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2020年度 成蹊中学過去問【理科】大問1解説

問題PDF
 ニホンジカはほぼ日本全国に生息し、地域によっていくつかのグループ(亜種)に分けられます。グループの中で九州・四国地方に生息するキュウシュウジカはオスの体重で50kgほどですが、本州にいるホンシュウジカは70~80kgぐらいで、北海道にいるエゾシカは130kgになります。食べ物は草や木の葉を中心に木の実や果実なども食べていますが、食料が少ない冬には樹皮や木の芽、落ち葉なども食べます。草や木の葉は繊維が多く消化しにくい食べ物なので、ウシと同じように胃で消化中の食べ物を、口にもどして再びかみ直す「反すう」という行動をします。
 ふつうはメスとオスが別々の群れで生活しています。メスの群れは母親と娘の血縁関係ですが、オスの群れは結びつきがゆるやかでその構成メンバーはかわりやすいです。子どもはメスの群れで育ちますが、オスは1~2歳で群れを出て他のオスの群れに合流します。繁殖の始まる9月頃にオスの群れは解体して、それぞれ単独行動になり他のオスへの攻撃行動がおこります。この攻撃行動によってオスには順位ができ、順位の高いオスがなわばりをつくり、10月頃なわばり内に入ってきた複数のメスと交尾をします。妊娠期間は約220日で、春にふつう1頭の子どもを出産します。
 ニホンジカはオスだけが枝分かれをした角をもちますが、この角は毎年生えるかわります。春先の3月頃に前年の角が落ち、それから新しい角がのび続け、4~5ヵ月たつと角の成長は止まります。成長中の角は袋角と呼ばれ表面が皮膚でおおわれていますが、成長が止まると表面の皮膚ははがれ落ちます。角は若いうちは短く枝分かれが少ないですが、年を重ねると枝分かれも増え大きく立派になります。
 近年ニホンジカは地域にもよりますが、生息数が増え食害などが問題になっています。例えば山口県では1950年代に県西部で約50頭しか確認できず、絶滅の恐れがある個体群として保護されていましたが、2017年度の県内生息数は推定17.600頭で増えすぎた結果、害獣として駆除の対象となっています。
 
(1)
次のア~オの動物を、ニホンジカと分類上近い順に左から並べなさい。
ア:メダカ イ:イノシシ ウ:ヤモリ エ:カマキリ オ:キツネ

(2)
ニホンジカの足跡として最もふさわしいものを選びなさい。

(3)
ニホンジカの首が長いことの良いところとして誤っているものを選びなさい。
ア:遠くから近づく天敵を早く見つけることができる。
イ:消化しにくい草や木の葉を首で消化することができる。
ウ:高いところにある木の葉を食べることができる。
エ:足を曲げずに水を飲むことができる。

(4)
ニホンジカの地域における体重の差から、一般的に動物の体の大きさと気温にはどのような関係があると考えられますか。次の(  )に当てはまる言葉を答えなさい。

『寒い地域に比べ暑い地域の方が体の大きさが(   )傾向がある。』

(5)
ニホンジカのように草や木の葉など繊維質で消化しにくい食物を食べる動物で、
特に発達している歯として最もふさわしいものを選びなさい。
ア:切歯(前歯) イ:犬歯(糸切り歯) ウ:臼歯(きゅうし;奥歯)

(6)
「反すう」の良いところとして誤っているものを選びなさい。
ア:消化中の食べ物に混じる石などのいらないものをはき出して捨てる。
イ:食べ物を分解するび生物と食べ物をよく混ぜ合わせる。
ウ:消化中で少しやわらかくなった繊維を細かくほぐす。
エ:消化液と食べ物をよく混ぜ合わせる。

(7)
交尾でオスからメスに渡されるものの名前を答えなさい。

(8)
ニホンジカの妊娠期間について述べた文として最もふさわしいものを選びなさい。
ア:ニホンジカの妊娠期間はヒトより長く、妊娠中に夏をこす。
イ:ニホンジカの妊娠期間はヒトより長く、妊娠中に冬をこす。
ウ:ニホンジカの妊娠期間はヒトより短く、妊娠中に夏をこす。
エ:ニホンジカの妊娠期間はヒトより短く、妊娠中に冬をこす。

