問題PDF
桃ちゃんはお母さんとパンづくりをしています。
次の会話を読んで、後の各問いに答えなさい。
お母さん:今日は一緒にパンを焼いてみようね。
桃ちゃん:お母さんのつくるパンが一番好き!楽しみだわ。
お母さん:まずは材料の用意。①小麦粉・水・イースト・砂糖・塩・バターを準備して。
桃ちゃん:イーストって何?
お母さん:イーストは「酵母菌」といって、パンを発酵させるための微生物なの。
発酵といってもいろいろとあるのだけれど、これは②アルコール発酵という種類になるのよ。
イーストはあたたかい方が活発になって、空気があると呼吸をして、
空気がないとアルコール発酵をおこなって③アルコールをつくるの。
桃ちゃん:パンは微生物の力を借りてつくられているんだね。知らなかった。
お母さん:まずは材料をボールに入れて混ぜるの。しっかりこねてね。
桃ちゃん:だんだんねばりが出てきた!
お母さん:小麦粉に含まれているタンパク質からグルテンという物質ができて、
ねばりが出てくるのよ。このねばりがとても大事なの!
桃ちゃん:どうしてねばりが大事なの?
お母さん:あとのステップでその理由が分かるからそこで考えてみようね。
次はあたたかい場所でボールに④ラップをかけて発酵させるの。
桃ちゃん:だんだんふくれてきた!
お母さん:イーストによる発酵が進んで、( あ )が出てきてふくれるのよ。
パンがふくれるためにはこの( あ )が外に出ないことが大切なの。
( あ )は呼吸の際に出される気体と同じよ。
桃ちゃん:だからねばりが大事なんだね。⑤ねばりの必要な理由が分かったわ。
お母さん:また少しこねて同じように発酵させるとパン生地に( あ )がさらに入り、
ふっくら仕上がるの。
桃ちゃん:さらに発酵が進んでおいしくなるんだね。
お母さん:あとは形を整えてオーブンで焼いてできあがり。
桃ちゃん:できあがるのが楽しみ!
お母さん:微生物の力に感謝だね!
(1)
次の図6はコムギの断面図です。
パンの材料の小麦粉(下線部①)はコムギのどの部分を主に粉にしたものでしょうか。
図6のア~エから1つ選びなさい。また、その部分の名前も答えなさい。
(2)
下線部②アルコール発酵で主につくられる食品を、次の中から1つ選びなさい。
ア:みそ イ:納豆 ウ:ヨーグルト エ:チーズ
(3)
下線部③について、パンを食べてもアルコールでよわない理由として正しいものを選びなさい。
ア:アルコールがちがう物質に変化したから。
イ:アルコールがイーストに取りこまれたから。
ウ:アルコールが熱で蒸発したから。
エ:アルコールはすぐに分解される物質だから。
(4)
下線部④の理由の説明としてふさわしくないものを、次の中から選びなさい。
ア:温度を一定に保つため。
イ:空気が入らないようにして発酵をうながすため。
ウ:水分の蒸発を防ぐため。
エ:さらにねばりを出すため。
(5)
文章中の( あ )に入る気体として正しいものを、次の中から選びなさい。
ア:酸素 イ:二酸化炭素 ウ:ちっ素 エ:水素
(6)
下線部⑤ねばりの必要な理由を説明しなさい。
(7)
次の図7はイーストにおける( あ )の発生量と温度との関係を示したものです。
イーストのはたらきと温度との関係についての説明として正しいものを選びなさい。
ア:アルコール発酵は、温度の影響を受けにくい。
イ:温度が低くなるほどアルコール発酵が進みやすい。
ウ:温度が高くなるほどアルコール発酵が進みやすい。
エ:アルコール発酵は、最もよくはたらく温度が決まっている。
(8)
前問(7)をもとに、パンをつくるのに使う水はどのような水が適切であると考えられますか。
適切なものを選びなさい。
ア:氷水 イ:冷水 ウ:温水 エ:熱水
(9)
人はイーストのような微生物をうまく利用しながら生活してきました。
しかし、微生物の中には人に害を与える種類もたくさんあります。
