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2022年度 渋谷教育学園幕張中学過去問【理科】大問3解説

問題PDF
 夜空を見上げると、さまざまな明るさの星が輝いています。注意深く観察すると、星には色の違いがあることが分かります。カメラや望遠鏡を使うと、星の明るさや色がさらにはっきりと区別できるようになります。

 電球を使った実験を行い、夜空に輝く星について調べます。みなさんの家庭で使われている電球は、LEDのものが多くなってきましたが、白熱電球という種類の電球も使われています。白熱電球は点灯すると熱を発生します。
 家庭や実験室で使われている電気の電圧は、100V(ボルト)です。電圧を変える装置のことを変圧器と呼びます。電圧を変えると、白熱電球の明るさが変化します。
 光が当たっている場所の明るさを照度といい、ルックスという単位を使います。照度が大きいほど明るいです。照度は照度計で測れます。

<実験1>
 図1のように装置を配置して電圧は一定のまま、白熱電球を点灯し、電球から照度計を少しずつ遠ざけて、距離と照度の関係を測定しました。すると、図2のような結果が得られました。

(1)
次の〔  〕にもっとも適するものを選びなさい。
 電圧が一定ということは、白熱電球が出している光の量に変化がないということです。<実験1>では、電球と照度計の距離が遠くなると、照度が〔上昇・下降〕していくことがわかります。図2より、電球から100cmの距離での照度は、50cmの距離での照度にくらべると、約〔1/2・1/3・1/4〕になっていることがわかります。この関係から、250cmの距離での照度は、50cmの距離での照度にくらべて、約〔1/5、1/10、1/25、1/250〕になることが予想できます。

<実験2>
 次に図3のように、白熱電球と照度計との距離を一定にして、電圧を変化させて照度を測定しました。結果を図4に示します。同時に、放射温度計を用いて電球の温度を測定しました。結果を図5に示します。

(2)
次の〔  〕にもっとも適するものを選びなさい。
 電圧を上げると、照度が〔上昇・下降〕します。白熱電球と照度計の距離は一定なので、電圧が大きいほど、電球は〔明るく・暗く〕なることがわかります。電圧が50Vの時とくらべて、100Vでは、明るさは約〔2・5・15・30〕倍になっていることがわかります。電球の温度は、電圧を上げると〔上昇・下降〕していくことがわかります。夜空の星が同じような性質ならば、明るい星は温度が〔高い・低い〕ということになります。

 図6の虹の写真からわかるように、太陽の光の中にはさまざまな色の光がふくまれています。白熱電球も同様です。
 テレビやスマートフォンの画面は、青色、緑色、赤色の光の強さを調節して、多くの色を表す仕組みになっています。そこで、図7のような青色、緑色、赤色の色ガラスを用意しました。これらの色ガラスは、その色の光しか通さない性質をもっています。色ガラスを利用して、白熱電球の光の特徴を測定しました。

<実験3>
 照度計に色ガラスをかぶせて、次の実験をしました。白熱電球との距離を一定に保ったまま、電圧を変えて、それぞれの色ガラスごとに照度の測定をしました。すると、表1のような結果になりました。これをもとにグラフを作ったのが図8、図9です。

(3)
<実験3>の結果から考えられる文として適切なものを2つ選びなさい。
ア:白熱電球からの光は電圧を高くすると、赤色に対して青色と緑色の割合が高くなっていく。
イ:白熱電球からの光は電圧を高くすると、赤色に対して青色と緑色の割合が低くなっていく。
ウ:白熱電球からの光は電圧を変化させても、赤色に対する青色と緑色の割合は変わらない。
エ:電圧を変化させると、白熱電球の色が変わると考えられる。
オ:電圧を変化させても、白熱電球の色に変化はないと考えられる。

(4)
夜空に見える星の明るさや色の関係が、<実験1、2、3>と同じと考える。
次の文のうち適切なものを2つ選びなさい。
ア:赤い星と青い星は、温度は変わらないが、青い星ほど明るい。
イ:赤い星と青い星は、温度は変わらないが、赤い星ほど明るい。
ウ:赤い星は温度が低くて暗く、青い星は温度が高くて明るい。
エ:赤い星は温度が低くて明るく、青い星は温度が高くて暗い。
オ:赤い星は赤色の光だけ、青い星は青色の光だけを出して輝いている。
カ:星はさまざまな色の光を出しているが、距離が遠いと青く、近いと赤く見える。
キ:星はさまざまな色の光を出しているが、温度のちがいで出している色の割合が変わり、
 ちがった色に見える。

