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2016年度 千葉県公立高校入試【前期】国語解説

平均点57.0点

大問1(リスニング)-78.1%

またもや、放送と解答が交互にやってきた。今後、このような形式が続くかは不明だが、
各設問の解答時間が限られる心づもりでいる。
(1)イ 71.8%
*選択肢がレトリック(修辞)なので、それっぽいところを聞き逃さない。
「映画をみたんですよ。高校生のときに。」
「~を受け入れてくれないんですよ。町の大人たちが、古い習慣にこだわって
順序が逆になっている→倒置法
設問以降にもでてくる。
浜田さんの場合、補足情報を後ろにくっつけたいクセのようにも思えるが。

(2)ウ 79.2%
*「すごいですね」の相づちの効果。それっぽいものを選べば正解できてしまう。
本当に感動をしていなくとも、相づちで会話を促すテクニックであるということ。

(3)エ 88.3%
*誤答の肢はどれもいわれていないし、オーバー気味に表現されている。

(4)ア・オ 4点―72.9% アのみ正答―4.8% オのみ正答―21.8%
*インタビューは、相手から引き出した言葉を深く掘り下げる。
”ケーキ店の経営で大変なことは何か”というテーマで、浜田さんは、
「やはり大手のチェーン店に負けないようにすることですね。」と答えた。
次にくる質問は、大手に負けないためにどのような対策を講じているのか、
あるいは、浜田さんが想定している大手の強みとは何か、と掘り下げる。
イウエは、浜田さんの答えを上手く活かしきれていない

大問2(漢字読み)-88.5%

(1)支度 したく 97.3%    (2)佳境 かきょう 74.7%
(3)危ぶまれる あや  85.7% (4)巡って めぐ  96.4%
*全問正解できなかった人は鍛え直し。「佳境に入る」=面白味のある部分に入る。

大問3(漢字書き)-50.7%

(1)交(う) 53.9%  (2)照(れて) 87.1%  (3)朗報 44.9%
(4)候補   56.6%  (5)試金石  11.0%!
*(5)が厄介。試金石とは、物の価値や人の力量を計る基準。簡単にいえば、テスト
もともとは金などの貴金属の純度を調べるために使った、黒色の硬い石のことらしい。

大問4(知識問題)-76.5%

(1)ウ 56.1%
*筆順問題!「花」の草かんむりは、ヨコが1画目なのに3画目になっている。
筆の運びをみるだけだが、見逃すと焦る。

(2)イ 83.7%
*ここで漢文。書き下し文は読む順序を番号でふる。

(3)イ 81.7%
*文法。用法ではなく、修飾関係で登場。
日本語は語順を入れ替えやすく、順番をミスると修飾関係が不明瞭になる。
アウエは、「先生方と一緒に」の部分が「活動している」にかかるおそれがある。
「活動している」にかかると「先生方と一緒に」が「ステージを盛り上げてくれます。」にかからず、
盛り上げるのが合唱団の皆さんに限定されてしまう。

(4)お待ちしています 84.4%

大問5(説明文)-51.1%

グローバル社会にしかり、LGBTにしかり、21世紀のテーマは多様性といわれる。
多様性を受け入れるとはどういうことなのか。視野の狭い大人にも読ませてやりたい。

(1)ア 81.5%
*「こうした」の内容を探す。1、2段落目をまとめる。一度目は苦労をしても、二度目からは無駄なことをしなくても到達できる。必要最小限のエネルギーで動いていける。これは、習慣化のなせる業であり、人間は生理的な能力の限界によって、このような思考のパターンを身につけている。
つまり、人間は習慣による”慣れ”(=経験)から、無駄なことをしなくても(=物事を深く考えなくても)行動することができる思考パターンを、生理的能力の限界から身につけている。→ ア
イ:人間の能力には限界があるので、慣れに基づく思考パターンを身につけている。
ウ:必要性の確認はしない。3段落目、「無意識化されたもの」。「ついつい思慮が浅くなり」もアの裏づけ。
エ:判断材料とするということは、意識的な判断。

