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2019年度 浦和明の星女子中学過去問【理科】大問3解説

問題PDF
地球上には、一年を通してとても寒く年間降水量が少ない地域(地域①)、

一年を通して比かく的あたたかく年間降水量が多い地域(地域②)、
一年を通してとても暑く年間降水量が少ない地域(地域③)、
一年を通してとても暑く年間降水量がとても多い地域など、
さまざまな環境があります(図1)。

生物はそうしたさまざまな環境に適応した姿かたち、習性などを持っています。
植物は乾燥や寒さが厳しい時期を、種子や冬芽(植物にとって過ごしやすい時期になると葉や花になる芽)で過ごします。ある植物学者は、冬芽の地面からの高さによって植物を分類しました。
これを植物の生活形といいます(表1)

この分類によると、地域①~地域③、一年を通してとても暑く年間降水量がとても多い地域でみられる植物の生活形の割合は、図2のようになります。これに関する各問いに答えなさい。

問1
次の文のうち、適当なものはどれですか。すべて選びなさい。
ア:年間の平均気温が高く年間降水量が多い地域ほど、地上植物の割合が多くなる。
イ:年間の平均気温が低い地域ほど、半地中植物の割合が多くなる。
ウ:年間降水量が少ない地域ほど、一年生植物の割合が多くなる。
エ:年間降水量が多い地域ほど、地表植物の割合が少なくなる。
オ:地上植物の割合が減ると、一年生植物の割合が多くなる。

問2
地域①では、半地中植物が多くみられます。
半地中植物の中には、寒い冬の時期に茎を短くして、
地面に葉を円ばん状に並べた姿(ロゼット)を形成する植物がいます(図3)。


次の(a)、(b)に答えなさい。

(a)冬などの寒さが厳しい時期にロゼットの姿を形成する植物はどれですか。
適当なものをすべて選びなさい。
ア:ヒメジョオン  イ:ススキ  ウ:チューリップ  エ:ヒマワリ
オ:シロツメクサ  カ:ナズナ  キ:アカマツ

(b)地域①で半地中植物がもっとも多い理由は何ですか。
もっとも適当なものを選びなさい。
ア:動物や昆虫に食べられないようにするため。
イ:動物にふまれても傷つかないようにするため。
ウ:雪の重さにたえることができるため。
エ:昆虫に受粉してもらうため。
オ:気温が上がることをはやく感じとることができるため。

問3
さいたま市は地域②に入ります。
さいたま市には、秋になると紅葉して葉を落とす樹木が見られます。
秋に葉を落とす理由は「冬は日光が弱く気温も低いため、葉でデンプンを合成する量よりも
葉で呼吸して消費するデンプンの量の方が多くなる。そのため落葉した方が効率的である」
と考えられます。
地域②よりも南に位置する宮崎市では、一年中緑色の葉をつけている樹木をたくさんみることができます。これは地域②に比べてあたたかいためです。宮崎市における植物の生活形の割合はどのようになると考えられますか。もっとも適当なものを選びなさい。
ア:地域①よりも地中植物の割合は多く、地域②よりも地表植物の割合は少ない。
イ:地域①よりも地表植物の割合が多く、一年を通して暑くとても年間降水量が多い地域よりも
  地上植物の割合は少ない。
ウ:地域②よりも地上植物の割合は少ないが、地域①ほど地上植物の割合は少なくない。
エ:地域②よりも地上植物の割合が多いが、一年を通して暑くとても年間降水量が多い地域ほど
  地上植物の割合は多くない。
オ:一年を通して暑くとても年間降水量が多い地域よりも地表植物の割合が多く、
  地域③よりも一年生植物の割合が多い。

問4
植物と同じように、動物もさまざまな環境に適応した姿かたちをしています。
次の(a)、(b)に答えなさい。

(a)図4は、地域①~地域③のような環境でみることができるウサギです。
地域③のような環境でみられるウサギよりも地域①のような環境でみられるウサギの耳の大きさが小さい理由は何ですか。空らんに10字以内で言葉を入れ、文章を完成させなさい。

(b)
クマの仲間の体の大きさ(体長)は、生活する地域によって違います(図5)。
どのような適応上の理由が考えられますか。もっとも適当なものを選びなさい。

ア:寒い地域で生活しているクマほど体が大きいのは、
  大きい方が外の太陽の熱をたくさん受けて体温を上昇させることができるためである。
イ:寒い地域で生活しているクマほど体が大きいのは、
  大きい方が体温を保つことができるためである。
ウ:寒い地域で生活しているクマほど体が大きいのは、
  大きい方が外敵におそわれにくいためである。
エ:暑い地域で生活しているクマほど体が小さいのは、
  一度の出産でたくさんの子どもを産むためにである。
オ:暑い地域で生活しているクマほど体が小さいのは、
  太陽の熱を受けることで体温が上昇しないようにするためである。
カ:暑い地域で生活しているクマほど体が小さいのは、
   小さい方が外敵に見つかりにくいためである。


@解説@
前半の題材はラウンケルの生活形といって高校生物で学びます。
問1:ア・イ
グラフと表を観察する。


イ:半地中植物の割合は①>②>③で、寒いところほど多い。○
ウ:降水量が③と同じ①では、一年生植物が少ない。×
オ:①と②を比較。②は地上植物も一年生植物も①より多い。×