 宇宙では、たくさんの星がせまい範囲に同時に誕生することがあります。地球から見ると、ほとんど同じ距離に星が集まっていることになります。このような星の群れを星団とよびます。図10は星団の例です。

<実験4>
 まず色ガラスをつけないでプレセペ星団を撮影して、それぞれの星の明るさを求めました。次に色ガラスをつけて星団を撮影し、青い光と赤い光の割合を計算しました。図11には測定できた星団の一部の星を示しています。明るい星は上に、暗い星は下になります。左側にあるのは青い星、右側にあるのは赤い星となります。

(5)
次の〔  〕に適するものを選びなさい。
 プレセペ星団には、図11の中に点線で囲んだように、AとBの異なった性質をもつ星のグループが見られます。白熱電球の実験結果と似ているのは〔A・B〕グループと考えられます。Aグループは〔青い・赤い〕星が明るいという特徴が見られます。ところが、Bグループは明るくて、〔青い・赤い〕星があります。

(6)
プレセペ星団には、赤い色をした星が二種類あることがわかります。明るい赤い星と暗い赤い星です。明るい赤い星は、暗い赤い星と比べて、どのようにちがうと考えられますか。次の(  )を補い、文を完成させなさい。

明るい赤い星は、暗い赤い星と比べて(    )。


@解説@
(1)①下降②1/4③1/25

歪んでしまいました(-_-;)
なめらか曲線で描いてください。

距離が遠くなるほど照度は下降していく。
50cmでは500ルックス、100cmでは120ルックスほど。
120÷500が約1/4なので、125ルックスと思われる。

距離が2倍になると、照度は1/4倍になる

2倍が1/4倍になるということは、2回かけた数の逆数では?
150cmだと距離が3倍になるので1/9倍になるはず。
500×1/9=55.55…⇒グラフでは50の上で当たってそう。
250cmは距離が5倍だから、照度は1/25倍。

@逆2乗の法則@

電圧一定⇒光源から発せられる光の量も一定。
距離が2倍だと面積は4倍になるから、単位面積(1つの面)あたりの光の量は1/4倍に落ちる。
すなわち、『照度(面の明るさ)は光源との距離の2乗に反比例する』。
2乗とは同じ数を2回かけること。
2乗した数の逆数になる法則は逆2乗の法則といわれ、
万有引力や静電気力に関する自然法則にも登場する。

(2)①上昇②明るく③15④上昇⑤高い

電圧を上げると照度は上昇している。
距離一定にある照度計の照度が上昇したのは、光源の電球が明るくなったから。
50Vのときは1200ルックス。100Vでは17200ルックスを超す。
17200÷1200=14.33…≒15倍

電圧を上げると温度は上昇している。
明るい(照度が高い)⇒電圧が大きい⇒温度が高い。
明るい星の温度は高いことになる。

(3)ア・エ

電圧を上げると3色いずれも照度が高くなり、最初は赤が突き抜けるが、
70Vを超すと緑が追い越すので赤色に対する緑色の割合は高くなっていく。

問題は照度の少ない青。
選択肢では緑が高くなるから青も高くなるアだと予想できるが、
電圧をさらに高めていくと本当に青の割合が増えていくのか不安になる…。

図9で50V~100Vまでの長さをとると赤が最も短い感じがする。
また、
青と赤を結ぶと、直線の傾きが緩やかになっている
縦軸は過去問にでてきた対数グラフであるが、この調子で電圧をあげていけば、
いずれ赤に対する青の割合は高くなるだろうと予想できなくもない。

『テレビやスマートフォンの画面は、青色、緑色、赤色の光の強さを調節して、
多くの色を表す仕組みになっています』
青・緑・赤は光の三原色。3色の割合でさまざまな色の光を表すことができる。
電圧を上げると3色の割合が変化するので、温度の違いで電球は異なる色に見える。

(4)ウ・キ
電圧が小さいときの明るさは暗く、赤の照度が優勢で赤く見える。
また、電圧が小さいと電球の温度は低い。
温度が低いと暗い赤に見える
逆に、電圧が高い場合、実験では100Vまででわかりにくいが、
前問で「赤色に対して青色と緑色の割合が高く」なり、
選択肢では緑がなく、青しかない。
恒星のような高温になると青の照度が優勢になり、明るい青に見えると考えられる。

アイウエ:赤い星は温度が低くて暗く、青い星は温度が高くて明るい→ウ
オ:いろんな色の光を出しているが、どの色の照度が優勢になるかで見える色が変わる。×
カ:実験1から距離が近いと明るく、距離が遠いと暗くなるが、色の話ではない。×
キ:色の違いは温度に依存する。〇
*「赤い星→低温で暗い、青い星→高温で明るい」という知識に頼っていいと思う。
『星』とは太陽のように自ら光る恒星をさす。