(9)
次の図2、3は岩手県の山地におけるオスのニホンジカの年齢と角の成長についてのグラフで、図2は年齢と角の先端の数(枝分かれの様子)、図3は年齢と角の長さの関係を示しています。この図について述べた文として誤っているものを選びなさい。

ア:生まれた年は角が生えない。
イ:1歳も2歳も枝分かれがなく同じ長さの角をもつ。
ウ:5歳までは先端の数が増えて年齢とともに角が長くなる。
エ:3歳では先端が3本(2回枝分かれ)の角をもつものがいる。
オ:5歳では多くの個体で先端が4本(3回枝分かれ)の角となる。

(10)
本文より、ニホンジカの角の役割として最も重要と思われるものを選びなさい。
ア:肉食大型動物から身を守る。
イ:木の幹にこすりつけ樹皮をはがし食べる。
ウ:他の動物をおそい傷つける。
エ:他のオスと戦う。
オ:表面積を増やし体内の熱を発散する。

(11)
絶滅の恐れがある生物を示したリスト(データブック)を特に何と呼ぶか、答えなさい。

(12)
日本全国でニホンジカが増えて害獣となっていますが、
増えている理由として誤っているものを2つ選びなさい。
ア:天敵であるオオカミがいなくなったため。
イ:母シカは一度に多くの子どもを産むため。
ウ:温暖化で雪が減り冬期の子ジカの死亡率が下がったため。
エ:太陽光の紫外線が強くなり草や木の葉の栄養分が増えたため。
オ:山村の人口減少で使わなくなった田畑に食料となる草が生えたため。
カ:ニホンジカをねらう猟師が減ったため。
キ:森林が管理されず食料となる下草が増えたため。

(13)
次の図4は岩手県のシカの狩猟による捕獲頭数の年ごとの変化をオスとメスを別に表しています。
1994年からメスが現れる理由として最もふさわしいものを選びなさい。

ア:地球温暖化の防止のため
イ:外来生物の駆除のため
ウ:有害生物の駆除のため
エ:絶滅危惧種の保全のため
オ:生物多様性の保全のため

(14)
野生のニホンジカを近くで見たり触れたりすることができる場所として、奈良県の奈良公園が有名ですが、ここでは観光客から「しかせんべい」などのえさをもらう習慣があります。そのことで近年消化できないものを多量に食べてしまい、死んでしまうニホンジカがいることが問題になっています。

消化できないものとは、どのようなものだと考えられるか、答えなさい。


地元の人たちがどのようにすれば、ニホンジカが消化できないものを食べることを防げるようにできるか、答えなさい。


@解説@
(1)イ→オ→ウ→ア→エ
ニホンジカは脊椎動物の哺乳類。
遠いものから考えてみよう。
脊椎動物でないカマキリが最も遠い。(無脊椎動物-節足動物-昆虫)
次に遠いのは同じ脊椎動物のうち、水生生物でエラ呼吸をする魚類のメダカ。
続いて、爬虫類のヤモリ。
イノシシとキツネはどちらも哺乳類で迷う(;`ω´)
キツネはどちらかといえば見た目がイヌに近い。

イノシシはずんぐりむっくりしているが、なんとなくシカと目が似ている・・。
シカとイノシシは共に狩猟の対象に挙げられやすい動物である。
@@
ニホンジカ…哺乳類・偶蹄目(ウシ目)・シカ科
イノシシ…哺乳類・偶蹄目(ウシ目)・イノシシ科
キツネ…哺乳類・ネコ目・イヌ科

(2)エ
シカは蹄(ひづめ)を持っている。

生きもの写真家 安田守の自然観察な日々より。
↑シカ以外にも多種多様な生物の写真が掲載されている興味深いブログです(‘ω’)

ア:肉球っぽい。
イ:ウマ?蹄鉄(ていてつ)に見える。
ウ:カモ?
オ:クマ?

