2018年度 麻布中学入試問題【理科】大問3解説

みなさんが生活の中で毎日気にしている自然現象は何でしょうか。「天気」、特に「雨が降るかどうか」と答える人が多いのではないかと思います。水のつぶである雨が降ると、かさが必要だったり、外で遊べなかったりしますから、わたしたちは天気を気にするのでしょう。ところで、天気を変化させる空気の動きは、時速40km程度です。また、天気の変化をもたらす雲は、およそ上空10kmから地表までの間にできます。

問1
下線部①について、雨つぶは大きいものでも直径8mm程度ですが、直径5mm程度の雨粒は秒速10mの速さで落下します。雨つぶが上空3kmの高さから地表までこの速さのまま落下した場合、何分かかりますか。計算して答えなさい。

問2
真上を見上げても雲がないのに雨が降る「天気雨」が起こる理由として、
あてはまらないものを選びなさい。
ア:雨つぶが、強い風によってふきとばされてしまうから。
イ:雨つぶが落ちている間に、雲をつくる水のつぶが蒸発してしまうから。
ウ:雨つぶが風で持ち上がると雲ができるので、雨の降り始めは雲がないから。
エ:雨つぶが地表に着く前に、雨を降らせた雲が頭の上から移動してしまうから。

降った雨は地表を流れ、また蒸発して雨のもとになるというように、水は循環しています。雨の量や降る場所は、時と場合によって様々で、集中ごう雨によって洪水が起こり、私たちの生活に被害が出てしまうこともあります。川の多い日本では、昔から洪水対策が行われてきました。川の上流にダムを、中流に遊水地をつくり、それ以外に、ていぼうもつくられてきました。一方で、洪水が起こるしくみがあまり理解されていなかったころには、人が川に手を加えたことで、洪水被害が増えてしまうこともありました。流域(雨の水が集まる範囲のこと)の面積が日本最大の利根川も、その一つです。

問3
下線部②について、雨の量の表し方である降水量は、平らな場所に降った前が、どこにも流れずにたまったときの深さを示すものです。1時間の降水量が100mmだった地点では、1時間に1m2あたり何L(何kg)の雨が降ったことになりますか。計算しなさい。

問4
下線部③について、人が川に手を加えるときに、洪水が防ぐはたらきがあるものとして最も適当なものを選びなさい。
ア:下流の川はばを広げる。
イ:カーブを増やして川を長くする。
ウ:中流から下流の川底を埋めて平らにする。
エ:上流で他の川をつなげて流域面積を広げる。


近年、強い雨の降る場所や降り方が変化してきたともいわれています。そのため、昔からの洪水対策が見直されたり、新たな対策が研究されたりしています。また、強い雨がいつ、どこに降るのかを予測するための研究も進められています。
ところで、雨は地球だけの特別な自然現象ではありません。土星の周りをまわる衛星であるタイタンでも、雨が降っていることがわかりました。タイタンは、60個以上発見されている土星の衛星の一つで、月よりも大きな天体です。惑星や衛星は地球からとても遠いのですが、実際にその天体の近くまで行く探査機によって調べられています。タイタンへは、2005年1月に、土星の探査機カッシーニから切り離されたホイヘンス・プローブという探査機が着陸に成功し、タイタンはこれまでに人工物が着陸したもっとも遠い天体となりました。それまでタイタンは大気をもつ衛星として知られていたのですが、これらの探査機によって、表面に液体が存在し、雨が降っていることが確認されました。ただし、タイタンの表面はマイナス180℃(氷点下180度)なので、地球のように「水の雨」は降りません