@緑の星はどこへ?@
選択肢から急に緑が消えたが、緑はどこにいったのか。

確かに赤い星と青い星は見たことあるけど、緑の星は実際に見たことがない…。


星の温度が高くなると、赤からオレンジ、黄色、白、青へ色が変化する。
UVは紫外線、IRは赤外線で目に見えない光。
あいだのvisibleは「目に見える」、つまり可視光線。
星の温度が低くなるとグラフの波が右に移動し、visibleの範囲は赤色が占める。
星の温度が高くなるとグラフの波が左に移動し、青色が占めるようになる。
しかし、可視光線(スペクトル)の真ん中に位置する緑に波のピーク(頂点)があるとき
赤、緑、青の光が同程度の量になるので、これらが混ざって白に見えてしまう

@ウィーンの変位則@
光は波の性質を持ち、波の山~山(もしくは谷~谷)までの長さを波長という。
光は波長が短くなると青色、波長が長くなると赤色に見える
そして、波長の長さと温度には次のような関係式が成り立つ。
波長の長さ×温度≒2900
つまり、波長と温度は反比例の関係にある。
高温だと短波長の青色、低温だと長波長の赤色になる。

横軸が波長、縦軸の放射強度は光の強さ。
Tは温度で、K(ケルビン)は絶対温度をあらわす(0℃=273K)。
温度Tが高いとグラフの山が高くなって放射強度が増す。
グラフのピーク(山頂)はその温度で最も優勢である光の波長で、
光はこの波長に応じた色に見える。
各ピークを結ぶと前述の反比例、ウィーンの変位則があらわれる。

地球温暖化の原因で、「太陽から得た熱を地球は宇宙空間に放射している。
しかし、温室効果ガスが熱を吸収して地表に戻してしまう」という話を聞いたことがあると思う。
太陽の光は目に見える可視光線なのに、地表から放出される熱が目に見えないのは何故か?
太陽の表面温度は約6000℃に対し、地球の温度はかなり低い。
ウィーンの変位則から波長が長くなり、目に見えない赤外線になるからである。

(5)①A②青い③赤い

電球の実験結果と同じように、赤が暗く、青が明るいのはAグループ。
しかし、Bグループは明るいのに赤い。

(6)表面積が大きい
難しい(´・_・`)
問題文にだいたいヒントが書いてあるものだが、直接的なヒントが見当たらない…。

(4)の選択肢ウより、
赤い星=温度低い=暗い
青い星=温度高い=明るい
…になるはずなのに、赤くて明るい星があるという。
(1)で照度は光源からの距離の2乗に反比例するから、”地球に近い星”と答えたくなるが、
星団は地球からほとんど同じ距離に集まった星の群れなので、距離ではない

距離が同じで温度が低いのに、照度が高い(明るい)のはどういうことか。
明るいということは光の量が多いということ
温度は低いが光の量が多い。
これを電球の実験で例えると、電圧の低い電球をたくさん並べる感じになる。
すると、1個の電球は暗くても光の量が増えて明るい赤になる。
恒星でいえば光を発する場所が広い、すなわち、表面積が大きい。

@赤い星のデカさ@
中学受験で赤い星といえば、さそり座のアンタレスとオリオン座のベテルギウスを習いますが、
ここで2つの星の大きさを太陽と比較してみましょう。

The Size Of Our Worldより。
左下の点すら見えないのが太陽…デケェ!!( ;゚д゚)
もっとも、ベテルギウスがアンタレスよりも大きいと説明するサイトもあるので、
不確かな部分もありますが、いずれも太陽より圧倒的な大きさを誇る点は間違いないようです。

こちらは太陽系の天体。太陽と比べると地球(Earth)はゴマ粒。

@HR図@
 
板村地質研究所より。図11の元ネタはHR図である。
横軸が表面温度に応じた色、縦軸の絶対等級は明るさ。
恒星の子供である原始星が核融合反応を起こすと主系列星になる。
左上の主系列星は高温で明るいが、重くて燃え尽きるのも早いので寿命が短い。
反対に右下の主系列星は低温で暗いが、軽くて長く燃え続けるので寿命が長い。

主系列星が晩年に近づいていくと、恒星のなかのエネルギーバランスが崩れていき、
大きく膨張してデカくなって巨星赤色巨星)に変わる。これがHR図の右上にあたる。
質量の小さい星では中心部の核融合反応が停止し、外層のガスが宇宙へ抜けていく。
すると、中心の核がむき出しになって高温の小さい白色矮わいがあらわれる。
HR図の左下である。
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