教育などによって望むべきだろう』と述べておられます。
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