問5
左下の図は、探査機カッシーニが撮影した衛星の写真です。図中の右側がレア、左側がテチスという衛星で、写真はこれらを横から見たものです。レアはテチスよりも大きな衛星です。写真の衛星の形(光って見える部分)が、月の満ち欠けのように、見る向きと太陽光の向きによるものであるとすると、撮影したときの衛星に対するカッシーニの位置と、太陽光の向きは、それぞれどのようになっていたと考えられますか。右下の図の中で、もっとも適当なものを、カッシーニの位置はア~エから、太陽光の向きはa~dからそれぞれ選びなさい。ただし、右下の図は、カッシーニ、レア、テチスを、写真の上方から見たもので、正しい大きさや距離の関係を示すものではありません。また、太陽光はどちらの衛星にも平行に向かうものとします。

問6
下線部④について、タイタンの大気でもっとも多い成分は、地球の大気でもっとも多い成分と同じです。その成分としてもっとも適当なものを選びなさい。
ア:二酸化炭素 イ:酸素 ウ:水素 エ:ちっ素 オ:アルゴン

問7
下線部⑤について、下の図は探査機カッシーニが撮影したタイタンの川の写真です。タイタンの地形が地球の地形と同じように形成されると考えて、図中の地点A、Bについて述べた次のⅠ~Ⅲの文が正しければ○を、間違っていれば×を、それぞれ書きなさい。


Ⅰ:AからBの向きに川が流れている。
Ⅱ:A付近の方がB付近よりも流れが速い。
Ⅲ:B付近の方がA付近よりも標高が高い。

問8
下線部⑥について、タイタンではメタンという物質が雨となって降り、川をつくっています。メタンは、こおる温度やふっとうする温度が、水と異なります。メタンの特徴として最も適当なものを選びなさい。
ア:水を比べて、こおる温度とふっとうする温度がとても高い。
イ:水と比べて、こおる温度とふっとうする温度がとても低い。
ウ:水と比べて、こおる温度はとても高く、ふっとうする温度はとても低い。
エ:水と比べて、こおる温度はとても低く、ふっとうする温度はとても高い。

探査機カッシーニは、昨年9月に土星に飛びこんで探査活動を終了しました。探査機カッシーニが土星やその衛星を調べる中で、いくつもの新たな発見がありました。その中には、タイタンや、同じく土星の衛星であるエンケラドスに生命体が存在する可能性を示す発見もありました。その後、電池切れが近づいてきたので、コントロールが効かなくなる前に土星に飛びこませることにしました。探査機カッシーニによる大発見は、今後の研究に引きつがれることになります。

問9
下線部⑦について、なぜそのようにしたと考えられますか。
あてはまらないものを選びなさい。
ア:これまでにないほど近いところから、土星を観測するため。
イ:探査機がぶつかってしまうと、タイタンやエンケラドスは壊れて無くなってしまうため。
ウ:土星は他の衛星よりも大きく、探査機がぶつかることで受ける影響がもっとも小さいため。
エ:生命体がいるかもしれない衛星に探査機がぶつかって、
地球の物質でよごしてしまうことがないようにするため。


@解説@
難易度は高くはないので、8割以上を目指したい。
問1:5分
3kmを秒速10mで落下して何分かかるか。
3000m÷秒速10m=300秒=5分

問2:ウ
天気雨の原因でないものを選ぶ。
ア:頭上になかった雲から降った雨粒が、風に飛ばされて当たる。○
イ:雨粒を降らせたあとで、雲が蒸発して見えなくなる。○
ウ:水蒸気が上空で冷やされ、大気中のホコリを核として水や氷の結晶ができる。
 重みに耐えかねて雨粒が落下。風の上昇気流により、また雲粒に戻ることはあるが、
 雨粒落下→風に飛ばされる→雲の再形成→雨粒はそんな短時間にできないと思われる×
 大気と海の科学
 上のリンク先は元地学教諭のサイトで、雨の成因について詳しく述べられております。
 日本で降る冷たい雨は、過冷却とよばれる不安定な状態から氷晶となり、
 周りの水滴を吸収して成長、上昇気流より落下速度が勝ると雨粒として落ちるそうです。
エ:雨粒が雲から落下して地上に着く前に、雲がどっかにいった。○