(2)きわめて不快な 13.8%!
*見つけるのが大変。距離が離れているうえに、見えにくいところに紛れている。
一旦、後回しがいい。
『多様性を積極的に取り入れるということは、( B )思いを積極的に受け入れることによって、自分の想定、常識、期待をことごとく裏切られるということである。』
多様性を受け入れるにあたって生じるリスクの内容が書かれてあるところを探す。
それらしき箇所はところどころにあるが、大きなヒントは最後から2段落目。
『「常識を破られる」「期待を裏切られる」という、一見するときわめて不快な、心理的コストの高いことのなかに』
こういった高い心理的コストのなかで、多様性の取り入れに重要な価値があることを認識していないという文だが、先ほどの常識・期待・裏切られるが共通しており、それらが多様性を取り入れるにあたっての心理的コストとなる。
心理的コストを形容する「きわめて不快な」がBに入る。
7文字で形容動詞「不快な」が含まれる。

(3)エ 75.2%
*多様性を取り入れるにあたってのメリットを探す。傍線部Cの前。
ちょっと待てよ、と立ち止まって考えられる機会となることが多様性のメリット
自分の考えは、ある条件でしか成り立たないのではないか?
状況に応じて使い分けをしなければならないのでは?と気づくきっかけを与えてくれる。
状況に応じた使い分け=広域な分業となる。

(4)ア 60.9%
*傍線部Dの前後を読むと、『(多様性といえば)きれいごとでしか認識されていない』
(2)「~という、一見するときわめて不快な、心理的コストの高いことのなかに、
重要な価値が潜んでいることが認識されていない。」
言い換えれば、多くの場合、多様性の認識は表面的なきれいごとにとどまり、高い心理的コストのなかに重要な価値が潜むという大切な本質を見過ごしている、という筆者の嘆きを読む。
イ:高い評価を与えるのではなく、多様性の受け入れにあたってマイナスを覚悟しないレベルで止まっている。
ウ:多くの場合はきれいごとでしか認識されていないのであって、新旧の問題ではない。

(5)解答例:自分の想定、常識、期待の範囲内で (16字)
4点―10.8%! 1~3点―5.3% 無答―36.8%
*「グローバルに広がる多種多様な果実を楽しく採りに行くことではない。」
「ではない」で終わるということは、筆者の意見と内容が逆となる。
「果実を楽しく採りに行くこと」という表現からも、ピクニックにうかれながら散策するニュアンスが・・。
”多様性を取り入れるときに人々がどのように考えることを例えたものか”を問うので、多くの場合、多様性はどのように認識されていると筆者は考えているのかを読みとる。
傍線部Cの次、『(多様性は)どちらかというときれいごとでしか認識されていない』。
傍線部D「こうしたレベル」と同じで、多様性の表面的な理解で終わっている、という筆者の指摘が解答になる。
(4)の選択肢を借りて、「多様性の表面的な解釈の範囲内で」(17字)も間違いではないと思うが、”表面的な解釈”の具体的な内容を書いた方が得点はより高くなる。
それは、『「調和を乱す」「常識を破られる」「期待を裏切られる」という、一見するときわめて不快な、心理的コストの高いことのなかに、重要な価値が潜んでいることが認識されていない』こと。
(2)と同じ場所である。( B )の後ろ『自分の想定、常識、期待をことどとく裏切られる』から、人々はどういった範囲内で多様性を考えるのか → 自分の想定、常識、期待の範囲内 となる。難しい。

(6)イ 64.5%
*ア:思考の無意識化ではなく、人間は能力の限界を補うために無意識的な思考パターンを身につけている。後半も×
イ:4段落『多様性とは、まさに「無意識的な常識」の違う人たちがぶつかり合うこと』
習慣から生まれた無意識的思考パターンで作られた想定、常識、期待は正しいのか?
状況での使い分けが必要ではないのか?と見直せるきっかけ(価値)を、多様性の取り入れには秘めている。
ウ:多様性を取り入れるとは何かが本題で、コミュニケーション不足は述べていない。
エ:グローバル化とは、多様性の取り入れに伴う心理的コストのなかで、不調和に期待を裏切られることを覚悟しなければならない。そのなかで、『自らを振り返れるようになることが本質的な価値』が多様性にある。

