2018年度 東京都立高校入試【理科】解説

平均61.5点

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大問1(小問集合)-69.5%

(1)イ 64.5%
*分裂をしても胚細胞1個あたりの染色体の数は変わらず。
受精卵の体細胞分裂は卵割といって、大きさがほぼ変わらない。

@染色体の数@
ヒトの染色体は23対46本。
ヒキガエルは22本。バッタ24本。ハト80本。ウマ64本。ハツカネズミ40本。
イチョウ24本、ソラマメ12本、サンショウ70本、シダの一種では1000を超すんだとか…。
染色体の数が多ければ、複雑で高等な生物というわけではない。

(2)ア 83.1%
*黒点の移動から太陽の自転がわかった。
黒点が周囲と比べて温度が低いのは、黒点の辺りを太陽の磁力線が通過するから。
太陽は水素やヘリウムといったガスの固まりで、自転周期は緯度によって異なるが27日間ほど。

(3)エ 57.5%
*図5で作図。

↑赤い物体がロウソクの実像です。上下が反対。
焦点を通るように線をひく。凸レンズの下がはみ出るが、そこは強引に。。
ロウソクの先端と凸レンズの中心を延長しても構いません。

(4)イ 57.8%
*60℃の溶解度が57.4gだから、ミョウバンは全部溶けている。
20℃では11.4gまでしか解けないから、析出される結晶の量は、
50-11.4=38.6g

(5)エ 73.4%
*等加速度直線運動だと速さがどんどん増すので、点の間隔は次第に大きくなるが、
本問は一定の間隔なので等速直線運動
1秒50回打点→1打点は1/50秒=0.02秒
AからBまでは5打点分だから、A~Bは0.02秒×5=0.1秒間
これが5cm。〔0.1秒で5cm 〕の速さだから、秒速50cm
長さがmなので、秒速0.5mとなる。単位換算に注意!

(6)ア 64.1%
*炭酸水素ナトリウム(重曹)の熱分解
重曹を熱すると、炭酸ナトリウム+二酸化炭素+水に分かれる。
試験官の底を下にしてしまうと、底の方に水分が溜まり、
バーナーの熱との温度差で試験管が割れるおそれがある。
水分の検知は塩化コバルト紙。水に触れると青→赤に変わる。

(7)ウ 86.0%
*音ですからね。五感の1つである、聴覚に関する感覚神経
脳と脊髄といったら中枢神経。感覚神経と運動神経は末梢神経の1つ。
↑細かい名称は、gooヘルスケアを参考にして下さい。
神経細胞(ニューロン)間では「電気信号」で情報のやり取りを行っている。
電流の正体は化学分野で習うイオンだが、どうやらナトリウムイオンが波を連鎖的に起こし、
シナプスとよばれる伝達通路を通じて隣のニューロンへ信号を送るらしい。

大問2(総合問題)-62.9%

ピクニックを題材としたリード文
(1)エ 64.4%

*仕事の原理から、仕事量はどちらも一緒。
〔仕事率(W)=仕事量(J)÷秒(s)〕
ケーブルカーを利用した方が徒歩より10分の1の時間で山頂に着く。

分母が小さくなるから、仕事率が大きくなる(それほど仕事の効率が良い)。

(2)イ 64.9%
*気圧は空気の圧力。
地球は分厚い大気の層に覆われているので、地表の万物は大気圧を受ける。
大気圧は上昇するほど上にある気体が少なくなるので気圧は低くなる
山を登るとポテトチップスの袋がパンパンに膨らむのは気圧が薄くなって、
大気圧がポテトチップスの袋を外側から押す力が弱まるので、
相対的に袋の中側から押す力が強くなり、膨張するからである。
  
空気は上昇すると膨張して膨らむ。膨張で空気は外側に向けて仕事をしたので熱を消費する(断熱膨張気体が外部と熱のやり取りなしで膨張する)→空気の温度が下がる。露点に達すると、空気中に含みきれなくなった水蒸気が雲として現れる。

(3)ア 59.1%
*弁当を温めるので発熱吸熱反応は塩化アンモニウムと水酸化バリウムの組み合わせが有名ですね。
カイロと同じ原理で、鉄粉が酸素と化合して酸化鉄となり、錆びていく。

(4)ウ 63.1%
*カビだけだと悩ましいが、キノコとあるので明らかに多細胞生物
細菌は単細胞生物だが、カビ(菌類)は一般的に多細胞生物
後半は分解者の役割。生態系の話でもでてくる。

大問3(地層)-45.7%

(1)イ 46.5%
*地層①は泥と砂が堆積した地層で、マグマが冷えて固まった火成岩ではない。
観察された結晶は火山砕屑(さいせつ)物の1つである火山灰が積もって現れたと考えられる。

