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2021年度 海城中学過去問【理科】大問4解説

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 5000人を超える死者、行方不明者を出した1959年の「伊勢湾台風」は、〔   〕による被害が甚大でした。〔   〕とは海面が上昇する現象であり、気圧が下がることによって海面が受ける「吸い上げ効果」と、沖から海岸に向かう風によって海水が集中する「吹き寄せ効果」によっておこります。「伊勢湾台風」では特に伊勢湾周辺の愛知県と三重県での〔   〕の被害が大きく、排水が完了するまでに3か月間を要したとされています
 河川でも、大雨によって増水し氾濫すると大規模な浸水がおこります。2017年の台風21号は、超大型で強い勢力を保った状態で本州に上陸し、この台風によって、大阪府の大和川や和歌山県の貴志川が氾濫しました。図1は台風が上陸した10月23日3時の天気図です。東京を流れる多摩川でも水位が大幅に上昇し、場所によっては氾濫がいつおこってもおかしくない状況になりました

 これらの水害を防ぐために、海岸や河川の堤防のかさ上げや新規設置をしたり、護岸工事を行ったり、ダム、水門、遊水池などを作って水の流れをコントロールしたりします。また、工事による対策だけではなく、住民一人一人が日ごろから居住地域のハザードマップを確認し、どこでどのような災害がおこりえるかを認識しておくことも大事なことです。

問1
文中の〔  〕にあてはまる語句として最も適当なものを選びなさい。
ア:土石流 イ:液状化現象 ウ:津波 エ:高潮

問2
下線部①について、伊勢湾台風の経路(台風の中心が通過したところ)を示した矢印として最も適当なものを選びなさい。ただし、伊勢湾内に外海から海水が流れ込み、「吹き寄せ効果」が非常に大きくはたらいたことに注目すること。

問3
下線部②について、図2は東京(大手町)における、2017年10月22日0時から24日0時までの2日間の1時間ごとの気圧(折れ線グラフ、左軸)と降水量(棒グラフ、右軸)を表したグラフです。図1も参考にしながら、図2から考えられることとして適当でないものを選びなさい。

ア:気圧が最も低くなっている時刻に、台風の中心が東京(大手町)に最接近したと考えられる。
イ:台風の通過にともなう気圧のグラフのようすが、気圧が最も低くなっている時刻の前後でほぼ対称的になっているのは、天気図における等圧線がほぼ同心円状になっていることに対応していると考えられる。
ウ:この台風においては、台風の進行方向の前方ではあまり雨が降らず、進行方向の後方で多くの雨が降ったと考えられる。

問4
下線部③について、図3は多摩川のある地点における、2017年10月22日0時から24日0時まで2日間の1時間ごとの水位(折れ線グラフ、左軸)と、降水量(棒グラフ、右軸)を表したグラフです。図3から読み取れることとして適当でないものを選びなさい。ただし、水位のグラフは、22日0時の時点での水位を0mとしてあります。


ア:図3の地点における多摩川の水位は最大で5m以上上昇しているが、この値は期間中の降水量をすべて足し合わせていったときの高さ(深さ)に等しい。
イ:降水量が最大になっている時刻よりも多摩川の水位が最高になっている時刻のほうが遅い。
ウ:降水量がゼロの時刻において、水位が低下する速さは一定ではない。
エ:最も急激に水位が上昇したときには、1時間で50cm以上水位が上昇した。

問5
下線部③について、図4のa~cのグラフは、図3の折れ線グラフと同様の多摩川の水位を表しており、図5のX~Zのいずれかの地点における記録です。a~cのグラフはそれぞれX~Zのどの地点の記録ですか。適当な組み合わせを選びなさい。ただし、記録期間中、図5の地域において、局所的に他の場所と著しく異なる強さの降水はなかったものとします。また、それぞれのグラフのたて軸の目盛りは異なります。


 

問6
ある土地に降った雨が最終的に河川Aに集まるとき、その土地は河川Aの「流域」だということになります。河川を流れる水の量は、この「流域」における降水の量によって左右されます。これについて、次の(1)、(2)に答えなさい。

(1)
同じ高さの地点を結んだ線が描かれた図6の中で、河川Aの流域である部分はどこですか。
解答欄の図中に斜線を描き入れて示しなさい。

(2)
日本の年間平均降水量は世界の年間平均降水量の2倍近くあります。また、日本の河川は、世界の主要河川と比べて、長さが短いのに上流と下流の高低差が大きいという特徴があります。これらのことから、世界の主要河川と比較したときの日本の河川の洪水の特徴を簡単に答えなさい。

問7
増水時の河川水位の上昇を抑える対策の例を、
文中に触れられていること以外で具体的に1つ答えなさい。


@解説@
問1:エ
高潮の意味は他校でも出題されている。

トクする!防災より。高潮の原因は低気圧にある
【吸い上げ効果】
1hPa下がると海面は約1cm上昇するといわれる。
平時の1気圧が1013hPaなので、950hPaの台風では63cmも上昇することになる。。
【吹き寄せ効果】
台風の強風で海水が波に打ち付けられる。
風速が2倍になると吹き寄せ効果は4倍に達する!
2つの効果が合わさるので、台風襲来時の沿岸は危険地帯である。