大問6(物語文)-37.9%

今年の神奈川でもこの物語が出題された( ゚Д゚)
(1)夏 52.0%

*草笛の季語。春と間違われるかもしれない。
季語は旧暦がもとになっている。
春:1~3月 夏:4~6月 秋:7~9月 冬:10~12月

(2)解答例:東子の句で瑞穂と茜の表情が一変した様子。(20字)
3点―5.9%! 1~2点―13.9% 無答―28.7%
*難しく考えすぎない。手前をみれば解けてしまう。
魔法に感じたものは、「草笛や言葉にまとめられぬもの」、東子が詠んだ句。
その効果が次にある。”一変”を使うので、何が変化したかに注目する

(3)エ 51.2%
*瑞穂の句「草笛は空耳課題はかどらず」
空耳とは、実際は聞こえていないのに聞こえた感じになること。

(4)Ⅰ、緊張    3点―26.1%! 1~2点―9.9% 無答―6.4%
Ⅱ、解答例:一年生トリオのやり取り(11字)
3点―11.4%! 1~2点―12.3% 無答―22.3%
*Ⅰ:一年生の真名が東子の句をほめたときに、
「東子はどきどきしてきた。きっと、赤くなっている。」とある。
一年生トリオの会話で、やっと肩の力が抜けるのを感じ、小さく笑ってみた。
ドキドキから肩の力が抜けて和らぐものといえば緊張。”表情”が和らぐでもいい。
Ⅱ:東子がほほえましく感じたものを書く。
情景は理香の物怖じしない発言と、それに対する夏樹の抗議だが、
『この一年生トリオは強い』から、一年生の言い合いはいつも通りの光景であるとうかがえる。いつも通りの一年生トリオのやり取りをみて、上級生の立場からかわいらしさ、いじらしさを感じている。

(5)エ 59.2%
*「呼ぶ草笛は耳にやはらかし」
東子は茜の詠んだ句に「―友、か。」と、『友』に何かしらの思いを巡らせていた。
「草笛や言葉にまとめられぬもの」
東子の句に、茜は一瞬ぽかんとし、徐々に表情をほころばせ、夏樹のつぶやきで我に返る。皆の意見を聞いたあと、
『友』との言葉ならばきっとどんな言葉でも結局は耳にやわらかいんじゃないかって、そういうのも草笛に託したかった」
といい、緊張が和らいだ東子の胸は、再びドキドキする。
茜は草笛に託した『友』への思いを、東子の句にでてきた「言葉」を使って説明した。
東子は茜が自分の句に応えていると感じ、茜の言葉が自分に向けられていると感じた。

ア:東子の句に呼応する形で茜が説明したことが重要。『言葉にまとめられぬ』に対して「『友』との言葉は耳にやわらかい」
イ:物足りなさは感じていない。
ウ:二人の思い出は述べられていない。
エ:自分が詠んだ『言葉にまとめられぬもの』、言葉では表すことができない思いに対し、茜は、『友』との言葉ならばどんな言葉でも耳にやらわかいと、自分の句を説明した。東子の句に応えるような形での説明が、東子が茜の意識を感じとった要因である。

(6)ウ 59.7%
*登場人物のやり取りをみて、人物相関をさぐる。
5人の披講が終わり、「東子は六番目の会員」。『俳句甲子園への練習が本格的になってきてから、全く作句に参加してこなかった。自分に才能がないのはすぐに思い知らされたし、東子が作句したら選手、瑞穂が気にしそうだったから。でも、披講するならこの順番だろう。スタメンではないけど会員であるマネージャー、いや副会長の東子』
俳句甲子園は5人1組で行われるが、2年生で副会長を務めている東子はスタメンではなく、六番目の会員。自分の才能のなさに引き目を感じ、とくに瑞穂との関係がギクシャクすることを気にしていた
 

茜の句”友”。東子の句”言葉にまとめられぬもの”。
何も話していないのに、句のやり取りだけで気持ちが通じ合えたと思えた瞬間。
そして、茜が東子の句に応えるかのように、草笛に託した自分の句を説明する。
『〔友〕との言葉ならばきっとどんな言葉でも結局は耳にやわらかいんじゃないかな』
続けて、瑞穂が、
『そうだよね、私たち覚えていられないほどたくさんしゃべってきてるんだものね』
-この人たち。
茜・瑞穂・東子の2年生トリオが過去にどんなことがあったのか、直接描かれてはいないが、ぎぐしゃくしていた関係が、今回の出来事を通じて修復の方向に向かったと読める。
東子の句が茜と瑞穂の心に響き、東子は茜と瑞穂の思いを「―この人たち。」とキャッチしている。俳句を通じた仲間たちとの絆 、これがわかれば正解にたどり着ける。
イ:肩の荷を下ろすとは、責任や負担から解放されて楽になること。東子は楽になったというより、仲間が自分を温かく受け止めてくれて強い絆を感じている。