ウエのように、地下深いところでマグマがゆっくりと冷えた深成岩は結晶が大きく成長し、
ルーペで観察すると等粒状組織がみられる。

『濃い緑色で柱状の鉱物』→カンラン石 『白色で平らな面がある鉱物』→斜長石
無色鉱物が有色鉱物より多いということは、全体的な色は白っぽくなる。
白っぽい火山のマグマは粘り気が強いので噴火の態様が激しく溶岩ドームを形成することもある。

(2)エ 41.4%
*塩酸をかけて溶けたということは石灰石。泡の正体は二酸化炭素
石灰石の主成分は炭酸カルシウムで、貝殻や珊瑚が堆積して固まったもの。
チャートも石灰岩と同様、生物の死骸が堆積してできた生物岩の一種で、
放散虫や珪藻などの微生物が堆積した岩石。すごく硬い。

@プレートで運ばれたサンゴたち@
セメントの原料となる石灰石は日本で需給率の高い、数少ない鉱産資源である。
なぜ、日本に石灰石が多く産出するのか。
太平洋の海底や海山の頂上で生育したサンゴが海洋プレートに乗って西へ移動し、
やがて日本海溝などの深部に沈んでいく。
密度の大きい海洋プレートの表面にくっついたサンゴたちは大陸プレートに衝突すると剥ぎ取られ、
大陸プレートの横側にくっつく。これを付加体といい、付加されたサンゴが日本の一部となった。

石灰石鉱業協会より。
ホットスポットとは局所的にマグマが噴出するところで、マグマが冷えると海山ができる。
サンゴは褐虫藻(かっちゅうそう)とよばれる、光合成をする藻類と共生する。
光が届く範囲にいないと生きられないので、海山の頂上にサンゴは生えやすい。

日本から遠く離れた場所で生まれたサンゴがプレートの移動でやってきたおかげで、
石灰石の自給率をほぼ100%に維持できたのですね。
道路や建物といった建造物の建築に必要な石灰。
日本が先進国として発展できた要因には、こうした地質的な要因もあったわけです。

(3)ウ 57.7%
*示準化石狙い撃ち問題。
C:ビカリア(新生代) D:アンモナイト(中生代)
E:三葉虫(古生代)  F:フズリナ(古生代)

↑アルファベット順に並べてみた。画像はすべて化石写真館にあります。

(4)ア 37.3%
*④-⑤;
④と⑤が一緒に傾いているので、一体となって何らかの圧力を受けて褶曲しゅうきょく)した。A
②-③;
礫・砂・泥の違いは粒の大きさの違い
粒の大きい礫が先に堆積し、その上に砂・泥の順で堆積する(分級作用)。
河川の堆積作用では先に沈む礫が河口付近に溜まり、
軽い泥・砂が河口から遠くに飛ばされる。C

@基底礫岩@
③-④の境目が波状の不整合になっている。
これは一度、陸上で風化された地層が地殻変動で沈降し、
その上に新しい地層が堆積したからである。
最初に堆積するのが礫であることから、不整合の上には礫の層ができやすい
これを基底礫岩といい、基底礫岩とその下の地層には長い時間の隔たりがある。

大問4(植物)-60.7%

(1)エ 71.4%
*水分が通る道管師管は栄養分ですね。
ツユクサはトウモロコシと同じ単子葉類で維管束がバラバラ。
タンポポは双子葉類。

(2)ウ 55.4%
*葉の裏に気孔が多いので、裏面の方が蒸散が盛ん。
ツユクサの表面から水が出て行く場所は、
葉の表・葉の裏・茎】の3ヶ所。
これを念頭に情報をまとめてみよう。

 塗ったところ  蒸散したところ  重さ
 A  葉の表  葉の裏+茎  1.4
 B  葉の裏  葉の表+茎  0.9
 C  葉の表裏  茎  0.3
 D  なし  葉の表裏+茎  2.0

裏面からの蒸散量は、
A-C=〔葉の裏+茎〕-茎=葉の裏だから、

1.4-0.3=1.1g

(3)①イ ②ア ③ア ④イ 55.3%
*問題文は長めだが、落ち着いて情報を整理すれば大丈夫。
Eはワセリンで完全に空気や水分の出入りをシャットアウトするので、
光合成ができない
呼気で満たした二酸化炭素が光合成で使われないので、
気体Eを石灰水にさらすと白く濁る。デンプンは作られないのでヨウ素反応はない。
Fはフツーに光合成ができるから気体Fには二酸化炭素がなく、石灰水には反応しないが、
デンプンが作られるのでヨウ素液が青紫色に変化する。