地球で人と微生物はどのように共存していくことが望ましいと考えられますか。
あなたの考えを述べなさい。
@解説@
(1)イ・胚乳
小麦は有胚乳種子。
発芽に必要な栄養(デンプン)を胚乳に蓄える。
イネ、トウモロコシ、カキも有胚乳種子の代表例。
(2)ア
いずれも発酵食品ゆえ迷う。。
問題文では、パンを発酵させるイーストは酵母菌だとある。
ヨーグルトとチーズは牛乳を加工した乳製品で乳酸菌の力を借りる。
納豆は大豆を納豆菌で発酵させ、ナットウキナーゼとよばれる酵素を生み出す。
味噌は酵母菌や乳酸菌も使うようだが、主に麹菌が使われる。菌類の一種で、いわゆるカビ。
(乳酸菌と納豆菌は細菌類、酵母菌やカビは菌類に分類される)
アルコール発酵を行うのはどれかだが判定が難しい。
正解は1つなので、ヨーグルトとチーズはセットで除外。
残る納豆か味噌で、どちらがアルコールっぽいか→味噌と選ぶしかないような。。
味噌作りでは気泡が出てくることがあり、これはアルコール発酵で発生した二酸化炭素である。
アルコール発酵で作られる食品はパンと味噌の他、ワインやビールなどの酒類、醤油が挙げられる。
@発酵と腐敗@
発酵は微生物が食べ物(有機物)を分解することで人に利益をもたらす。
腐敗も微生物が食べ物を分解するが、人に利益をもたらさない。
発酵も腐敗もプロセスは同じだが、人にとって都合が良いかどうかで決まる。
(3)ウ
イーストが空気のない状態で小麦に含まれる糖を分解すると、
アルコール発酵をしてアルコールの一種であるエタノールができる。
しかし、揮発性の高いエタノールは蒸発しやすく、パンを焼き上げる過程で外に出ていくので、
子供でも安心して食べられます。
>蒸しパン食べてアルコール検知 「業界で常識」、市バス運転手を処分(朝日新聞)
記事によると、バスの運転手が出勤の十数分前に蒸しパンを食べたら、道路交通法上の酒気帯び運転には抵触しないものの、市の内規で定める基準値を超えるアルコールが検知されたそうです。
(4)エ
ア:うしろの設問にも出てくるが、ラップをかけることでイーストがよく活動する温度を保つ。
イ:『空気がないとアルコール発酵を行う』とあるから〇。
ウ:ラップをかけると水分の蒸発を防げる。水が抜けると生地が硬くなってしまう。
ねばりの原因であるグルテンは小麦粉と水が力を受けながら混ざることで、
2つのタンパク質が絡み合ってできる。
最近はグルテンの摂取を抑えるグルテンフリーの食品が売られている。
(5)イ
呼吸の際に出される気体→CO2
呼吸は酸素を使って有機物から生命活動に必要なエネルギーを取り出す。
アルコール発酵は酸素を使わずに有機物から生命活動に必要なエネルギーを取り出す。
呼吸の方が取り出せるエネルギー量は大きいが、
酸素がない環境下でも酵母菌はアルコール発酵で生き長らえることができる。
なお、パンの発酵中は呼吸とアルコール発酵を同時に行っている。
@@
好気性…生育に酸素を必要とする。
嫌気性…生育に酸素を必要としない、もしくは酸素があると死ぬ。
嫌気性生物は海中や地中、動物の腸内に存在する。
(6)二酸化炭素を逃がさずにパンをふくらませるため。
*内側から外側へ押し上げる力が働いて物体は膨らむ。
発酵で生まれた二酸化炭素がグルテンを中から押し上げて、パンがふっくら仕上がる。
このとき、グルテンが硬すぎると風船のように膨らまない。
逆に柔らかすぎてグチョグチョだと、二酸化炭素が外へ抜けてしまって膨らまない。
(7)エ
アルコール発酵でCO2が発生する
グラフによると、CO2の発生がピークを迎えるのは45℃付近で、
このときにアルコール発酵が最も良くはたらくといえる。
微生物だって生物。
活動しやすい温度がある程度定まっているはずで、暑すぎても寒すぎてもNG。
(8)ウ
30~45℃前後でアルコール発酵が進むので温水。
????余談????
