2018年度 海陽学園中学・特別給費入試問題【理科】大問1解説

 海陽学園では、自分で洗濯を行わなければなりません。洗濯なんて家でやったこともないし、不安な人もたくさんいるでしょう、今回は洗濯物について考えてみましょう。
 学園では、ほとんどの場合、洗濯機を使って洗濯をします。しかしすべての衣服を洗濯機で洗うことはできません。使われている素材や、加工のしかたなどによっては洗濯機で洗えないものも多くあります。それでは、洗濯機で洗えるものかどうかをどうやって調べるのでしょうか。それは、(a)衣服についている洗濯表示の記号を見ればわかります。

問1
文章中の下線部(a)について、洗濯表示の記号は2016年12月より、新しい記号に変わりました。
「洗濯機で洗うことができる」を表す記号はどれですか。

 洗濯機で洗えるものかどうかわかったら、洗濯物を洗濯槽の中に入れ、(b)適量の洗剤を入れます。よごれの状態や、洗濯物の量などによって洗い方の細かい設定をすることもありますが、ふつうはここでスタートボタンを押すだけで、あとは洗濯機が自動でやってくれます。どうですか。簡単ですね。これなら毎日でも洗濯をやっていけそうですね。

問2
文章中の下線部(b)について、洗剤は通常、中性洗剤を使用します。
セッケンを使用しない理由を答えなさい。

 洗濯機が止まったら洗濯物を取り出します。その洗濯物は、(c)脱水されています。びしょびしょでしずくがたれているような状態ではありませんが、まだぬれています。最後にこの洗濯物を乾かさないといけません。

問3
文章中の下線部(c)について、洗濯物を入れた槽を高速回転させることによって脱水します。
洗濯物を脱水するために使われている力の名前を漢字で答えなさい。

 洗濯物が乾く過程を少し考えていきましょう。洗濯物が乾くということは、洗濯物をぬらしている水が水蒸気となって空気中に出ていく現象です。
 実験室でビーカーに水を入れてアルコールランプで温めると、100℃で水は沸騰し始めます。沸騰している間、水の温度は( d )。このとき、水は水蒸気に変わり空気中に出て行きます。

問4
( d )に当てはまる適当なものを選びなさい。
ア:上昇し続けます イ:一定のままです ウ:上昇下降をくり返します

 しかし、洗濯物を乾かすときは、気温は100℃になっておらず、沸騰も見られません。それでも洗濯物が乾くのは、水は100℃にならなくても少しずつ蒸発し、水蒸気になっているからです。
 空気中にふくむことのできる最大の水蒸気の量は気温によって決まっており、これを飽和水蒸気量と呼んでいます。飽和水蒸気量は1m3の空気の中にふくむことのできる水蒸気の重さで表します。飽和水蒸気量と気温の関係を表したものが表1です。

 例えば、気温10℃で考えると飽和水蒸気量は9.4gです。いま、気温10℃で1m3あたりに5.64gの水蒸気をふくんでいる空気は、まだ3.76gの水蒸気をふくむことができます。この状態を湿度と言います。(5.64g÷9.4g×100=60%)
 それでは、空気中にふくまれている水蒸気の量はどうやって調べればよいでしょうか。1つの例として以下の(e)手順で調べることができます。
①コップに水を入れます。
②コップの中に氷を加えて、水の温度が均一になるようによくかき混ぜながら温度計で水の温度を計っていきます。
③コップの表面に最初に水滴がついたときの温度を読み取ります。
④表1を用いて、その温度の飽和水蒸気量を調べると、空気中にふくまれている水蒸気の量がわかります。

問5
飽和水蒸気量と気温の関係を表したグラフとして正しいものを選びなさい。

問6
下線部(e)の手順で空気中にふくまれている水蒸気量を調べます。
そのときに使用するコップとして適当なものを選びなさい。
また、その理由を答えなさい。
ア:陶器製のコップ イ:銅製のコップ
ウ:黒いプラスチック製のコップ エ:白いプラスチック製のコップ

問7
下線部(e)の手順で気温22℃の時の空気中の水蒸気量を調べました。
その結果、コップの表面が8℃になったときにはじめて水滴がつきました。
このときの湿度を求めなさい。答えは小数点以下を四捨五入して、整数で答えなさい。

問8
閉め切った部屋でまったく同じ種類のシャツをハンガーにかけて2枚干しました。
そのうち1枚は扇風機で弱風が当たるようにしました。
風を当てないシャツの方が乾きにくい理由を答えなさい。

問9
縦3m、横4m、高さ2mの密閉された部屋が気温26℃で湿度60%の空気で満たされています。
その中に洗濯前の重さが150gで、脱水後は390gになったシャツを1枚干しました。
この条件で十分な時間干した場合、この洗濯物は乾くでしょうか。
表1の数値を使って考え、乾くか乾かないか答えなさい。
洗濯物が乾くという状態は、洗濯前の重さになることとします。洗濯物の水分はしずくとして落ちたりせず、水蒸気にならない限り洗濯物にとどまっていると考えます。また、部屋の空気の出入り、乾かしている間の気温の変化もありません。
洗濯物が乾く場合は、乾いたあとの部屋の湿度を答えなさい。
また、洗濯物が乾かない場合は洗濯物に残っている水の重さを答えなさい。
答えは小数点以下を四捨五入して整数で答えなさい。


@解説@
問1:イ
いきなり家庭科( ゚Д゚)
国立っぽい。

ア:自然乾燥、イ:洗濯機、ウ:塩素系酸素系の漂白、エ:アイロン
従来の洗濯表示は日本独自のものだった。
国際規格にあわせることで、日本で衣服を購入する外国人の増加や、
輸出入の際の表示の差し替えに対応できるようになる。