問3:100L
単位換算。
1m3=1000L
1m2(底面積)×0.1m(高さ)=0.1m3=100L

問4:ア
ア:下流の川を広げれば、水量が広範囲に均される。○
イ:激しい水流がカーブに差し掛かると、堤防を壊して直線状に流れるおそれがある×
  三日月湖の成因で聞いたことあるはず。
ウ:川底を埋めて水深を浅くすると、余計にあふれ出そうだが…×
エ:流域面積が広がると、下流にいくにつれて合流する水量が多くなる×

問5:位置-ア、向き-c
ここも難しくはないので、正解したい。

写真の右がレア、左がテチス。
実際はレアの方が大きいが、レアが小さく写っているということは、
探査機カッシーニはテチス側にある。
アかイのうち、レアを右、テチスを左に眺められるのはア。
2つの衛星は右奥が光っているので、アから見て太陽光はcからきている。

問6:エ
『地球の大気でもっとも多い成分と同じ』で即
答。

環境科学研究センターより。CO2は0.03%と少なめのはご存知の通り。
それよりアルゴンとは何ぞ??
エア・ウォーター
アルゴン(Ar)は希ガスの一種。
希ガスは元素周期表の一番右側の列(第18属)に並ぶ元素の総称で、
他の元素とあまり反応せず、単体の原子で安定する性質を持つ。
アルゴンはギリシャ語で『なまけもの』を指すようで、
他の物質と反応しない”なまけもの”だから。
金属の溶接や半導体の基盤材料、医療用レーザーに使われるようです。
いったぁぴぃ
なぜ地球の大気にアルゴンが多いのか?
リンク先の結論部分を要約しますと、地球のアルゴンは太陽系の平均値と比べて質量数が大きく、
これは太陽から生成されたのではなく、地球がつくられた後に地球内部で作られたものだと。
元素周期表でアルゴンの次にくるカリウムが地殻や海水中に多く存在し、
そのカリウムが放射線を出して崩壊してアルゴンに変わる…とのこと。

問7:Ⅰ○ Ⅱ○ Ⅲ×

Aが細く、Bの右側が開けている。
AがV字谷のようになっており、Bが扇状地の扇頂といった感じ。
イメージできれば、3つも正解できる。

問8:イ
タイタンの表面温度はマイナス180℃。
非常に低温な環境下でメタンの川が流れているということは、
マイナス180℃ではメタンが凍らない。
つまり、凍る温度(凝固点)は水と比べてとても低い。

対して、ふっとうする温度(沸点)の情報がどこにも書かれていない(;`ω´)
-180℃で液体を保つ物質が、水の沸点100℃よりとても高い温度にならないと、
気化できないとは思えないことからイと判断するしかないような。
なお、沸点以下でも蒸発はするので、メタンが蒸発して雨を降らすことはできる。

@メタン@
化学式CH4
無色無臭。融点-183℃、沸点-162℃。常温では気体。
メタンガスは温室効果ガスとしても知られ、永久凍土のなかにたくさん眠っているらしい・・。

問9:イ
電池切れになりそうなカッシーニを土星に飛び込ませた理由。
ア:どうせエネルギーが切れるのであれば、土星を間近から撮影したい○
イ:問題文でタイタンは『月よりも大きな天体』とあるから、
 探査機がちょっとぶつかっただけでは壊れないだろう×
ウ:とはいえ、土星本体の方がサイズは大きいので、衝突の影響の度合いは小さいと考えられる○
 実際は土星に突入させ、土星の大気との摩擦でカッシーニを消滅させた。
エ:生命体が存在するかもしれない衛星に地球の物質(とくに付着していた地球の生物)が
  汚してしまうと、良からぬことがおきてしまうかもしれない○

環に濃い影を落とす土星(NASAより)
こちらに19枚の写真が上げられています→NATIONAL GEOGRAPHIC
カッシーニは1997年に打ち上げられ、2004年の土星到着後、
実に13年の間、土星のまわりをグルグルと周回していたそうです。
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