昔、パンをよく作っていた時期があったのですが、そのときの発酵温度は30~35℃だったような…。ボールで生地をこねてからレンジで一次発酵。ベンチタイムで少し寝かせたあと、パンの形を整えてさらにレンジで二次発酵。焼き上げて完成です。強力粉とドライイーストさえあれば、あとはお家によくある材料で作れますから試してみてください。
レシピをみたら一次発酵が25~30℃、二次発酵が30~35℃くらいと二次発酵の方が高めの温度に設定されています。なぜ違いがあるのか?この疑問を解消してくれる動画を見つけました。
動画によると、一次発酵で高温発酵が推奨されないのは、家庭ではなく業務レベルの話だそうです。お店での製造では生地の塊が大きいので、外気に近い外側の温度が高くなり、内側と温度差が生まれます。高温の外側は発酵速度が大きく、あとで生地を小分けして分割すると、パンによって発酵度合いのムラができてしまうそうです。家庭サイズであれば生地が小さいので、内外の温度差がそれほど変わらないことから、動画の実験では高温発酵でもあまり問題になりませんでした。でも、過発酵だとパンがパサついて美味しくないとの声もあるので、他に何かあるかもしれません。
@キューネ発酵管@
アルコール発酵の実験では、J型のキューネ発酵管が用いられる。
高等学校生物準備室より。
水とドライイースト、ブドウ糖を混ぜた溶液を図1のように管内へ空気が入らないように注ぐ。
(ドライイーストはイースト菌を乾燥させて仮死状態にしたもの。水に浸すと生き返る)
綿栓で閉め、温水に浸しておくと、アルコール発酵で盲管部に二酸化炭素が集まる。
これを確かめるには水酸化ナトリウム溶液を入れ、管の入り口を親指の腹でおさえながら、
キューネ発酵管を上下にシャッフルする。水酸化ナトリウムは二酸化炭素を吸収するから、
管内の圧力が下がり、親指が管に吸い付く。
さらに、ヨウ素液を加えると黄色い沈殿物が生じ、特有の臭いを発するヨードホルム反応とよばれる化学反応が発生して、エタノールの検知もできるそうです。
(9)例:微生物をよく知り、過度に恐れることをせず、
生活のあり方を柔軟に変えながら人類が適応すべき環境を見出す。
*人に害を与えた微生物…猛威を振るった微生物といえばコロナウイルスが浮かぶ。
おそらく、本問は『ウィズコロナ』を意識して作問したのかもしれない。
世界的に大流行したコロナウィルスと人類はどう付き合っていくべきか。
抽象的な問いなので、答案構成を練るのが難しい(´д`)
まずは初期の国内感染拡大期でキャスターが言っていたように、”正しく恐れる“こと。
微生物は目に見えない。
大多数の人々は医学や感染症の専門知識がなく、未知の微生物に対して恐怖心を抱く。
過度な社会不安は混乱を招く。各人が正しい知識を身につけて冷静な判断をしなければならない。
また、新型コロナウィルスの流行を機に、三密を避け、手洗いと消毒を徹底し、
ソーシャルディスタンスを保つようテレワークの推進や通販・出前サービスの活用、
非接触であるキャッシュレス決済の導入促進といった、あらゆる生活様式が変わっていった。
突然変異の可能性があるウィルスを医学の力で根絶やしにするのは難しいからこそ、
人間側が知恵を絞ってウィルスと共存できる社会を作る必要がある。
着地点とすべき社会環境は何なのか、探すのは容易いことではないが、
見つけなければならない人類の課題である。
@余談@
愛媛県立医療技術大学の安川正貴学長がこのように仰っています。
はた迷惑すぎる( ˙ω˙ )
新しいのが出てきたら、とっとと免疫を獲得してキラーT細胞で根絶やしです。
@余談;微生物が新素材を生み出す@
NHK高校講座(家庭科)でやっていたのですが、
新しい繊維としてクモの糸が注目されているらしい( ;゚д゚)
クモの糸の強靭性は鋼鉄のなんと340倍!といわれており、
丈夫でかつ軽く、伸縮性に富んだスゴイ素材なのだそう。
たしかにクモの糸ってあんなに細いのに、大きく振り切らないと切れないですよね。
ですが、クモ1匹が作り出す糸の量は少ししかないので生産性がありません。
そこで、クモのDNAから糸に関する遺伝子を抽出して、それを微生物に組み込みます。
微生物の力を借りてクモの糸を作るのです。
微生物は繁殖が容易で、風呂桶1杯分の培養液があれば、
約1時間でセーター1枚に必要なクモの糸が調達できるとのこと。
こういった生物の利用法もあるんですね。
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