ア・エの判定が微妙(⊃ωー`).。oO
エ:年間降水量の順位は、とても暑く年間降水量も多い地域>②>①=③で、
 地表植物の植物の割合は…
 とても暑く年間降水量も多い地域=2%、地域②=17%
 地域①=22%、地域③=4%となっている。
 とても暑く年間降水量も多い地域と②と①だけをみれば、
 年間降水量が多い地域ほど地表植物の割合が少なくなる(22→17→2)といえるが、
 ①と同じ降水量の③では4%しかないので、法則が成り立っていない。
 よって、エは不正解となる。×
 どちらかといえば、気温が低いほど地表植物の割合が増えている。
ア:『年間の平均気温が高く年間降水量が多い地域ほど、地上植物の割合が多くなる』
 上の文章では、気温が高く、かつ、降水量が多い地域を指す。
 図2の一番上、とても暑く年間降水量がとても多い地域は地上植物の割合が多い。〇
  問題は『~ほど~多くなる』と、何かと比較して傾向を表す言い回しだが、
 気温が高く、かつ、年間降水量が高い地域は、図1の右上1個しかない(^^;
 もう少しサンプルがあれば断言できるのだが、エが誤りである以上、
 すべて式の問題はだいたい答えが複数になるのでアが正解だと思われる…。

強引に論理形式にして、
『気温が高い、かつ年間降水量が多い地域(であれば)地上植物の割合が多い』
が真の命題だとすると、以下の対偶も真となる。
『地上植物の割合が少ない(であれば)気温が低い、または年間降水量が少ない地域』
降水量の少ない①と③は地上植物がほぼゼロなので、やっぱりアかな??たぶん。。

問2(a):ア・カ
ロゼットを形成する植物を選ぶ。
7択からすべて選ぶのでハードルが高いヽ(#`Д´)ノ
しかも、ロゼットといえばタンポポだが、セイヨウタンポポの名が見当たらないという。

↑ヒメジョオンはこいつ。どことなくタンポポっぽい。

春の七草の1つであるナズナもロゼットを形成する。
ロゼットというと丈が短いイメージがあるが、大人になると茎を伸ばすものもいる。

間違いやすいのはシロツメクサかな?
見たことはあると思うが、名前から花を映像化できなければならない。

(b)オ
地域①は、気温が低く、年間降水量が少ない地域。
半地中植物はロゼットのように地表に接する高さに冬芽がある。
アイエは気象に関係がないので誤り。
ウも雪は年間降水量の多いところで降るので×。
したがって、オになる。

気温の上昇は地温のそれより遅れるが、ロゼット葉は地表付近で放射状に広がるので、
地温の上昇をいち早く察知でき、気温の上昇をはやく感じ取れる。
寒い冬の間でも昼間は地温の影響を受け、葉の温度が上昇し、光合成の速度が高まるという。

問3:エ
地域②よりも温暖な宮崎市における植物の生活形を求める。
気温の高い順で、一年を通してとても~>②>①=③。

図2をみると、①と③では地上植物がゼロに近いが、②では10%あり、一番上は96%もある。
気温が高くなるほど地上植物が増えるのではないかと推測できる。
よって、宮崎市の地上植物は地域②より多く、一年を通して暑く~(略)よりも多くはない。

@ラウンケルの生活形@
植物にとって厳しい冬に、休眠芽(発育を止めている芽、冬芽のこと)が
地表からどのくらいの高さにあるのかに注目したデンマークの植物学者ラウンケル。

気温が高く、降水量の多い地域では植物がグングン育つので、大型の地上植物が繁殖する。
気温が低下すると、落ち葉や雪に覆われて寒さや乾燥をしのぐ半地中植物や、
温かい地下に休眠芽をおく地中植物の割合が増えていく。
一方で、乾燥の強い地域では種子で過ごす一年生植物が増える。
このような植物の分類法をラウンケルの生活形という。

問4(a)体温が下がりにくい
寒いところに住むウサギの耳が小さい理由を答える。
天敵に見つかりにくいは×!寒い環境との関連性がない。
体の表面積が小さいほど外気に触れないので、体温を保つことができる
ウサギなどの哺乳類は体温を一定に保つ恒温動物といい、
寒冷地域に住む恒温動物ほど耳や鼻、手足などの突出している部位が小さくなる傾向を
アレンの法則という。

(b)イ
気温と関係のないウ・エ・カは誤り。
熊は生態系の上位にいて、天敵がいないので捕食される危険はない。

前問のアレンの法則から、体の表面積が広いと熱が体外に逃げてしまう。
寒い地域ではいかに体温を保てるかが鍵となる

産熱量は体重に比例する。放熱量は表面積に比例する。
体重が重いほど熱を多く産みだし、表面積が大きいほど熱が多く逃げてしまう
身体の熱を保有するうえで、体重あたりの表面積が小さいほど熱を保有しやすくなる
体重は体積に比例するので体長(長さ)の3乗。表面積は面積だから体長の2乗。
体長が大きいほど表面積の増加より体重(体積)の増加が勝るから、
体重あたりの表面積が表面積が小さくなり、体温保持に都合がいい。
【恒温動物は寒冷な地域に生息するほど体長が大きくなる】
これをベルクマンの法則という。
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