問2:アルカリ性のセッケンで洗うと、衣服の繊維を傷つけたり、色落ちしてしまうから。
*生活知識だが、化学的に考えれば小学生でも書けなくはない。
わざわざ”中性洗剤”とセッケンを対比にもってくるということは、
セッケン水のアルカリ性に問題があると察する。

それは服を傷つけること。
アルカリ性洗剤は洗浄能力が高いが、それは油の成分を分解する力が強いから。
アルカリが強いと油だけでなく、服の繊維や色素も分解するおそれがある
アルカリ性から服に対するダメージの具体例を持ってこれるかで差がでると思われる。

ちなみに、『油が酸性だからアルカリ洗剤で中和させて汚れを落とす』というネット記事が出回っているが、
実はそうではないらしいw(゚Д゚)w
洗浄・洗剤の科学
リンク先のページに詳しい解説が載っていますが、専門性が高過ぎてついていけない…。
要点をかいつまむと、そもそも「酸と酸化」を混合していることが混乱の発端で、
酸は水素イオンを放出する物質、酸化は酸素原子を与える反応のこと。
油には主に、①動植物油脂②脂肪酸③鉱油系炭化水素の3種類があり、
このうち酸性の油で中和反応を起こすのは②脂肪酸のみ。
しかし、脂肪酸は量的に無視できる程なので、”中和で汚れを落とす”はごく一部の事象をさす。
動植物油脂であるトリグリセリドは中和反応とは別のメカニズムで除去している。
それは、鹸化(ケン化反応)とよばれる一種の加水分解
しつこい油汚れはエステル結合とよばれる強い結合から除去が困難となるが、
これをケン化反応で結合を解くことにより洗浄が容易になる、とのこと・・。
ケン化反応は高校の有機化学で習うそうです。

問3:遠心力
漢字指定だけど大丈夫でしょう。

問4:イ
沸点は100℃のまま。

問5:エ
飽和水蒸気量と気温の関係。

表1をみると、気温が上がるにつれて変化の度合いが大きくなる。
気温が高くなると、飽和水蒸気量が大きく増加するので、放物線のような形になる。
原点を通過するか否かだが、6℃から変化の割合を小さくすると、
0℃のときに0g(原点)を通らないように思われる。
飽和水蒸気量が0gだと水は空気に一切溶けない状態となるが、
雪が降る冬の札幌で水が空気に溶けず、湿度0%
になるかといえばそうではない。
氷点下でも水蒸気は微量ながら空気に溶けるので、雪が降れば湿度は高くなる。


問6:イ
理由-銅は熱を伝えやすいので、コップの内側と外側で温度差が起こりにくいから。
*コップに入れた水に氷を入れて温度を下げる。
コップ内の水温を下げていくと、コップに接した空気が冷やされていく。
空気に溶け込める水蒸気の量が少なくなり、溶けきれなくなると水滴としてコップに付着する。
このときの温度を露点という。
露点に達したときは飽和水蒸気(空気に水がパンパンに溶けている状態)なので、
露点となる気温を表1で調べて、空気中の飽和水蒸気量がわかる。

以上の実験を行うとき、コップの内外で温度差がでないように気をつける必要がある。

陶器やプラスチックは
熱伝導性が悪いので、中が冷えても外が冷えにくい。
コップの外側が遅れて冷えるので、温度計の指す温度は実際の露点より下回ってしまう。
この点、銅は熱伝導性が高いので、コップ内外の温度差がでにくい。

問7:43%
公立高校入試でもよく出てくるヤツ。
8℃のときの飽和水蒸気量は8.3g/m3
空気には8.3g/m3の水蒸気が溶けている。

22℃の飽和水蒸気量は19.4g/m3なので、
8.3÷19.4×100=42.7…≒43%

問8:シャツの周りにある空気には多くの水蒸気が溶けており、蒸発が促進されにくいため。
*この記述も水蒸気の話でよく出てくるので、書けるようにしておきたい。
乾きにくいのは、シャツから水が蒸発しにくいということ。
なぜ、蒸発しにくいのか。それはシャツが湿った空気に覆われているから。
蒸発は液面から水分子が飛び出すこと
ジメジメした空気を取り除くと水分子が空気に飛びやすくなり、蒸発が促される。
雨の日の室内干しでは扇風機を当てて対処しないと、雑菌が繁殖して生乾きのもとになる(´゚д゚`)

問9:乾かない、水の重さ-6g
シャツに含まれる水分は、390-150=240g
240gの水分が密閉された部屋の空気に溶け込めるかどうか。
すなわち、飽和水蒸気量内であればシャツの水がすべて空気に放たれるので乾き
飽和水蒸気量を超えれば水が空気に溶け込めず、シャツに残るので乾かない

表1より、26℃の飽和水蒸気量は24.4g/m3
湿度60%なので、水が溶け込める余地は40%ある。
水が空気に溶ける量…24.4×40%=9.76g/m3
これを重さ(g)で表す。
部屋の体積は、3×4×2=24m3
単位に注目しよう。【3(体積)×g/m3(飽和水蒸気量)=g(重さ)
24m3×9.76g/m3=234.24g
シャツの水分240gなので飽和水蒸気量をオーバー⇒乾かない。
シャツに残る水分は、240-234.24=5.76g≒6g

難関中学(理科)解説ページに戻る


note書いています(*'ω'*)
入試問題を題材にした読み物や個人的なことを綴っていこうと思います。
気軽にお立ち寄り下さい(*^^*)→サボのnote

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

CAPTCHA