大問5(電池)-36.4%

(1)ウ 56.6%
*砂糖水やエタノールは代表的な非電解質。溶質が電離せず、イオン化しない。
①イオン化傾向の大きい亜鉛が先にイオン化。
Zn2+(亜鉛)が塩酸に溶け出し、電子2個は亜鉛版に残していく。
②電子は導線を伝って銅板に流れる。この電子の流れが電流のもとになる
電子の流れと電流の流れは逆向きで、銅板が+極、亜鉛版が-極となる。
よって、電流はAの方向に流れる。
③HCl(塩酸)→H+(水素イオン)+Cl(塩化物イオン)に電離し、
水素イオンが銅板に移動。そこで電子を受け取り、水素が発生する。

(2)エ 39.2%
*塩化銅水溶液の電気分解。
問題文が長いが、『プールのような消毒剤』から塩素(Cl)の発生。
『陰極に赤い物質』で、この物質は銅。
銅のイオン式はCu2+だから+の電荷を帯び、電子を受け取って銅となる。
これだけでエと正答できてしまう。

CuCl2→Cu2++2Cl
陽極ではCl(塩化物イオン)が集まって電子を放出。塩素が発生。

陰極ではCu2+(銅イオン)が集まって電子を受け取る。が付着する。


↑塩化銅水溶液は鮮やかなブルーハワイ。
電気分解を続けると銅イオンが少なり、色が薄くなる。

(3)2H2+O2→2H2O 13.4%!
*燃料電池からなんとなく想像できてしまう。
水素と酸素を2:1の割合で反応させるとボンと爆発して水ができる。
その際に発生する電気エネルギーが燃料電池のもとになる。

実験1・2は水の電気分解
2H2O→2H2+O2
陽極に酸素、陰極に水素が発生する。

(電解質である水酸化ナトリウムを入れるのは、電気を流しやすくするため)
実験3は逆の化学反応 (2H2+O2→2H2O)が起こり、電気が流れる。
電気を消耗すると、結果3(2)のように酸素と水素も減っていく。

@究極のエコカー・燃料電池自動車@
温室効果ガスである二酸化炭素も、酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOx;ノックス)も出ない。
走行で排出されるのは水だけという、究極のエコカー・燃料電池自動車。
水素の製造方法は多様であり、また、発電と同時に発熱を伴うことから、
コ・ジェネレーションを活用すればエネルギーの効率が高水準となる。
課題は車両価格などの低コスト化と、水素を供給する水素ステーションの設置。
電気自動車(EV)に代われるか、今後の動向に注目。

イタワニより。エネルギーの変換が1回だけなので発電効率が高い。

大問6(電気)-51.8%

(1)ア 70.4%
*右ネジの法則
右手をGOODサインして、親指を電流が流れる方に向けて手を回す。
4本指が曲がる方向がコイルの磁界の向きで、方位磁石のN極が指す方向である。

(2)つなぎ方;公式解答参照 61.7%
理由;抵抗が小さくなったことで、金属棒に流れる電流量が増加したから。 49.6%
*抵抗器を並列につなぐ。
電気の話は水流に例えられるときがある。
電圧をかける電源装置で水が一気にくみ上げられる。
重力に従い、水が流れる。この水量が電流量。
抵抗は電流の流れを妨げる障害物。幅の狭い水路をイメージすればいい。

知恵袋にあった絵。
抵抗の直列は狭い水路が長いので、電流量が小さくなる。
抵抗の並列は狭い水路が2本できるので、全体として水路の幅を広くなり、
電流が流れやすくなる
金属棒に流れる電流量が大きくなると磁界の強さも大きくなり、金属棒が速く動く。

(3)エ 35.5%
*フレミング左手の法則
親指-【力】、人差し指-【磁界】、中指-【電流】
金属棒は右側(F方向)に動いたので、親指は右方向。
磁石の上面がN極で、磁力線はN→Sに流れるから人差し指は上方向。
電流は+→-なので奥側に流れる。中指が奥側。

↑悲しくなるほどの絵心の無さ( ;∀;)
左側は磁力の向きが強くなり、右側は弱くなることで、
金属棒は右側へ移動する。

(4)ウ 41.7%
*電磁誘導
いつもは磁石を動かすところ、ここではコイルを動かしている。
上下に動かす度に電流が変わるので交流
検流計の針の向きは情報整理を!
(4)では棒磁石の上面がS極、下面がN極
コイルを下へ動かし、棒磁石を通り越して、
IからJに向かって棒磁石からコイルが離れていくとき
コイルはN極から遠ざかっていくことになる

<結果3>磁石のN極からH→G(磁石からコイルを離していくとき)
検流計の針は左に振れた。
磁石を上下反対にして、磁石の下側で同じことをすると、
電流の磁界の向きの扱いが逆になるので、検流計の針は右側に振れる
↑電流の向きやコイルの巻く方向を変えなくても、
コイルの位置が磁石の上と下では磁界の向きの扱いが変わる
例えば、磁石の上側にコイルがある場合、
コイルの内側の磁界は磁石から離れる向きにあるが、
下側のコイルの内側を流れる磁界は、磁石に近づく向きである。

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