土石流…大雨で土砂が崩れる。
液状化現象…地震で地盤が液体状になる。

問2:ウ

北半球では台風は反時計回りに渦を巻くので、
台風の進行方向と同じである台風の東側の風が強く
また、暖かく湿った南風の影響から積乱雲も発達しやすい
台風の中心が愛知と三重の西側を通るウが正答となる。
*伊勢湾のような地形では湾奥で波が集約して吹き寄せ効果が大きく働く。

問3:ウ

ア:台風は中心が最も気圧が低い。〇
イ:等圧線がほぼ同心円状だからこそ、台風の中心が近づくと気圧が下がり、
遠ざかると気圧が上がって左右対称に近いグラフとなる。〇
ウ:台風の中心が最接近した23日5時よりも前の方が降雨が激しい。×

問4:ア

ア:降水量の合計が水位の上昇分に相当するわけではない。×
 降水の多くは多摩川に流れるが、どこかに溜まったり、蒸発する水もある。
イ:降水量の最大は23日6時。水位の最高は23日7~8時で遅い。〇
 雨が降ってしばらく経ってから、降水が川へ流れ着く。
ウ:23日8時以降で水位は直線で減っていない。23日5時も同様。〇
エ:23日1~2時。〇
1時間で50cm以上も水位が増えることもあるので、河川の様子は見に行かないこと。

問5:オ
観察力と推理力が問われる。
上流で降った水は遅れて下流へ流れる。

よくみると縦軸の目盛りの数値が違う点に注意!
aとcは形が似ているおり、aの方が水位が高い。
ピークに注目しよう。cは23日6時、aは23日7時だから〔c→a〕の順。

問題はb(;`ω´)
いきなり1.5mも上昇しているが、これは問1の高潮が河川で起きたと考える。
海から水が逆流し、いったん水が引くが、a地点の22日14時以降の水が押し寄せ、
16~20時に水量が増加するとまた一気に水が引き、水位が乱高下している。
23日16~20時あたりの上昇は水門の調整か波の往来か?
いずれにせよ、河口付近でないとこの時間帯で水位は増えない。

問6(1)

尾根線がポイント。
河川があるところが谷。
河川Aと河川Bに間にある、等高線が曲がったところが尾根
尾根が分水嶺(ぶんすいれい;雨水を分かつ境界)になる。

(2)大量の水が一気に流れ、短時間で氾濫しやすい。
長さが短く、高低差が大きいということは、勾配(こうばい;傾き)が急である。
日本は地殻変動が激しい弧状列島で、火山活動により陸地が盛り上がり、河川が急になった。

疎水名鑑より。普段、我々が目にする河川は急勾配で滝に近い。
関東平野を流れる利根川でさえ、海外の主要河川と比べると急なところが多い。

国土交通省より。平常時と洪水時の河川を流れる水量の比較。
ミシシッピ川が3倍、ドナウ川が4倍に対し、
淀川30倍!木曽川60倍!利根川100倍!!!(;°;ω;°;)
ちなみに、日本の川は住宅地よりも高いところを流れているそうです。
荒川や江戸川あたりの人工堤防がポキッといったら大惨事ですね。
かといって、住宅やビルが密集する都会にスーパー堤防の整備は不可能だと思うのだが…(・Д・)

@河況係数@

疎水名鑑より。
河況係数(かきょうけいすう)とは、一定の場所における年間の最大流量と最小流量の比。
(水が最も流れるときの量と最も流れないときの量の比)
日本の河川は急ですぐ海へ流れ出てしまう点と、
梅雨や台風のシーズンに降雨が集中する点から河況係数がこれほど高い。

問7:例)森林を育み、水をゆっくり流すようにする。
解答に使ってはならないとされる文中の記述では、
・海岸や河川の堤防のかさ上げや新規設置
・護岸工事
・ダム、水門、遊水地などによる水の流れのコントロール
と3つも候補がつぶされている(*’ω’*)????
知識を総動員させて、なんとか捻り出すしかない。

水位の上昇を抑えるのは、どこかに水を溜め込んで流量の変化を和らげる必要がある

石川県より。森林には水源涵養(かんよう)機能がある。
何もない裸地(らち)が水を浸透させる能力を1としたとき、
森林では3倍以上の浸透力がある。
地中へ染み込んだ地下水はゆっくりと出ていくので、流量の変化が和らぐ。
まさに緑のダム。

知識として知っていても、出題の仕方から思いつきにくかったもしれないが、
水害が発生したときにニュースや池上彰さんの番組で紹介されている。
アンテナは広げておこう。

@余談@

2016年度の横浜翠嵐高校で出題された信玄の霞堤。なかなか興味深いです。
武田信玄が考案したとされる治水策で、
上流側が開いた逆ハの字の独特な堤防は、
合理的な治水法として後世でも評価が高かったようです。

国土交通省より、以下仕組みの解説。
水かさが増えると水流が逆ハの字の霞堤の裏側へ回り込み、水流の勢いが衰える。
流れが緩やかになりながら、あふれ出た水は堤防の隙間をグルグルと循環し、
堤防の外側へ水が広がらない。洪水が引く時は、再び堤防のあいだから河川へと戻る。
河川の水流を弱めつつ水を一時的にプールさせ、氾濫が収まったら徐々に水を河川に戻すことで、
流量の変化を少なくし、下流域での水害被害が軽減される。

@余談2@

今年の西大和学園(県外)社会大問2で出題されました。
問6;写真⑥は、埼玉県春日部市の地下につくられた施設を撮影したものです。
この施設がつくられた目的を答えなさい。
答えは地下の放水路。中学受験の教材でも扱われますが、テレビでも取り上げられています。

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