大問7(古文)-60.4%

(1)かたわら 93.7%
*先頭以外のハ行は、ワイウエオ。

(2)②→③→④→① 58.7%
*この文章のイヤなところは、4行目「其はじめ」から、時系列が過去に戻ること
祖先がどうやって、世に渇望されるほどの見事なサルの写生ができたのか、回想シーンが2行目から始まる。最後まで読む必要があるので、一旦後回し。

(3)ア 63.0%
*祖先が猟者に頼んで1匹のサルを買い、写生して”来舶の某氏”に批評をお願いする。
某氏のセリフ『( B )、このサルは人の家で養育されていて、山の中を自在に生きている趣(おもむき:風情 )がない』
残念だなぁとマイナスの評価を下している。
ウ:「うらやむべし」は、ねたましいという意味も含むが、場面にそぐわない。

(4)ウ 53.1%
*某氏にガツンといわれた祖先は、山ごもりをして励むこと二、三年、ついに「其真図を得たり」。
其はサル。真は真実、真相、”まこと”。まことのサルの姿を描けるようになった。

(5)Ⅰ:満足する 2点―40.7% 1点―2.0% 無答―28.1%
Ⅱ:聞き入れ    2点―53.3% 1点―1.7% 無答―27.3%
*他人に批評をお願いし、それにやけにならず、謙虚に努力をつづけた人物像。
文意に沿うように4字の穴埋めをするが、わりとあてはまりそうな気が…。
Ⅰであれば、(自分の技量に)過信する、おごれる(祇園精舎)、つよがる、自惚れる(うぬぼれる:漢字がムズイ)、図に乗る、えらぶる、調子づく、大物ぶる、いきがる
Ⅱであれば、(他人の批評を)受け入れ、取り入れ、参考にし、もとにし、気に留め、肝に銘じ
ベストな言葉となると限られてくるが、正解の射程範囲は広いと思われる。

大問8(条件作文)-10.4%

12点―10.4% 8~11点―24.5% 4~7点―23.8% 1~3点―9.2% 無答―6.6%
言葉の新しい使い方に関する自由作文。
前段は、いずれかの資料をもとに、投書について自分の考えを示す。
後段は、前段の内容をふまえて、言葉の新しい使い方について自分の考えを示す。
前段にも自分の考えを入れなくてはならない。
 
@前段@
資料1
→2002年版にはなかった、ざっくりの意味「④大まかであるさま」が2010年版に加えられている。

資料2
→若い世代は「ざっくりとした説明」という言い方をした人は多いが60歳以上は少ない。

投書の問いかけ
→78歳の千葉太郎さんが、自分が聞きなれない「ざっくり」の表現に違和感を覚えたのは私だけか。
 
資料の分析だけではなく、問いかけを無視してはならない
千葉太郎さんが違和感を覚えたことについて、どう考えるか。
書きやすそうな流れは、
”「ざっくり」の大まかであるという意味は最近の辞書で追加され、
60歳以上では16.1%の方しかそのような使い方をしたことがないのだから、
千葉太郎さんが違和感を覚えたのは仕方がない/無理もない”
もちろん、逆の結論でもつじつまが合っていれば正解。
 
@後段@
言葉の新しい使い方について考えを述べる。
時代の変化に伴って、言葉の意味や使い方は変化する
同時に、文科省の「国語に関する世論調査」でも指摘されるように、
日本語の乱れが問題になっている。
例えば、【潮時】は辞書で調べるとチャンス、つまり好機の状況で使う言葉だが、
現在は負けや引退を覚悟するときによく使われている。
伝統的な使い方を重視すべきか、時代の変化を重視すべきか
どちらを重視すべきかは言葉によってケースバイケースにならざるを得ないので、
両者の考えを上手く取り入れる形が望ましいかもしれない(ただし、前段とつながるようにすること)。
公式解答では、【元々の意味をしっかりと受け継ぐ+新しい使い方の随時取り入れ→表現の幅を広げたい】
と、模範的な答案を披露している。
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