(3)イ
ア:首が長いと目線が高くなるから、天敵の察知に都合が良い。〇
ウ:リード文で『食べ物は草や木の葉を中心に~食べています』とあるので、
 首を伸ばして高いところにある木の葉を食べられる。〇
エ:首が短いと、
水を飲むために足を曲げなければならない。〇

イ:消化しにくい植物は、牛と同様に反芻(はんすう)をすると書かれてある。
 食べ物を胃から再び口に戻すので、首が長いと食道が長くなるのでやりづらいと思う。

(4)小さい
気温と体の大きさの傾向を答える。
キュウシュウジカ♂…50kg
ホンシュウジカ…70~80kg
エゾシカ…130kg
気温が暖かい地域にすむシカほど、体のサイズが小さい。
寒い場所は体温が奪われるので、産熱のために重量級になりやすい

ちなみに、恒温動物において、寒い地域に住む個体ほど、
体重が大きくなる傾向にあることをベルクマンの法則という。

2019年度 浦和明の星女子中学過去問【理科】大問3解説
問題PDF地球上には、一年を通してとても寒く年間降水量が少ない地域(地域①)、一年を通して比かく的あたたかく年間降水量が多い地域(地域②)、一年を通してとても暑く年間降水量が少ない地域(地域③)、一年を通してとても暑く年間降水量がとても多い...

2019年浦和明の星女子大問3問4(b)で見かけました。

(5)ウ

PET PETLIFEより。雑食のイヌの歯。
切歯(門歯)は前歯。噛み切る歯。
犬歯(糸切り歯)は肉食動物の牙。鋭く尖った歯。
臼歯(きゅうし)は奥歯。すりつぶす歯。

草食動物であるシカは、草をすりつぶして消化しやすくするために臼歯が発達している。
(門歯も草を噛み切るために、やや発達している)
対して、肉食動物は獲物の肉を切り裂けるよう、犬歯が発達している。

(6)ア
反芻は消化しにくい植物のセルロールを消化するために行われる。
その際、消化液だけでなく、微生物の力を借りている
消化に関するイ~エは正文。
アについて調べてみたところ、牛は一度口にしてしまったものを吐き出すのが苦手らしい(;^ω^)

(7)精子
聞き方が遠まわしな直球(;´∀`)

(8)イ
リード文では10月頃にメスと交尾し、妊娠期間は約220日で春に1頭の子供を妊娠するとある。
ということは、妊娠中に冬を越す。
ヒトの妊娠期間はどこにも書かれていない:;(∩´_`∩);:
前提知識として知っておきましょう。
人間の平均妊娠期間は約10ヶ月で、新生児の重さは3000gほど

(9)イ
ア:0歳は0本0cmなので角がない。〇
イ:1~2歳は先端が1本。枝分かれはないが、2歳の方が長い。×
ウ:1~2歳の先端の数は同じだが、全体の傾向として右肩上がり。〇
エ:先端の数は整数値のはずだが、グラフは平均値をとってい
ると思われる。〇
オ:〇

(10)ウ
鹿の角の主な役割。
『他のオスへの攻撃行動』から、オスとの戦いで使うものだと気づきたい。
立派な角を携えるオスは繁殖に有利。

(11)レッドリスト
某クイズ番組で答えられた大人が少なかった(´・_・`)
気になる方はコチラをどうぞ→環境省

(12)イ・エ
ア:天敵のオオカミが少なくなれば、食物連鎖の兼ね合いで鹿は増える。〇
イ:『ふつう1頭の子供を出産』とある。×
ウ:最も迷いやすい。寒さに強そうに思えるシカでも、
 体力の弱い子
ジカが冬の寒さに耐え切れず、死んでしまうことはある。〇
 温暖化が生態系に影響を及ぼす一例。
エ:紫外線が強くなると、陸上の生物は過酷な環境にさらされる:(っ`ω´c):×
オ:鹿は草を食べるので、耕作放棄地の草が増えたら鹿ふえる。〇
カ:『害獣として駆除の対象になっている』→猟師が減れば鹿ふえる。〇
キ:オと同様。適切な森林管理をしないで下草が増えると、エサが増えて鹿の死亡率は減少。〇

(13)ウ
ニホンジカは『害獣として駆除の対象』になったので、
子供を産むメスも駆除対象となった。

(14)①人間が捨てたプラスチックごみ。
②プラスチックごみをシカが食べないように掃除する。
*人が捨てたゴミが書きやすい。
プラゴミは他の中学校や高校入試でも頻出なので、是非おさえておきたい。

@ニホンジカ@

Private Zoo Gardenより。
ニホンといいつつ、ニホンの固有種ではないらしい。
あの角が毎年生え変わるとは意外でした(´-`).。oO

環境省より、ニホンジカ(本州以南)の個体数推定の結果。
劇的に増えたが、2014年度を境にやや減少傾向にある。
また増えるかもしれないので、今後の動向に注目ですね|д゚)


角がポロっと落ちる瞬間(*‘ω‘ *)w
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